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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第三部 おっさん戦場に舞う
117/140

22.謎のおっさん、風になる(2)

「“”ンのかコラァ!」

「“上等ジョートー”だよオラァ!」


 ハイウェイにて対峙し、メンチを切って罵り合う二組の男達の姿があった。片方は特攻服を身に纏い、派手で奇抜な髪型の、三十数人ほどの集団。ギルド【亞屡華泥亞あるかでぃあ霊震愚れーしんぐ連盟れんめい】という名の珍走団である。

 ギルドのエンブレムが描かれた旗、すなわちギルドフラッグを高々と掲げ、更に【喧嘩上等】【仏血霧】【夜露死苦】等と書かれたノボリ旗を掲げる者達の姿もある。


 そして、そんな彼らに対峙するのは十人の男達。人数は敵対者に比べて1/3と小勢ながら、気迫では負けていない。彼らは作業用のツナギと、革手袋と安全靴を着用。腰から様々な工具が入ったポーチを吊るしている。

 彼らこそはギルド【C】の職人達の中から選ばれた、魔導バイクの扱いに長ける魔導技師だ。整備は勿論、運転のテクニックも一流である事は言うまでもない。

 対する彼らもまた、【毎日が産業革命】【大丈夫、Cの発明品だよ】【毎週金曜日はCポイント二倍デー】【月末に福引イベント開催】【来週水曜日、ギルマスの新作料理お披露目】などと書かれたノボリ旗を掲げている。ただの宣伝じゃねーか。


 そして、そんな彼らの先頭に立つは皆様ご存知、ギルド【C】の最終兵器こと謎のおっさんだ。いつものツナギや黒い革ジャンではなく、敵対する男達同様に特攻服を着た、右腕が機械義手の目つきが悪い中年男性。

 おっさんが敵対集団の前に歩み出ると、それに応えて彼らのリーダーであろう、天を衝くド派手なピンク色のリーゼント・ヘアの巨漢が前に出てくる。


 おっさんの殺人的な目つきによるガン飛ばしを、リーダーは真っ向から受け止める。しばし無言で睨み合う両者。

 先に口を開いたのは、おっさんだった。


「良い度胸だ小僧。その気迫に免じて遊んでやろうじゃねえか。勝負の内容はどうする?」


 おっさんは、相手が少し睨まれた程度でビビる程度の奴ならば、有無を言わさず片付けるつもりで居た。だが、相手のリーダーはどうやら、おっさんの試験に合格したらしい。


「勝負の内容だァ……?そんなモンは決まってンだろうが……俺達ァ“走り屋”だぜ……?」


 彼の言葉は、おっさんの予想通りの物であった。おっさんはここに来るまでに考えてあった勝負の内容を口にする。


「なら、バイクレースで勝負だ。此処からイグニスの街まで、一番早く辿り着いたヤツが勝者とする。そして同時に、そいつが所属するギルドの勝利になる」

「望むところだ……それと一応聞いとくが、二位以下の順位は考慮しねェんだな……?」

「当ったりめーだ馬鹿。おい、二番ってのは何だ?」

「……“敗者マケイヌ”の“一番テッペン”だ」

「わかってんじゃねえか。つまりそういう事さ」


 そして両者の話し合いは進み、ここに規定レギュレーションが結ばれた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

 【ギルド戦争 交戦規定】


 ①:魔導バイクに乗り、先にゴールに辿り着いた者が勝者となる

 ②:①の勝者が所属するギルドが、ギルド戦争に勝利する

 ③:レース中、この場に居る全員で決闘デュエルを行なう

 ④:落車、転倒、クラッシュ、コースアウトした者は失格となる


 ③についての補足:

 モードはバトルロイヤルモード。すなわち全員が全員に攻撃可能。

 また、ダメージ補正は0%に設定する。

 つまり、プレイヤーへの攻撃でダメージを与える事はできない。

 ただし衝撃、ノックバック、バイクへのダメージは無効化されない。


 【ギルド間の取決め】

 ギルド【C】が勝利した場合:

 亞屡華泥亞霊震愚連盟が【C】の傘下に入る


 ギルド【亞屡華泥亞霊震愚連盟】が勝利した場合:

 おっさんが自腹でサーキットを作り、無償で提供する


 【備考】

 勝者には初代スピードキングの称号が与えられ、永遠に称えられる。

 また副賞として、全ての高速道路の永久無料パスが授与される。

――――――――――――――――――――――――――――――――――


「条件はこんな所でいいか。問題は無ぇな?」

「“無”ぇぜ……!」


 かくして、両ギルドに所属する命知らず達が、スタート地点に着く。


『【謎のおっさん】さんが、決闘の申請を行ないました。

 モード:バトルロイヤルモード。

 オプション:ダメージレート0%。

 その他、特殊ルールを採用しています。

 受ける場合はYESを、拒否する場合はNOを押してください』


 全員の前に、システムメッセージが表示される。男達は一切の躊躇も見せず、力強くYESのボタンを押した。

 すると、その瞬間である!


決闘デュエルが開始されます。ルート上の一般車両は、直ちに退避して下さい。繰り返します。決闘が開始されます。ルート上の一般車両は、直ちに退避して下さい……』


 ハイウェイ全体にアナウンスが流れる。それと共に、ハイウェイ全体がガシャンガシャンと派手な音を立てながら、様々なギミックが凝らされたレーシングコースへと変形していくではないか!


「“面白”ェ……!」

「おっさん工事の時に一人でなんかゴソゴソやってると思ったら、こんなの作ってたのか……!?」


 その様子に誰もが驚きを隠せず、同時に興奮を抑えきれない様子であった。


「さあ始まるぜ。準備は良いか(アーユーレディ)糞野郎共ファッキンガイズ


 おっさんの言葉に頷き、男達は魔導バイクに跨り、起動させる。

 やがて赤色のシグナルが青に代わり、彼らは一斉に走り出した。

ライディングデュエル、アクセラレーション!

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