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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第三部 おっさん戦場に舞う
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28.謎のおっさん、講義をする(1)

 大陸東部の大都市、イグニスの街にあるギルド【C】の本城、その一角にあるおっさんの工房。そこでは、いつものようにおっさんが、鍛冶スキルを用いて生産を行なっていた。

 だが今、この場に居るのはおっさんだけではない。もう一人、年若い少女がおっさんと共に作業をしている。年齢は十代後半、くせっ毛の茶髪を頭の後ろでまとめ、おっさんと同じデザインの作業用ツナギを着て、その右手は鍛冶用の金槌を振るって金床の上の金属を打っている。

 彼女の名はユウ。一見あどけない少女だが、こう見えてギルド【C】の幹部の一人であり、おっさんの唯一人の直弟子として、ギルドメンバー達に一目置かれている。


 ユウはじっ……と、現在彼女が取り掛かっている制作物を、穴が開くほどの勢いで見つめる。しばらくそうした後に、やがて彼女は金槌を振りかぶって、狙ったポイントに向かって金槌を振り下ろした。カンッ……!と、乾いた音が部屋中に響く。


「……師匠、完成しました」


 ユウはウィンドウを操作し、【生産終了】のボタンを押すと共に、傍らに居たおっさんに声をかけた。


「よし。見せてみな」

「はい」


 ユウが完成したアイテムを手に取り、おっさんに手渡した。完成したのは一本の片手剣だ。純白の刀身に、呪術的な紋様が刻まれた真っ直ぐな刃。刃渡りは100センチメートルと少し。

 おっさんは手渡された剣の柄を、触感を確かめるように何度か握った後に、その鋭い目を細めて全体を観察していった。緊張した顔でその様子を見守るユウ。やがておっさんは顔を上げると、ユウに笑顔を向けた。


「ま、及第点だな。悪くねえ仕事だ」


 言葉は厳しいが、おっさんはどうやらユウが作ったこの剣を「使える」と認めたようだ。それがわかったようで、ユウが小さく拳を握ってガッツポーズを取る。

 今ユウが作ったこの剣は、通常のギルドショップに並べる品とは異なる、特別な品だ。

 一定以上の実力を持つ上級プレイヤーであり、【C】のギルドショップで多額の買い物をした上客。ごく一部のそんなプレイヤーのみが利用可能な秘密商店。そこに並べるべき品であった。

 当然、そのような店に並べる品とあれば生半可な性能であってはいけない。ギルドの幹部や腕利き職人達が全力で作った傑作のみが、そこに並ぶ資格を持つのだ。


 ユウの実力はおっさんや幹部達の指導によって、既にギルド内でも上位に位置するようになった。おっさんはそれを見て今回、ユウに秘密商店向けの制作を任せる事にしたのだ。

 とは言え、おっさんのチェックは厳しい。ユウは既に二本の剣を制作し、それらに対して不合格を言い渡されていた。そして今回、三本目にしてようやく合格を貰えたのだった。


「よし。それじゃあ少し待ってろ。仕上げに錬成陣を刻んでやる」


 おっさんは左手で剣の柄を持ち、剣を水平に構えた。そして機械の右手で刀身に触れると【錬金術】を使用して、剣に錬成陣を刻み付ける。

 おっさんが触れた部分を見れば、そこには魔法陣のようなものが刻印されており、それらがぼんやりと光を放っている。

 ユウは、それをじっと見つめた。


「どうした?」


 おっさんが、そんなユウに声をかけると、ユウは不満そうに言った。


「それ、便利ですよねー……師匠ばっかりズルいなぁ」

「ま、そうさな。ユニークスキルだけあって、かなり便利だぜコイツは」


 おっさんの所持するユニークスキル【錬金術】は属性を自在に操り、破壊と創造を司る秘術。直接的な破壊力には乏しいものの、フィールドや地形に干渉したり、特定の属性を活性化させたり、アイテムを強化、あるいは破壊したりと汎用性に優れ、戦闘にも生産にも大いに役立っている。


「私も使えたらいいんですけどね。師匠、教えてくれません?」

「おいおい。俺は別に構わねぇけどよ、こいつぁユニークスキルだぜ?教えたところで習得できるのかい」

「そうですけど、傍から見てるぶんには単に魔法陣みたいなのを書いてるだけですし。意外と簡単にできちゃうかもしれないじゃないですか」

「やれやれ、別にただお絵描きしてるワケじゃあないんだぜ?まあいい、そこまで言うなら教えてみようじゃねえか」


 おっさんは肩をすくめると、錬金術の説明を始めた。


「まず錬金術を発動するには、【錬成陣】を描く事が必須だ。この錬成陣だが、発動したい効果によって円の中に描く図形が異なってくる。例えばフィールドの属性を変える【○○フィールド】系の錬金術なら、こう……【属性】と【変化】を意味する図形を描いた後に、変えたい属性の魔素を錬成陣にブチ込む。錬金術で時限式トラップを作りたいなら【静止】と【遅延】だ。こんな風に、複数の図形と属性を組み合わせるのが錬金術の基本で……」


 この時おっさんは、単に暇潰しに教えてみようか程度の考えであった。

 だがまさか、この後にあんな事になるとは、流石のおっさんにも予想する事は不可能であった……。

やっと風邪が治りました。

寒い日々が続いております。皆様も健康にはお気をつけて。

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