25.謎のおっさん、風になる(5)
ハイウェイでは、トッププレイヤー達による激しい戦いが繰り広げられていた。
まず目につくのは、馬上で激しくぶつかりあう二人の女性。片や全身を真っ赤な衣装で包み、巨大な処刑鎌をその剛腕で振り回す豊満な体つきの美少女、レッド。それに対するは巫女服を着て薙刀を巧みに操る、清楚な黒髪の大和撫子、カエデ。
こちらは常に苛烈に攻め続けているレッドが優勢に見えるが、カエデも致命的な一撃は避けつつ必殺のカウンターを虎視眈々と狙っている。
次にもう少し前方を見ると、そこには白馬に跨り、堅牢な盾と黒い魔剣を操って戦う、騎士甲冑を身につけた金髪の少年の姿が見える。そんな彼と戦っているのは、銀髪の小柄な少女。黒いマントを着て、片目を眼帯で覆っている。手には黄金の杖を持ち、彼女が使役しているボス級モンスター【髑髏の聖騎士】が駆る幽霊馬【ナイトメア】の後ろに乗って魔法を詠唱している。シリウスとエンジェである。
二対一という不利な状況だが、シリウスは次々と襲い来る攻撃を、その手に持った盾で防ぎ、あるいは跳ね返す事で互角に渡り合っていた。
そして先頭を走るは、ヒヒイロカネ装甲による無限の耐久性能を誇り、ギルド【C】の技術力を注ぎ込んで作られた最高スペックのモンスターマシンを操る男。ぼさぼさの黒髪に無精髭、口に煙草を咥え、頭の上に赤いウサギを乗せた、鋭い目つきの中年男性だ。その右腕は魔導機械式の義手になっている。皆さまご存知、謎のおっさんである。
対するは黄金の一角獣、神獣【キリン】に乗って二刀流を操る、恐ろしく整った顔の青年……カズヤだ。
おっさんとカズヤの戦いは、この場で最も激しいものであった。片や、様々なアイテムや発明品を惜しげもなく使い、派手に銃弾をバラ撒くおっさん。片や、手数と総合力は全プレイヤー中随一と言われ、二刀流による連続攻撃と共に次々と魔法を撃ち出すカズヤ。
その二人のぶつかり合いは、たとえ神であろうと近付けば只では済まないほどの激しさである。その様はまるで暴風。
「死ねぇおっさん!【ダブルエクスキューション】!【ジャッジメントレイ】!」
「てめえが死ね!【大魔弾:ミョルニル&レーヴァティン】ッ!!」
「全力で行くぞ!【半神化】!【剣神覚醒】!【コールパートナー:ルクス】!【リミットブレイク】!そして【Fow:絆の紡ぎ手】!!」
「面白ぇ!ならばこっちも【半神化】!【戦鬼覚醒】!【オーバーロード】!【ゴールドラッシュ】!【フルバースト】!行くぜ!【Fow:世界の破壊者】ッ!!」
「【飛天龍王撃】!【天覇黄龍撃】!」
「【バレットカーニバル】!【バレットカーニバル・インフィニティ】!」
「ならばこれでどうだ!【天地開闢創世撃】!」
「まだまだッ!【天地崩壊終焉撃】!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」
「ザッケンナコラーッ!スッゾオラーッ!」
「カスが効かねぇんだよ龍人の屑がこの野郎!」
訂正する。もはやそれは暴風などといったレベルではなかった。そこでは揃ってすっかりヒートアップした馬鹿二人によって最終戦争が勃発していた。
「馬鹿かてめえら!?ふざけんなああああッ!」
レッドが全力でツッコミを入れる。渦中の二人以外は最早、その戦いの余波に巻き込まれないようにするのが精一杯な様子で、戦いの手を止めていた。
ダメージを受けないルールが適用されているこの場における戦いは、いわばじゃれ合い、お遊びのような物である。彼らにとってはそういった認識であった。だが、おっさんとカズヤにとっては違う。
比較的常識的な皆さん(シリウス、エンジェ、カエデ、レッド)の考え:
「遊びみたいな物だし、因縁のある相手とのタイマンを楽しもう」
「他の皆も空気読んでそうするはずだ」
頭おかしい人達(おっさん、カズヤ)の考え:
「遊びみたいな物だし、普段やらないレベルの全力で暴れよう」
「どうせ目の前の馬鹿もそう考えてるに違いない」
「ついでに周りに居る連中も巻き込んで全員ぶっとばす」
簡単に纏めると以上である。
「……エンジェさん」
「……どうしたシリウスよ」
「おっさんはおっさんだから仕方ないとして、カズヤさんってあんな無茶する人でしたっけ」
「私も最近知ったのだが、兄上は一見クールに見えるが実は結構アホだぞ。対等あるいは自分より強い相手が居ると、稀によくあんな感じに手の付けられない状態になる」
「お前の兄だろ、何とかしろよ」
「貴様こそ一度おっさんに勝ったのだろう?もう一度止めてきたらどうだ」
「………………」
「………………」
「逃げますか」
「そうしよう。下手に手を出して巻き込まれるのも馬鹿馬鹿しい」
そう言葉を交わし、シリウスとエンジェは後退し、レッドとカエデもそれに続いた。
この時の彼らの心境は言わば、木刀や釘バットを担いで喧嘩しに行ったらマシンガンでドンパチやってるマフィアに出くわした不良少年のような状態であった。
ともあれ邪魔者は消え、後は全力でぶつかり合い雌雄を決するのみ。
そう考えたおっさんであったが、その時。後方から彼らに急接近する者があった。
◆
滅露須は激怒した。必ず、かの邪知暴虐の廃人共に一泡吹かせようと決意した。滅露須には道理がわからぬ。滅露須は、珍走団の団長である。魔導バイクに乗り、悪童共と遊んで暮らしてきた。けれども“無礼”られる事に大しては、人一倍に敏感であった。
前方を見れば、縦横無尽に暴れ回る男女六名の姿がある。いずれも名だたるトッププレイヤーであり、通常の戦闘で彼らと相対すれば、十秒ももたずに倒されるであろう猛者達だ。
「ブッ……ちぎるぜえええええッ!【ロケットブースト】!」
珍走団の団長、滅露須が咆哮と共にアビリティを発動した。
騎乗している魔導機械の速度を一時的に大幅上昇させる効果によって、一気に前方に居る者達に追いすがる。
「ヒャッハー!」
おっさん達から距離を取るために減速した四人を一気にゴボウ抜きにして、いよいよ滅露須はおっさんとカズヤへと接近する。そんな滅露須に気付いた二人が、彼に目を向けた。
「何だ、まだ生きてやがったか」
「邪魔だ」
最早興味を失ったかのようにそう言い捨てて、彼らは無造作に、滅露須に向かって攻撃を行なった。全力とは程遠い攻撃だが、それは一般プレイヤーに過ぎない滅露須を倒すには十分な物であった。
「嘗めるんじゃねえええええッ!」
だがそれを、滅露須は急激な、横方向への急激な方向転換で回避した。一瞬だけの急加速により、任意の方向に一瞬で移動する【クイックブースト】と、ごく短時間だが発生中はあらゆる攻撃をすり抜ける無敵状態になる【シャドウステップ】、その二種類のアビリティを組み合わせた、値千金の神回避!
もしもおっさんとカズヤが全力で彼を排除しようとしていたならば話は違ったが、適当に放っただけの攻撃ならば十分に回避は可能であった。追い詰められた鼠は、時として猫をも噛み殺すのだ。
「【オーバードブースト】ォォォォォ!!」
そして騎乗した魔導機械の耐久度を大幅に削る事を代償に、限界を超えた加速を実現するアビリティにより、遂に滅露須は、おっさん達を鮮やかに抜き去って先頭に立った。
「勝った!勝ったぞ!俺はおっさんに勝ったぞおおおおお!!」
最早ゴールであるイグニスの街までの距離は後僅か。オーバードブーストの効果時間中にゴール可能な距離である。
そう考え、ちらりと後方を見た滅露須はその瞬間に凍り付いた。
後方からは、おっさんがまるで地獄の鬼のような鬼気迫る表情で、滅露須同様に【オーバードブースト】を使用して追いすがってくるのが見える。
そこまでは良い。だが問題なのは、そのおっさんの右手が異様なオブジェクトへと変化していた事だ。
「【クイックチェンジ】!」
おっさんは左手で魔導バイクのハンドルを操作しながら、即時に換装を行なうアビリティを使用して、機械仕掛けの義手を根元からパージして非実体化、アイテムストレージへと格納した。
そして、その代わりにアイテムストレージに存在していた、別のアイテムを腕部へと装着する。
「【ダインスレイヴ】装着ッ!」
それは、腕がそのまま剣の形になったような、義手と一体化されたブレードであった。形状は、何の変哲もないまっすぐな刀身が肩から伸びているだけの代物である。
だが問題は、その大きさにあった。
長さはおよそ10メートル程度もあり、刃の厚みもそれに比例して凄まじいブ厚さになっている。当然、そんな馬鹿げた大きさの刀身を支えるために、おっさんの肩に装着されたユニットも不自然な大きさと歪さを持つ禍々しい物となっていた。
『警告:重量による負荷が限界を超えています。すぐに装備を解除してください』
『警告:適正ではないアイテムが装備されています。すぐに装備を解除してください』
エラーメッセージがおっさんの前に幾つも表示され、おっさんの右肩からは火花が散っている。おっさんが乗る魔導バイクも、その重さによる負荷によりミシミシと音をたてていた。
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【ダインスレイヴ】
種別 魔導兵器
品質 ★×10
素材 鋼鉄
製作者 謎のおっさん
【装備効果】
物理攻撃力 +12500
【解説】
約10メートルの超巨大な刀身が装着された機械義手。
凄まじい重量と素晴らしい切れ味を両立させ、その威力は圧巻の一言。
だが到底人に扱える代物ではなく、武器として根本から破綻している。
例え扱えたとしても負荷により、使用者も無事では済まないだろう。
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「うおりゃああああああああッ!」
おっさんはその巨大な、巨大すぎる刃を、無理矢理に横薙ぎに振るう。ハイウェイを無残に叩き壊しながら、暴力という言葉を具現化したような馬鹿げた代物が滅露須に迫る。命中。
「ふざけんなッ……!負けて、たまるかあああああああああッ!!俺は!まだ暴走れる!」
魔導バイクごと空高く吹き飛ばされ、残骸と化したバイクと共に落下しながら滅露須は叫ぶ。
その時、彼と彼の魔導バイクが、眩い黄金色の光を放つ。
この状況でもなお諦めず、速く走る事だけを求める彼の闘志にシステムが応え、奇跡を起こす。
「【FoW:暴走れ滅露須】!!」
「消えた……!?」
眩い光に包まれた滅露須が、おっさんの視界から消滅したと思われた、その直後である!おっさんの後方からそれは現れた。
それは上半身は人でありながら、下半身が魔導バイクと一体化された異形の姿。ケンタウロスめいたシルエットの半人半バイクと化した滅露須であった。
「これが俺の!魔導バイクの究極進化形態だッ!」
滅露須が叫ぶ。その異様な姿に流石のおっさんも面食らった様子で言葉が出ない。
一方、その光景を上空から巨大な凧に乗ってカメラ撮影していた犬耳忍者は驚きと笑いのあまりバランスを崩して墜落し、それをカメラ越しに見て実況していた【アルカディア放送局】のギルドマスター、アテナが興奮しながら叫ぶ。
「な、なんとぉー!プレイヤーが魔導バイクと合体したあああ!!これこそが魔導バイクの最終進化形態!ギルド【亞屡華泥亞霊震愚連盟】総長・滅露須の、勝利への執念が起こした奇跡を我々は目撃しています!」
なおゲーム内および現実世界にてこの瞬間、万を超える人間がこの光景を目撃した事によって腹筋をズタズタに破壊され、アルカディアBBSには滅露須スレが大量に立てられ、実況スレは凄まじい勢いで加速し、職人の手で魔導バイクと合体した彼の姿を模したアスキーアートが即座に作られる等の大盛況の末にサーバーが落ちた。
「面白ぇ!だが如何にバイクと合体しようが関係ねえ。こいつでその新しい足をブッ壊してやらあ!」
そう言っておっさんはチェーンソー型機械大剣【G.M.D】を構えると、魔導バイクを急加速させて滅露須に向かって突っ込んだ。そして魔導バイク部分を狙って大剣アーツ【グランドバスター】を放った。おっさんの強烈な下段斬りによりハイウェイに亀裂が走る。だがその攻撃を受けても、滅露須は一切速度を落とす事なく、平然と走り続ける。
「無駄だ!この決闘のルールではプレイヤーは一切のダメージを受けねえ!そして今、俺と俺の魔導バイクは一体化している!つまり!」
① プレイヤー=ダメージを受けない
② 俺=プレイヤー
③ ①+②により、俺=ダメージを受けない
④ 俺と魔導バイクは合体している。よって俺=魔導バイク
⑤ ③+④により、魔導バイク=ダメージを受けない
⑥ 以上により、俺=無敵
「こうなる!ワカったかこの完璧な計算式が!エェッ!?」
滅露須が上半身を反らしながら、調子に乗って叫ぶ。
おっさんを挑発しながらゴールに向かって走る滅露須であったが、おっさんは片手でウィンドウを操作すると、それを滅露須に見えるように向きを調節してみせた。
「ほーう、そいつは凄ぇや。ところでよぉ……俺はこんなアビリティを持ってるワケだが」
「あ~ん?どんなアビリティを使おうが、今の俺様を倒す方法なんざ……」
勝ち誇る滅露須の言葉が、そのアビリティの情報を見た瞬間に止まる。
そのウィンドウに書いてあったアビリティとは……
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【強制分解】
種別 アクティブ/ユニーク
所属スキル 錬金術
習得条件 錬金術 SLv100
消費MP 対象の品質・種別による
【効果】
①実体化されているアイテム一つが対象。対象アイテムを破壊する
②①の効果で破壊したアイテムの品質/種別/属性に応じた魔素を獲得する
【解説】
対象アイテムに接触した状態で使用可能。
通常の【分解】と異なり、対象は自分の所有アイテムである必要がない。
他人の所有物を強制的に破壊・分解し魔素化する禁じ手。
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「この決闘のルールではプレイヤーにダメージを与える事は出来ねぇが、魔導バイクを分解出来ないとは何処にも書いちゃあいねえ。そして当たり前の事だが、プレイヤーを分解出来ないなんてルールも無い。つまり……」
① 魔導バイク=【強制分解】の効果で分解できる
② お前=魔導バイク
③ ①+②により、俺はお前を強制的に原子分解できる
「というわけで死ね!【強制分解】ッ!!」
「ちょ、やめ……ぎゃあああああああああ!!」
『【違法改造魔導バイク】を分解し、魔素を獲得しました』
『プレイヤー【滅露須】を分解し、魔素を獲得しました』
『………………!?』
『(^q^)あ、大きな星が点いたり消えたりしてる』
プレイヤーを分解したという意味不明な現象に、システムAIが精神崩壊を起こしたアクシデントがあった(三日ぶり334回目)が、ともあれこれで、おっさんの前を遮る者はいなくなった。
「ったく、手間かけさせやがって。だがまあ、この俺を僅かなりともビビらせた、てめえの意地は覚えておいてやらぁ」
強制分解され死亡・リタイヤした滅露須に向かってそう言い残すと、おっさんはゴールに向かって加速した。ゴール地点であるイグニスの街は目と鼻の先であり、もはや障害は無い。
このまま悠々とゴールを決めようとした、その時である。
「ロードローラーだあああああああああああああッ!!」
突如、おっさんに向かって上空から飛来する影あり。直前でそれに気付いたおっさんが上空に目を向けると、そこには黄色い魔導ロードローラーと、その上に鎮座する世紀末ファッションに身を包んだ、モヒカン頭の少年の姿があった。
彼こそは先ほど、おっさんによって愛用の武器を窃盗された挙句に、乱入してきたレッドにバイクを破壊されて脱落した、ギルド【世威奇抹喪非漢頭】のギルドマスター、モヒカン皇帝である。なぜ彼がここに?それを説明するためには、時間を少し巻き戻す必要がある。
彼が脱落した経緯は読者の皆様方も知っての通りであるが、彼はその直後に転移アイテムを使用してイグニスの街へとテレポートした。そして、すぐさま準備に取り掛かった。何の?無論、復讐である。
敗北した事についてはまだ良い。だが手間暇かけて作った愛用の武器をパクってくれやがった事に関しては、落とし前を付けねばならない。
ヤツの事だ、よもや途中で他のプレイヤーに負けるなどという事はあるまい。必ず最後は一番でゴールにやってくるはずだ。そこを叩く。
ヤツが勝利を確信した瞬間、その横っツラを全力でブン殴ってくれる。
モヒカンはそう考え、準備を進めた。そしておっさんがゴールであるイグニスの街へと近付いてきた瞬間に、満を持して奇襲を仕掛けたのである。
ちなみにここ、イグニスの街は皆様も知っての通り、火山の麓に作られた街である。そして、街の周辺は険しい山岳地帯となっている。
モヒカンはそこに目を付け、思いついても誰もやらないであろう大胆な策を練り、そして実行に移した。彼の取った作戦は、単純にして明快。
標高3000メートルを超える火山の山頂から、ロードローラーを抱えながら飛び降りて奇襲をかけるというトチ狂った物であった。
「ブッ潰れろぉぉぉぉぉぉぉ!URYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」
「ちぃぃっ!?」
そして、その狂気と執念が遂に実を結ぶ。流石のおっさんとてこのような奇襲は端から想定外であり、咄嗟に直撃を避けるのが精一杯であった。
潰されるのだけは何とか避けたものの、魔導ロードローラーの質量と高高度からの落下の衝撃を受けて、おっさんが吹っ飛ばされる。
「クソが!やってくれたじゃねえか小僧……!」
吹き飛ばされながら見れば、モヒカンは当然のように落下ダメージで死亡しており、凶器のロードローラーもまた、耐久度を全損させて消滅しようとしていた。
それを見送りながら、おっさんは空中で体勢を立て直し、着地しようとする。ヒヒイロカネ装甲の魔導バイクは無事だ。着地さえできれば、いくらでもリカバリーは可能である。
「今のはヤバかったぜ……だが惜しかったな、これで……」
「これで終わりだ」
「……ん?」
モヒカンの健闘を讃えようとするおっさんであったが、彼の言葉に重なるように、すぐ後ろから誰かが声を発した。
おっさんが思わずその声の主を確かめようと振り返ると、そこにはいつの間にか追いついてきていたカズヤの姿があった。
「【天魔蒼炎撃】」
すれ違いざまに、蒼い炎を纏った二刀流の十三連撃をおっさんにブチかまして走り去るカズヤ。空中で体勢を崩した状態でそれを防ぐ事は流石のおっさんにも不可能であった。
「【カオスエンドブレイカー】!」
「【エレメンタルバースト】」「【グランドクロス】」
「死にさらせ!【ギロチンフィニッシュ】!」
「失礼します。【無双神薙】!」
更に立て続けにやってきたシリウスに、魔剣による痛烈な突きを受け、エンジェの魔力を込めた両手杖のフルスイングと、召喚モンスターの髑髏の聖騎士による神聖属性奥義のコンビネーションを食らい、レッドの首を刈り取るような処刑鎌の一閃と、カエデの薙刀による高速八連撃。これらをほぼ同時に連続で食らったおっさんは、ボロ雑巾のような姿になってハイウェイを転がっていったのであった。
◆
第一回 レーシングデュエルグランプリ 結果発表
優勝 カズヤ
準優勝 シリウス
第三位 エンジェ&髑髏の聖騎士
第四位 レッド
第五位 カエデ
ギルド【亞屡華泥亞霊震愚連盟】:
ギルドマスター滅露須、おっさんの強制分解により死亡。全員脱落
ギルド【C】:
代表者おっさん、モヒカンの自爆特攻からのトッププレイヤー五人によるフルボッコでリタイヤ。全員脱落。
ギルド【C】VS【亞屡華泥亞霊震愚連盟】のギルド戦争:DRAW。
◆
「負けちまった。すまんな」
「まあいいですけど、おっさんが派手に壊したハイウェイの修理と、損失の補填をよろしくお願いしますね?」
おっさんの財布の中身:マイナス25億ゴールド。
アルカディアは今日も平和だった(欺瞞)。
大変お待たせしました。
一度創作意欲が完璧に消え失せ、その後も燻った状態で書きたくなった時に少しずつ書いて、ようやく完成しました。
ブランクもあってイマイチ自分でも上手く書けたか自信がありませんが、今はこれが精一杯。
ようやく、また書きたいという欲求が少しずつ沸いてきましたので、今後もマイペースでの更新になりますが書き進めていきたいと思います。