12.謎のおっさんVSシリウス(5)
大変遅くなりました。
おっさんとシリウスが激闘を繰り広げる闘技場。その観客席の一角にはエルフ族の姿もあった。彼らはギルド【流星騎士団】のメンバー達の近くの席に固まり、同盟関係にあるシリウスの戦いを見守っている。
彼らの中には見目麗しいエルフ族の族長、レティの姿もある。また、彼女の近くには今回のおっさんとエルフ族、そして流星騎士団の諍いの元凶となった者達……すなわち、エルフ族の過激派と呼ばれる者達の姿もあった。
先日おっさんがエルフ村を襲撃もとい訪問した後の事、彼ら過激派に属するエルフ達は、族長と彼女が率いるエルフ兵達によって身柄を押さえられ、そして強引にこの場へと連れて来られたのだった。
そうして彼らは目の当たりにする事になった。彼らが喧嘩を売った相手の恐ろしさと、そんな恐ろしい相手に単身で立ち向かう同盟者の姿を。
「……族長、あれは……あれは一体何なのですか」
緑色の髪の青年――過激派のリーダー格の男だ――が、闘技場内にて戦っている二者のうち、片方を指差して震える声で尋ねる。彼が指さす先にいるのは、二十代前半ほどの若者の姿になったおっさんだ。
そのおっさんに向かってシリウスが、残像を残しながら高速で接近し攻撃を仕掛ける。目で追う事すら困難な超スピードで一瞬にして距離を詰め、振るわれるのは片手剣の四連撃アーツだ。
おっさんはその初撃を紙一重で躱す。完璧な見切りだ。そして同時にカウンターを入れて、シリウスに痛烈な一撃を加えていた。
「不破流暗殺剣・無手ノ型【螺旋貫】」
足首から膝、腰、肩、肘、手首、指の関節まで、貫手を放つ際に使用する全ての関節の回転を連動させて放たれる神速の貫手。螺旋の回転を描いて突き入れられたおっさんの指が、鎧ごとシリウスの体を刺し貫いていた。咄嗟にシリウスは後ろに跳び、距離を取ろうとするが……
「不破流活殺剣・三ノ型、奥義【二刀燕返し】!」
短剣形態の魔導銃剣を抜き放ち、おっさんがシリウスに追撃をかける。一瞬にして襲い死角からほぼ同時に襲いかかる六発の斬撃をまともに食らい、シリウスが倒れる。
「族長……あれは何なのですか……?あれは……本当に人間なのですか……」
わなわなと震えながら質問を重ねる青年。彼の目に映るおっさん達の姿は、彼が知る人間とは全くの別物であった。
と、その時。シリウスと戦っていたおっさんが、ふと顔を上げた。そしてエルフの青年の目が、おっさんの凶悪な眼差しと交差する。
目と目が合ったその瞬間、おっさんははっきりと悟った。
(そうか、てめえか)
その瞬間、エルフの青年はおっさんのそんな声を聞いた気がした。それは幻聴であったが、彼は確かにおっさんの意志を、濃密な殺気と共に感じ取った。
「ヒッ……!?」
青年は恐怖のあまり、叫び声を上げて椅子から転がり落ちた。その姿はまさに負け犬そのもの。おっさんは興味を失ったように、無様に震える彼から視線を外した。
屈辱を感じるよりも先に、助かったという安堵が彼の心を満たした。おっさんはただの一睨みで、彼の心をへし折ったのだ。
ひとまずは、これでおっさんの目的の一つ……どうやら人間を下に見ているらしい彼らに対して、力を見せつける事は果たせたと言っていいだろう。
そんなおっさんだが、彼は闘技場にて全盛期の力でもって、シリウスをフルボッコにしている最中である。シリウスも半神化の力を使って健闘しているが、やはり苦戦は免れない様子である。
だが、そこでおっさんに耳打ちによる個人チャットが届く。
個人チャットは実際に声に出して話をする訳ではなく、1:1でのテレパシーのような物だと考えていただければ分かりやすいだろう。
「ちょっと師匠何やってるんですか!事前の打ち合わせと全然違うじゃないですかー!」
それはおっさんの弟子であり、ギルド【C】のサブマスターを務める少女、ユウからの物だった。おっさんはシリウスの反撃を躱しながら応答する。
「悪いな、プランBに変更だ」
「無いですよそんな物!」
おっさんの勝手な行動にユウが軽くキレる。続けて彼女は恐るべき真実を語る。
「だいたい元々の予定じゃ、適当な所でわざと負けるって言ってたじゃないですか!なんで二人ともガチで潰し合ってるんですか!?」
ユウの口から語られる驚愕の真実!なんとおっさんは、そしてギルド【C】はこの勝負、最初から勝つつもりは無かったのであった!
ここで明かすが、おっさんとギルド【C】の企みを簡単に説明すると以下のようになる。
①、エルフ族を観客として呼び、彼らにおっさんの力を見せつける
②、その上でシリウスと好勝負をし、ギリギリの所でわざと負ける
③、結果、流星騎士団やエルフ族の面子、利益もある程度保てる
④、その上で流星騎士団とは秘密裡に交渉する
⑤、エルフ族に対しては力を見せつけた上で交渉。懐柔策を取る
⑥、ギルド【C】の利益に関しては、この興行の観客達が落とすゴールドで十分に元は取れているので問題は無い
簡単に説明すると、ざっとこのような物だ。
まず大前提として、ギルド【C】は最初から、完全勝利などは求めてはいない。
何故ならば彼らは戦争屋ではなく商人であり、最大手ギルドである流星騎士団や、八大種族の一つであるエルフ族は、今後の重要な取引先であるからだ。
完全に叩き潰して搾取すれば短期的な利益は見込めるが、逆に禍根を残す事で長期的な利益を失う事になる。それはいけない。また、圧倒的な勝利によって他勢力から無駄に警戒される事も、彼らの望むところではなかった。
ゆえに相手の面子を立てつつ、うまく負けてやるという策を【C】の幹部達は立てたのだが……
その計画は、おっさんの暴走によっておじゃんになった。
「いやあ悪い悪い。俺も最初はそのつもりだったんだが……シリウスの野郎が思いのほか楽しませてくれるからよ、つい対抗心がな」
「ついじゃないですよ、ったく……」
呆れたようにぼやくユウに、おっさんは一切悪びれる事なく告げる。
「それにコイツも、今更勝ちを譲られたところで納得なんぞするめえ。戦ってみてわかったがこの野郎、本気で俺に勝つつもりだぜ。甘さが抜けきれねえお坊ちゃんだと思ってたが、とんでもねえ。……ところでユウよ、お前に一つ教えておこうか」
「……何をですか」
「男ってのはな、どいつもこいつも皆ガキみてえな所があってな。幾つになっても治りゃしねえのさ。『目の前に、自分より強い男が居る』。そんな傍から見たら些細でくだらねえ事が、どうにも我慢ならねえのさ。コイツはもう意地でも退かねえだろうよ……俺がイグナッツァと戦った時もそうだったから良く分かる。なら、とことん付き合ってやらねえとな」
「はぁぁぁ……男ってどうしてこう……」
おっさんの言葉に思わず頭を抱えるユウであった。
「そこを優しく包み込んでやるのが、良い女になる秘訣ってヤツだぜ?」
「それって師匠が良い歳して我儘な子供みたいな事ばかりする言い訳ですよね。もう騙されませんよ」
「チッ、ばれたか。随分としたたかに育ったじゃねえか」
「周りに自重しない大人がいるせいで鍛えられましたので」
「誰だいそいつは、ひでえ奴だな。見つけたらブン殴っといてやるよ」
「では、後で鏡でも殴っておいてください」
大きく溜め息を吐くと、ユウは諦めたようにおっさんに告げる。
「あーもう、わかりましたよ。好きにしてください!後で山ほど説教がありますのでお楽しみに!」
「ククク、そいつぁ怖ぇや。ならさっさと片付けて、とんずらこくとしようかね」
そう言って、おっさんは会話を終えた。
「戦闘中に個人チャットですか。余裕そうで羨ましいですね」
「悪いな、弟子からのラブコールでね。そう妬くんじゃねえよ」
シリウスが稲妻のように速く、鋭い突きをおっさんの喉に放つ。おっさんはそれを魔導銃剣で逸らしながら、冗談めかして言い返した。
「さて……シリウスよ、もう少しお前と遊んでいたい気分ではあるんだが……そっちは限界が近いだろう?そろそろ決着を付けようじゃねえか」
おっさんが言うように、シリウスは【半神化】を維持するために、莫大な経験値コストを支払い続けている。……否、実はシリウスは既に、溜め込んでいた経験値を全て消費し尽くしている。現在は彼の最も高いパラメータ……すなわち頑丈さを表すVITを減少させ、それを経験値に還元する事で半神化を維持している状態であった。
盾役のアイデンティティであるVITを減らすという、自らの命を削るに等しい行為。そこまでして勝利を掴もうとする執念が、覚悟が、シリウスの体を突き動かす。
「望むところ!」
おっさんの言葉に応えたシリウス。彼は左腕を大きくしならせて、その手に持った盾を……おっさんに向かって投げつけた。
「行け!【シールドブーメラン】!!」
その盾は正面から見ればごく普通の大型盾であったが、おっさんに向かって回転しながら飛ぶそれを良く観察してみれば……裏側には何やら、機械の部品らしき物が幾つも取り付けられているではないか。
シリウスが使っていたこの盾は、かつてギルド【C】が開発したイリーガルウェポンの一つであり、現在はシステムに正規カテゴリとして採用されている魔導機械を仕込んだ盾、【機械盾】であった。
【機械盾】の最大の特徴はやはり、内部に魔導兵器を内蔵している点に尽きる。通常の盾に比べると扱いが難しい上に耐久力は劣るものの、仕込み銃による攻撃を行なったり、バリア発生装置を仕込んだりといった様々な用途に使える便利な盾だ。
そしてシリウスが投擲した盾に仕込まれているのは……ロケットエンジンだ!
盾の裏側に複数取り付けられている噴射器から魔力が噴射し、盾が加速しながらおっさんに突っ込む。更に盾の側面からは高速回転する巨大な仕込み刃が飛び出した。
シリウスが使用したのは【盾】と【投擲】の複合アーツであり、比較的簡単に習得可能なアーツ【シールドブーメラン】であったが、それはもはや通常のシールドブーメランとは一線を画す存在であった。
巨大な回転ノコギリめいた凶器が、反応する事すら困難な程のスピードでおっさんに迫る。
常人であれば無抵抗のまま両断されるであろうそれを、おっさんは恐るべき先読みによって回避する……が、しかし流石に完全には回避し切れなかったようで、おっさんの頬がざっくりと切り裂かれた。元々の凶悪な目つきに頬の傷が加わり、更におっさんの人相が極悪になった。
全盛期の力を取り戻したおっさんに、掠っただけとはいえ攻撃を当てたシリウスを褒め称えたいところではあるが、彼の攻撃はここからが本番である。
シリウスはカオスジェノサイダーを両手で握り、大上段に構える。
「【天地開闢・創世撃】!」
シリウスの奥義が、今まさに放たれようとしていた。だが、おっさんは既にそれが放たれるのを読んでいた。
(不破流秘奥義、【天眼通】)
それが、おっさんが使っているものの名であった。
それは同じく不破流剣術の秘奥義である【神威】と同様に、人の限界を超えた思考速度によって成立する。
それに加えておっさんの、数々の修羅場を生き抜いてきた経験がもたらす直感や戦闘技術、観察眼。それらが最大限に発揮される事により、その奥義は完成する。
目の前の敵の動きだけではなく、己を取り巻く全ての事象を完全に察知し、把握し、一瞬で計算し尽くす。それによっておっさんは、未来予知めいた先読みを可能としているのであった。
とはいえ、そのような所業は明らかに人間の限界を超えた行ないであり、いくらおっさんと言えどもそう簡単に使える物ではないし、何度も連続で使う事は不可能だ。
だが今のおっさんは【Force of Will】によって全盛期の力を取り戻しており、それによって精度・使用時間共に普段よりも大幅に増していた。
「悪くはねえ……が、まだまだ甘えな」
シリウスの奥義が放たれる寸前に、一瞬にしてシリウスの懐に飛び込んでいたおっさんの掌が、シリウスの鳩尾に触れる。
観衆たちの目には、ただ掌が触れただけのように見えたそれによって、シリウスの体は一気に壁際までノーバウンドで吹き飛ばされた。
「何だあああ!?ただ触っただけのように見えましたが、その直後にシリウス選手、まるで大型トラックに撥ねられたかのように吹っ飛んだぁー!?」
「無寸勁によるカウンター……流石に耐え切れないか?」
おっさんが使用したのは【無寸勁】と呼ばれる技である。ノーインチブローとも呼ばれるそれは、拳や掌を完全に密着された状態から、一切動かさずに衝撃を叩き付ける大技だ。
それをカウンターで食らったシリウスは壁に背中を強打し、崩れ落ちる。
シリウスに残されたHPは、僅か1。
HPが0以下になる時に低確率で発動し、HPを1だけ残すアビリティ【食いしばり】が発動した事によって九死に一生を得たシリウスであったが、問題はそこではなかった。
(勝てない……)
全身全霊を込めた奥義を、完璧なカウンターで返された。それによって受けたダメージよりも、シリウスの精神に対するダメージの方が遥かに大きかった。
(僕は負けるのか……このまま、何も出来ないまま……)
折れかけた精神と瀕死の肉体。視線の先では、おっさんがトドメを刺すべく、こちらに銃口を向けている。直後にそこから放たれる凶弾が、シリウスの僅かに残ったHPを削り切るだろう。
(皆、ごめん……僕は、もう……)
そして、おっさんがトドメの銃弾を、放った。
それは狙い違わず、シリウスの額へと吸い込まれていき……
『うおおおおおおおおおおおおおおッ!!』
だが、それは直前に阻まれた。
しかし、この闘技フィールド内に居るのはおっさんとシリウスの二名のみの筈。ならばこの妨害行為は、いったい何者の手による物か?
否、それを防いだのは人にあらず。
それは禍々しい漆黒の、刺々しいデザインの刀身を持つ魔剣。
シリウスの相棒であり、意志を持つ剣【カオスジェノサイダー】であった!
カオスジェノサイダーはシリウスの手を離れ、自らの意志で動き、銃弾を斬り飛ばしてシリウスを護ってみせたのだ。
「チッ……持ち主に似て、しぶとい野郎だ!」
おっさんが魔剣ごとシリウスを蜂の巣にしようと、魔力弾を連射する。
だがカオスジェノサイダーはその形状を巨大な盾へと変えると、銃弾を全て受け止め、またその一部をおっさんに向けて反射した。
「カオスジェノサイダー……!?どうして……」
『諦めるな!!』
シリウスが、自らの手を離れて、自分の意志で持ち主の身を護ろうとするカオスジェノサイダーに、疑問を投げかけようとすると、混乱する彼に向かってカオスジェノサイダーは叫んだ。
『諦めるな、シリウス!汝は何のために戦う!何のためにこの場に立った!』
「なんの……ために……」
『分からんのか、この戯けが!ならば後ろを見ろ!』
シリウスはその言葉にはっとして、重い体を動かして後ろを見やる。
すると、そこには……
「うおおおお!団長ー!負けないでくれー!」
「負けんなー!まだいけるいける!」
「頑張れ団長!立ってくれー!」
必死の表情でシリウスに声援を送る、ギルドメンバー達の姿があった。
「みん……な……」
それだけではない。
「気張れ王子いいい!諦めんなああああ!」
「ここから逆転すれば伝説になれるぞ!行けぇー!」
「シリウスさーん!俺達がついてるぞおおおお!」
かつて彼に助けられた者達が、少しでも彼に力を与えようと声を張り上げていた。
「族長……もう、見ていられません……!」
「目を逸らしてはなりません……!あの方は、今も私達の代わりに戦い、傷付いているのです。ならばその姿を目に焼き付け、勝利を信じるのが我々の役目でしょう」
「族長の仰る通りである!皆、今こそ心を一つにし、シリウス殿を励ます時ぞ!」
不安げな顔で見ていたエルフ達。過激派も穏健派も、共にシリウスを励まそうと叫んでいた。
「シリウスー!てめえ何ヘタレてんだコラァ!やる気が無ぇなら今すぐ俺と代わりやがれ!大舞台でおっさんと戦えるとか超羨ましいぞこの野郎!ちったあ根性見せろや!」
最前列で口汚く罵りながらも、シリウスを叱咤激励する幼馴染の姿。
「………………」
そして無言のまま、いつもと変わらない優しい瞳で、シリウスを見守るカエデと目が合う。
きっと不安であろうに、カエデはシリウスを心配させまいと、普段と変わらぬ穏やかな笑顔で微笑んでみせた。
「そうか……そうだった。答えはいつだって、すぐ近くにあったんだ」
彼らの姿を見て、シリウスは自分が何のために戦っているのか、この世界で何を成したいのか、その答えに気付いた。
おっさんという強敵と戦うプレッシャーに押し潰されて、シリウスは彼らの声援も耳に入っていなかった。焦りや気負いが、その目を曇らせていたのだ。
『そうだ……それでいい……忘れるな、シリウス……』
「カオスジェノサイダー!?」
カオスジェノサイダーが、弱弱しい声で言葉を発する。
シリウスが振り返ると、おっさんの猛攻に晒されたカオスジェノサイダーは酷く傷つき、削られていた。
『我が汝にしてやれる事は、これが最後のようだ……だが、答えを見出した汝ならば、もはや心配は不要……』
「おい、何を言っている!?今すぐ変形を解くんだ!」
『さらばだ、シリウスよ……汝と共に戦った日々、悪くなかった……ぞ』
シリウスがカオスジェノサイダーに手を伸ばし、変形を解除しようとする。
だがその手は届かず。おっさんが放った魔力弾が、カオスジェノサイダーに命中し……
『【カオスジェノサイダー】が破壊されました』
パキィィィン……と、ガラスが割れるような甲高い音と共に、カオスジェノサイダーが砕け散る。黒い破片が、桜吹雪のように幾つも宙に舞った。
「手間ぁかけさせやがって。……悪いがこれも勝負なんでな。恨んでくれていいぜ」
カオスジェノサイダーを破壊したおっさんが、今度こそシリウスにトドメを刺そうとする。
そんなおっさんを見返すシリウスの目は、相棒を殺された怒りに燃えているだろうか?それとも深い悲しみに沈んでいるのだろうか?
……否。否である。シリウスの目はまっすぐにおっさんを見据え、その奥には力強い意志の光が宿っていた。
「……ああ、わかったよ。カオスジェノサイダー。僕は、僕が共に戦ってきた皆を……愛する人達を護りたい。ただ、それだけでよかったんだ」
ぐっと拳に力を込め、飛び散ったカオスジェノサイダーの欠片を見つめるシリウス。
「お前のおかげで気付けたんだ。……だけど、違う。これで最後なんかじゃない」
その欠片たちに、シリウスは手を伸ばした。
「最初に押し付けられた時は、なんて厄介な剣だと思った。動くわ喋るわ、勝手にアイテムを食べるわ……とんでもない疫病神だ。そう思っていたさ。……だけど、ずっと一緒に戦っているうちに、少しずつ愛着がわいて、いつの間にか僕達は、仲間になっていた」
シリウスの体が、眩い光を放つ。
それは【半神化】のエフェクトとはまた異なる物であった。
「お前も!僕が護りたいものの一つなんだ!だから、これで最後になんかさせてやるものか!」
その光は、大いなる意志の力。人の可能性を示す、黄金の光。
「砕け散った混沌の欠片よ、我が手に集え!」
その光に導かれるように、カオスジェノサイダーの欠片たちがシリウスへと集まり、そしてシリウスが纏う【半神化】の光と混ざり合う。
『……随分と早い再会になったようだな』
「……行くぞ、相棒」
『フフフ……良かろう』
砕け、消滅したかと思われていたカオスジェノサイダーが、再び声を発する。それを聞いて、シリウスは笑った。
『神の力と魔の剣!』
「それを束ねるは人の意志!」
『我等が力と魂、一つに交わり!』
「全てを護る盾となる!」
「「カオス・エクステンド!!」」
シリウスとカオスジェノサイダーが、共に叫ぶ。
彼らの姿が、黄金の光に包まれてゆき……やがて光が消えた時、
「【FoW:混沌の救世主】!!」
そこには刺々しいデザインの、漆黒の甲冑に身を包んだ騎士の姿があった。
プロットは死んだ、もういない!
だけど俺の背中に、この胸に!一つになって生き続ける!(白目)
(2015/3/26 誤字修正)




