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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第三部 おっさん戦場に舞う
104/140

13.謎のおっさんVSシリウス(6)

「【FoW(フォースオブウィル)混沌の救世主(カオスセイヴァー)】!」


 大いなる意志の力により、奇跡が起きる。

 一度は持ち主を庇い、砕け散った魔剣の力を取り込んだシリウス。

 その全身は漆黒の刺々しい鎧に覆われ、赤い外套マントが風に靡く。フルフェイスヘルムから覗く、燃え盛る炎のような赤い瞳がおっさんを正面から見据え、強い輝きを放っている。

 その手には魔剣、カオスジェノサイダーの柄が握られている。刀身が砕けて破損した状態であり、本来であれば最早、武器として使用する事は不可能である筈なのだが、柄の先からは光が噴き出して刃を形成していた。


「ちょっ……はああああああ!?」

「変身キタアアアアアア!」

「何だこれは!?一体どうなっているのだ!?」

「まるで意味がわからんぞ!?」


 その変身シーンを目の当たりにした観衆達は、一気に大混乱へと陥った。観客席が蜂の巣をつついたような大騒ぎになる。また彼らと同じように、放送席に座っている実況担当のアテナも混乱している様子で、


「何と何とぉー!?追い詰められたシリウス選手、ここでまさかの魔剣と合体!変身ヒーローさながらの超ド派手なアクションを見せてくれました!正直、わたくしも全く理解が追いついておりません!ですので、ここは解説のカズヤさんに聞いてみたいと思います!」


 と、一気にまくし立てると隣に座るカズヤへとマイクを向けた。


「あれは噂の【Force of Will】なるスキルによる物かと思われますが、たった今シリウス選手が使ったあれは、一体どういった物なのでしょうか!?」


 水を向けられたカズヤは、その問いに答えるべくマイクを受け取り、言った。


「知らん。あんな物は俺の管轄外だ」


 まさかの匙投げである。テイミングモンスターと合体するお前が言うな、と皆が思ったが、口に出す勇者は居ない。

 そんな混乱をよそに闘技場内では、変身を終えたシリウスとおっさんが対峙していた。


「準備は出来たかい?」

「ええ、お待たせしました」

「構わねえさ。ヒーローの変身中には攻撃しちゃいけないのがお約束だからな」


 シリウスがおっさんに、光の剣を向ける。


「これが僕達の、最後の攻撃……いきます!」

「おう。どこからでも来やがれ」


 それに対しておっさんは、棒立ちのままでそれを迎え撃つ。一見すれば隙だらけに見えるが、実際は適度に脱力し、どんな状況にも対応できるようにしている。

 シリウスが動き出す。その初速はまさに電光石火。

 だがおっさんの研ぎ澄まされた五感はその動きを正確に捉え、超高速思考をもってシリウスがこれから取るであろう動きを予測する。


「無駄だ小僧!いくらスピードを上げようと、お前の動きは全て見切った!」


 その言葉の通り、おっさんはシリウスが放った神速の刺突を躱す。どれほど速く正確無比な攻撃であろうと、未来予知にも等しい洞察力によって、事前にそれを予測しているおっさんに対しては無力!

 いくらシリウスがパワーアップしようとも、繰り出す攻撃が全て読まれているならば勝ち目は無い。そして、おっさんは僅かな隙をも見逃さず、カウンターを仕掛けてシリウスにトドメを刺そうとするだろう。


 先の言葉の通り、おっさんは既にシリウスの動きを完全に捉えていた。

 今のおっさんの前では、例えシリウスが何をしようと全ての行動を読まれ、攻撃を当てる事すら不可能であろう。もはや勝ち目は万に一つもありえない。


 ……だが、それはあくまでも、おっさんとシリウスが一対一であったならばの話である。もしもそこに第三者の意志が介入していたならば、話は別だ。


『かかったな阿呆が!その油断が命取りだ!』


 おっさんがシリウスの刺突を紙一重で躱し、カウンターの一撃を加えようとしたその瞬間。突然シリウスの身を包んでいた、漆黒の刺々しい鎧が変形する。

 全身から勢いよく棘が飛び出し、鞭のような形状を取る。無数のそれらはまるで蛇の群れのように、一斉におっさんに襲いかかった。


「ちっ……!」


 おっさんは確かにシリウスの思考を、行動を全て読み切っていた。ゆえにシリウスの攻撃では、おっさんを倒す事は出来ない。

 だがシリウスと同化しているカオスジェノサイダーが、それを補う。全身を覆う黒い魔鎧、シリウスと同化しているそれを変形させての奇襲は流石のおっさんも予想外だったのか、焦った表情でそれらを叩き落とす。


「ハッ!王者は油断すらも楽しむのさ」


 軽口を叩きながら、おっさんは四方八方から弧を描きながら迫る刃を、最小限の動きで受け流す。多少の被弾は覚悟の上で、致命傷を避けつつ反撃を狙うが……

 その瞬間、おっさんの足元から、床を突き破って黒い、刺々しい巨刃が現れる。おっさんはギリギリのタイミングでそれを跳躍して回避。

 だがそれはおっさんを追尾すると共に、その切っ先が変形する。獣の頭部のような姿になったそれが、獲物に食らいつくように大口を開けた。


 おっさんの全身が、それに飲み込まれそうになる。その寸前におっさんは人知を超えたスピードで回避運動を取るが……


「これで終わりです!」


 黒い獣の顎が、おっさんの肩口に食らいついた。そして、おっさんの右肩から先が、それによって食い千切られる。

 おっさんのHPが大きく減少し、それと共におっさんの視界の端に、状態異常を表すアイコンが新たに表示された。


 【部位欠損】。

 特定の攻撃によって、特定部位に大きいダメージを受けた際に引き起こされる状態異常である。

 文字通り体の一部を欠損する事によって動きが大きく制限され、同時にステータスに下方修正がかかる。

 治療の為には高額な再生ポーションか、習得難易度の高い回復魔法が必要になり、自然治癒はしない為、数ある状態異常の中でも厄介な部類に入るだろう。


 片腕を失いながらも華麗に着地したおっさんは、右肩を左手で抑えながらシリウスを睨む。


「俺の予測した未来を、変えてみせたか……面白ぇ」


 シリウスはそんなおっさんに剣を向けると、宣言する。


「……勝負ありです。いくらおっさんでも、利き腕を失った状態ではまともに戦えないでしょう。降参して下さい」


 おっさんはそれを聞くと、愉快そうに凶悪な笑みを浮かべた。


「あまりおっさんをナメるなよ小僧。この俺が片腕を失った程度で戦えなくなるとでも?言っておくが俺にはまだ切り札を隠しているし、あと二回の変身を残している。勝ったつもりになるのは、まだ早いんじゃねえかい」


 おっさんの言葉に、警戒を強めるシリウス。

 確かに彼自身が言うように、おっさんはまだ隠された切り札を幾つか残している。とは言えそれはあくまでも最終手段であり、おっさんにとっても可能な限り、使いたくない代物ではあるのだが。


(とは言った物の、どうするかね……。闘技場にコッソリ仕掛けた自爆スイッチで闘技場や観客もろとも全てを吹っ飛ばすなり、衛星魔導砲サテライトキャノンでやはり闘技場ごと吹っ飛ばすなり、あるいは飛行要塞を召喚して主砲をぶっ放すなりすれば勝てるだろうが、どう考えてもコスパ最悪な上に観客の反感を買うだろうしな……潮時か)


 そう考え、おっさんはシリウスに、そして集まった観衆達に向かって宣言する。


「だがまあ、良い一撃だった。俺の予知を上回った事に免じて、今日のところは負けた事にしておいてやる!降参リザインだ!」


 おっさんがそう宣言した事により、決闘デュエルに決着が付く。

 シリウスの頭上に【Winner】の文字が出現し、電光掲示板にもその旨が表示された。


 観衆たちの多くは、おっさんの最後の台詞を負け惜しみのような物だと捉えた。

 だが……


「その魔剣に助けられたな」


 すれ違いざまに小声でシリウスにそう言い残して、おっさんは選手入場口を通り、闘技場から退出する。

 シリウスは、そんなおっさんを追いかけ、薄暗い通路でその背中に声をかけた。


「おっさん、その腕の欠損、カエデさんなら再生できると思いますけど……よかったら治療させて貰えませんか?」


 その言葉を聞いたおっさんは、振り返る事なく……その場で巨大な魔導銃剣【メメント・モリ】を実体化した。

 そして、それに手をかざすと、あるアビリティを発動させる。


再構成(リコントラクション)!」


 すると、メメント・モリが光の粒となって消失する。

 そして一瞬の後、そこには全く別のアイテム……魔導機械式の義手が姿を現していた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 【再構成】


 種別 アクティブ・アビリティ

 対象 自身が所有する、実体化したアイテム1個

 消費MP 対象アイテムの品質×100

 習得条件 【錬金術】SLv80


 【効果】

 ①対象アイテムを【消滅】させる。

  その後、以下の②③の効果のうち、どちらかを選んで発動する。

 ②対象アイテムと同じ品質・同じ種別のアイテムを生成する。

 ③対象アイテムと同じ品質・異なる種別のアイテムを生成する。


 【解説】

 物質を分子レベルにまで分解し、別の物へと変換・再構成する錬金術の秘技

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 【Arm of Tyrant】


 種別 魔導義肢/魔導兵器

 品質 ★×10

 製作者 謎のおっさん


 【装備効果】

 物理攻撃力+250 物理防御力+200

 STR+500 DEX+500


 【特殊効果】

 ①このアイテムは耐久度が存在せず、破壊されない

 ②このアイテムは専用化されている(謎のおっさん専用)

 ③このアイテムは【部位欠損:右腕】状態の時のみ、右腕に装着できる


 【解説】

 魔導機械式の義手。

 極めて精巧な出来であり、生身の腕以上に精密な動作が可能。

 また同時に、非常に強力な魔導兵器であり、多種多様な兵器が内蔵されている。


 【内蔵兵器一覧】

 大口径魔導銃(魔力弾カートリッジ及び大魔弾対応)

 高出力魔力ブレード

 魔力シールド及び斥力場発生装置

 極細ワイヤー射出・巻き上げ装置

 ロケットパンチ

 射突ブレード(装填数1発)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 おっさんは【再構成】によって新たに生成したそれを、欠損した右腕があった場所に装着すると、振り返ってシリウスに言った。


「何の事だか分かんねえな。俺の右腕ならここにあるぜ」


 そう言い残して去っていくおっさんの背中を、呆然と見つめるシリウスであった。


「……あまりにも、勝った気が……しない……」


 最後にそう呟くと、シリウスは力尽きたようにがっくりと項垂れた。

↓シリウスの変身について、参考にした物とかの一覧


・仮面ライダーシリーズ(主にRX)

・ナイトブレイザー(ワイルドアームズ セカンドイグニッション)

・ゼアル(遊戯王ZEXAL)

・抜剣覚醒(サモンナイト3)


チートしかおらんやんけ。

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