表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第三部 おっさん戦場に舞う
111/140

2ヶ月遅れでエイプリルフールネタをやってもいい。自由とはそういうことだ

「……あの戦争の話を聞きたいというのは君か?いったい何を知りたいんだ?」


 西暦2040年某日、欧州の某所にて。

 右目に黒い眼帯を付けた隻眼の、初老の男が極東からの客人を迎えていた。客人は二十代半ばほどの、記者を名乗る男であった。


「……そうか。あの男を追っているのか」


 記者がある単語を口にすると、老人の顔つきが変わった。その固く強張った表情に込められた物が何なのか、記者の青年には読み取る事が出来なかった。


「ああ、知っているとも。……そうだ。奴は実在する。私も時に味方として、そして時に敵として奴と戦った。何を隠そう、この右目も奴に奪われたものさ」


 老人は失われた右目を手で抑えると、キューバ産の葉巻を咥え、オイルライターで火を点けた。一度煙を吸い、吐いた後に彼は語りだす。


「……いいだろう。せっかく極東から新しい友が訪ねてきてくれたというのに、手ぶらで返すのも忍びない。私とて全てを知っている訳ではないが、それでもよければ語ろうではないか」


 ニヤリと笑い、老人は言った。


「あの男――人喰い鴉(レイヴン)の物語を」



  ◆



「基地内の全ての電子機器が言う事を聞きません!完全に支配権を掌握されています!」

「モニターに四葉のマークが……!【クローバー】の仕業です!」

「ええい、何をやっている!さっさとコントロールを奪い返せ!いつ敵の部隊が襲って来るか……何だ今の爆発音は!?」

「侵入者です!一階と二階の兵士は既に全滅!三階も突破されつつあります!現在この基地はネットと物理のダブル・ハッキングを受けております!」

「侵入者だと!?なぜ今まで報告が無かった!何処の国の部隊か!?」

「て、敵は部隊ではありません!たった一人です!サムライソードを持った黒い服の、若いアジア人の男……噂に聞く【レイヴン】の特徴と一致します!」

「貴様等、この非常事態にヤクでも打ってラリっておるのか!?あんなものは唯の噂に過ぎん……!」

「よ、四階まで突破されました……!まもなくここに侵入者が!」



 西暦2020年、春。欧州経済の崩壊に端を発するEUの分裂と崩壊、それによって始まった国家間の紛争。



「ミッションの内容を説明するぜ。フランス軍の戦車部隊が国境付近に展開中だ。速やかに爆撃機で出撃し、これを排除しろとの事だ」

「それは構わねえんだが煌夜、どうして俺はJu87(スツーカ)みてえな外見の爆撃機に乗せられている?ルーデルごっこでもしろってのか?それと俺の機体は何処に行った?」

「安心しろ、そのスツーカもどきの中身は最新鋭機の性能を軽くブッちぎっている、アイザックお手製のオリジナル機だ。それとお前のストライクイーグルは、その機体の部品になった」

「そうか、よくわかった。帰ったらあのアホをサンドバッグにしてやる」



 欧州全土を巻き込んだ泥沼の戦いに勝利者は無く、ただ破壊と悲劇だけが広がっていった。



「レイヴンだ!レイヴンが出たぞ!うわああああ!」

「我々の銃弾が全て回避されています!そ、そして……既に二十名以上がやられました!」

「馬鹿な……奴は本当に人間か!?」

「何だあの銃は!?連射速度、射程、威力!全て桁違いではないか!?」



 だがその戦いは、僅か一年足らずで終焉を迎えた。



「馬鹿な……!完全に捉えた筈……!貴様に逃げ場は無かった筈……!なのに、どうして貴様は無事で、俺が斬られている……!?」

「――不破流活殺剣奥義、神威。冥途の土産に教えてやる。俺は時間を止められるんだよ」

「おのれ、悪魔め……ごふっ!」



 後に欧州一年戦争と呼ばれたこの戦いには、謎が多い。

 誰があの堅牢な基地を陥落させたのか?

 誰が戦車を破壊し、誰があの部隊を全滅させたのか?



「よう、お嬢ちゃん。怪我は無かったかい?」

「……レイヴン。まさか本当に実在したとはね」



 それに伴い、不確かな噂話、都市伝説めいた伝説が数多く囁かれた。

 堅牢なセキュリティを意に介さず、あらゆる情報を盗み出すハッカーの存在。

 最新鋭の兵器を、遥かに超えるスペックの兵器や機体を作り出す科学者の存在。

 そして彼らのバックアップを受け、単騎で戦場を駆け、支配する傭兵の存在。

 伝説の傭兵、不死身の男、黒衣の悪魔、人喰い鴉……

 様々な名で呼ばれ、だが誰もその正体を知らず、実在するのかどうかすら定かではない。



「恭志郎、最後のミッションだ。あの国の連中……とうとう破れかぶれになったのか、あの大量破壊兵器を起動させるつもりのようだ。だがあれさえ止まれば、ようやくこの戦いも終わりになる。何としてでも止めてくれ」

「起動完了までの時間は?」

「およそ……12時間だ」



 今こそ語ろう。

 かの時代を駆け抜けた、一人の傭兵の物語。

 人喰い鴉(レイヴン)の物語を……。



「ごめんなさい、恭志郎。貴方を誰よりも愛していた……。だけど、それと同じくらい、貴方が憎いの」

「……そうか。ああ、これが報いか」

「さようなら、恭志郎」



 謎のおっさんオンライン外伝 Raven2020

 ――今明かされる、不破恭志郎(謎のおっさん)の過去。


























 ――公開予定、無し!

まあ実際におっさんの過去についての設定は、俺の頭の中にはありますが、特にそれに関して本編中で詳しくやるつもりはないです。多分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ