謎のおっさん、無理を通す
今回かなり無茶苦茶かつ荒唐無稽な内容となっております。
真面目に考えると混乱するぞ!
「おお……こいつぁでけえな……」
「デスネー……」
おっさんとアナスタシアが見上げる先には、月明かりを受けて鈍く光る、金属で出来た巨人の姿があった。
その名はフィールドボス【イーヴィルメタルゴーレム】。今回、おっさん達が標的に選んだボスモンスターである。
「ちと面食らったが、やれるなアナ公」
「オフコース!」
敵の予想外の巨大さに面食らっていた二人であったが、流石というべきか、すぐに気を取り直して、彼らはゴーレムへと挑みかかっていった。
ここで少し、時間を巻き戻そう。
城塞都市ダナンを出発した、謎のおっさんとアナスタシアの二名。彼らは街の西にある山道フィールドを歩いていた。
山道フィールドは文字通りの登山道である。途中までは一本道だが中腹に三叉路があり、そこからルートが分岐している。
一つは、モンスターが多く居る山頂へ至るルートであり、もう一つは、鍛冶師たちに人気の坑道へ至るルートだ。街周辺の採集ポイントよりも良質な鉱石が採れるため、おっさんも愛用している。
そして最後の一つは何もない、岩肌に囲まれた広場へと至るルートであった。このルートについては、ただの何も無い行き止まりとしか認識されていない為、わざわざこちらへ来るプレイヤーはほとんど居ない。
しかしおっさんとアナスタシアは、こちらの道を選んだ。何故か?それは勿論、そこに倒すべき敵が居るからに他ならない。
「おい、やっぱり何も居ねーじゃねえか」
広場へと到達したが、やはりモンスターの一匹も存在しない事を見てとったおっさんが、傍に立つ忍者娘に向かって言う。だが当のアナスタシアは特に気にした風でもなく、
「まあまあ、慌てちゃ駄目ヨ。just a moment please」
そう言って、その場に座り込んだ。
それを見て、おっさんも彼女と向かい合うように腰を下ろした。
「どれくらい待ちゃあいいんだ?」
「just one hourってところデース」
「そうかい。随分と待たなきゃならねえようだな」
「アルカディア内の時間で夜の0時に、この場所にプレイヤーが居る事が出現条件なのデース。誰も来ないような場所だから、ほとんど気付かれなかったみたいデスネー。しかも、プレイヤーがこの広場からいなくなると、そのボスモンスターも消えるらしいデス」
「成る程、道理で気付かれない訳だ。さて……それじゃ、飯でも食いながら待つとするかね」
そう言って、おっさんはアイテムストレージから料理を取り出した。
おっさんが取り出した皿の上に乗っているのは、米を様々な具材と共に炒めた料理であり、メインとなる具は湖の周辺に出没するカニからドロップする、カニの肉であった。
もうお分かりであろう。おっさんが取り出した料理はカニチャーハン。ネギに卵、細かく刻んだ唐辛子。そしてカニの肉。それらを米と共に炒め、塩、胡椒などで味付けをした物だ。
おっさんは木工スキルで作成した、木のスプーンを使って炒飯を食べ始める。
飲み物は烏龍茶を用意してある。こちらはドリンク類の製造・販売をメインに行なっている料理人から購入した物だ。
「あのー……ところでマスター、ワタシの分はどこに?」
「あ?ねえよそんなもん。おめーはパンでも食ってろ」
「!?」
おっさんの無慈悲な言葉に、アナスタシアの顔が驚愕、そして絶望に染まった。
「へっ、冗談だよ」
「心臓に悪いデース!」
その表情を見て満足したように笑ったおっさんは、アイテムストレージからもう一人分の料理を取り出し、アナスタシアへと手渡した。
それを奪うようにして受け取ったアナスタシアは、早速スプーンを使って炒飯を口に運ぶ。
「ンン~、やっぱりマスターのご飯は美味しいデース」
「適当に作った男メシだがな……つーか、おめーは毎日食ってんだろうが」
「おかげですっかりマスターの作るご飯の味に、舌が慣れたデース。オフクロの味というやつデース?」
「いや、そいつぁ少し違うんじゃねぇかな?」
このアナスタシアという少女、現実世界での名をマリア・フォークナーと言い、アメリカ人の父とロシア人の母を持つハーフである。
現在彼女は日本に留学しており、その下宿先になっているのが、何を隠そうおっさんの家だ。
彼女の父親とおっさんは親友同士であり、その縁でアナスタシアは、子供の頃からおっさんによく懐いていた。
おっさんにとってもアナスタシアは、生まれた時から知っている親友の娘であり、家族同然の仲である。よくからかって遊んだりもするが、それも心を許していればこそ、であった。
そんな二人が談笑しながら食事を採る間にも時間は経ち、アルカディア内の時間は、もうすぐ夜の零時になる。
辺りはすっかり暗くなっており、月明かりがうっすらとフィールドを照らしていた。
「そろそろ来るデース」
「おう。準備はいいな?」
二人は戦闘準備を整え、その時を待つ。そしてゲーム内時間が、午前零時を迎えた、その時だった。
「オォォオォォォォオオオオオオオ……」
地面に、広場全体に行き渡るほどの巨大な魔法陣が現れた。それが妖しげな赤黒い光を放つと共に、唸り声をあげながらフィールドボスが、魔法陣の中央に出現した。
そのモンスターは全長およそ5メートル前後の、金属で出来た巨人。フィールドボス、イーヴィルメタルゴーレムだ。
その姿を確認すると共に、二人は音もなく姿を消した。
二人が使用したアビリティは【ハイディング】。【隠密】スキルに属するアビリティの一つである。
姿を消した二人は、更に同じく【隠密】スキルに属するアビリティである【スニーキング】を使用し、足音を消した。
まず最初に動いたのは、おっさんだ。素早くゴーレムの背後に回ったおっさんは、後頭部へと二挺の拳銃でアーツ【チャージショット】をゴーレムの後頭部へと放ち、それは狙い違わずゴーレムに命中した。
奇襲攻撃、ヘッドショット、弱点攻撃などのバトルボーナスが適用されるものの、ダメージは微々たるものだ。
攻撃と同時にハイディングの効果が消え、姿を現したおっさんへとゴーレムが振り返る。
ゴーレムは当然のように、おっさんに反撃しようと腕を振り上げる。だがゴーレムがその太い腕で反撃をする前に、おっさんの反対側――即ち、ゴーレムの背後に回り込んでいたアナスタシアが奇襲をかけた。その手に握られているのは、おっさんが作成した鎖鎌。
アナスタシアは鎖を振り回し、その先端に付いている分銅をゴーレムの背中へと投げつけた。
遠心力が加わって威力を増した分銅が、直前におっさんが撃った場所を殴りつける。敵の防御力は相当に高いようで、やはりダメージは少ない。だが弱点を連続で攻撃されたせいか、ゴーレムが少し怯んだような様子を見せた。
「よし、畳み掛けるぞ。思った以上に硬ぇが、それなら手数で攻めるとしようじゃねえの」
「ラジャー!」
僅かな隙をも見逃さず、おっさんとアナスタシアはゴーレムへと連続で攻撃を仕掛けた。
二人はリスクを極力回避し、まずは遠距離攻撃を中心に行なう。接近戦を挑むのは、敵の動きをしっかりと見極めてからだ。
おっさんは魔導銃、アナスタシアは手裏剣で、それぞ遠距離から安全に、少しずつゴーレムのHPを削っていった。
「タゲ渡すぞ!」
「イエッサー!」
その言葉と共におっさんは攻撃を停止し、バックステップでゴーレムから距離を取る。そして自分に向けられている敵対心を減少させるアビリティ【カーム】を使用した。
その結果、ゴーレムがおっさんに対して抱いていた敵対心が薄れ、必然的に攻撃対象が、背後から攻撃を続けるアナスタシアへと移る。
「ヘーイ!こっちヨー!」
攻撃のターゲットになったアナスタシアが、ゴーレムの攻撃を回避しながら裏剣で牽制する。
手裏剣による攻撃はほとんどダメージが通らないが、ゴーレムは煩わしそうに体を揺すりながら、アナスタシアへと殴りかかった。
「背中がガラ空きだぜ!」
そこへ、おっさんが背後からゴーレムを奇襲。格闘の奥義アーツ【無双正拳突き】を、隙だらけの背中へと叩き込んだ。
ゴーレムが僅かに体勢を崩し、その隙にアナスタシアがおっさんの後ろに回ると同時にアビリティ【騙し討ち】を発動させた。
【騙し討ち】は味方の背後に隠れながら攻撃を行なうことで、その攻撃を自分の前にいる仲間の攻撃であると相手に誤認させる効果を持つアビリティだ。
その効果により、本来自分に向けられるアビリティを他の仲間に移し替える事が出来るのだ。盾役に敵対心を集めさせ、アタッカーが安全に攻撃する為にパーティー戦闘でよく使われる。
そして、アナスタシアはその状態でゴーレムをアーツで攻撃する。するとゴーレムのターゲットが、再びおっさんへと移った。
二人はそのようにして敵の攻撃対象を次々と変えさせながら、素早い動きでゴーレムを翻弄していった。
そうして、少しずつゴーレムのHPを削っていった二人であったが……
「うーん……ちょーっとだけ不味いかね、こいつぁ」
珍しく、おっさんが少し困った表情を浮かべた。
その理由はおっさんの武器にある。さんざん銃弾をバラ撒いたおかげで弾丸が切れそうなのだ。まだ少し余裕があるとはいえ、このままのペースだとゴーレムを倒す前に、確実に弾が尽きる。
アーツやアビリティも遠慮無く使っているせいで、MP回復ポーションも残り僅かという状態だった。
戦いが始まってから、かれこれ一時間以上。おっさんはまだまだ元気で、敵の攻撃を一発も食らっていない。だが相棒のアナスタシアは長時間の連続戦闘による疲労からか、動きにキレが無くなってきている。彼女のほうは辛うじて直撃・一撃死は避けてはいるものの、何度かゴーレムの攻撃を受けたせいでHPポーションの消費も激しいだろう。
「妙だな……いくら何でも硬すぎねぇか、こいつ?」
おっさんが【アナライズ】を再度使用し、ゴーレムのモンスターデータを取得すると、ゴーレムのHPはまだ3/4程も残っている。おっさんとアナスタシア、このゲームでトップクラスの戦闘力を持つ二人が、散々攻撃を加えてもだ。
何かがおかしい。おっさんとアナスタシアは、ほぼ同時にそう考えた。
この不自然なまでに高い耐久力。街からそう離れていないエリアのフィールドボスの分際で、ここまで硬いのは妙だ。森で出会った熊……【ジャイアント・キングベアー】とは比べ物にならない程である。
この耐久力は明らかにおかしかった。
ボスモンスターである以上、もっと大人数で挑む事が前提となっているのだろうが、それを加えて考えても、やはり硬すぎる。
また、おっさんは全ての攻撃を完全に回避しているため気にしてはいないが、ゴーレムは防御力だけではなく、その攻撃力も異常に高かった。
いずれにせよ、スタート地点からそう離れていないフィールドのボスとは思えない強さである。
強烈な違和感。その理由を考え、アナスタシアは一つの答えに辿り着いた。
すなわち、
「このボスは、正攻法では倒せない」
と、いう事である。
ならば、どう対処するべきか。
恐らく、何か特殊なギミックがあって、その条件を満たす事で倒せる可能性が出てくるのではないだろうか?
結論から言えば、その考えは正解であった。
仕掛けの正体は、ゴーレムが現れた時に浮かび上がった魔法陣。広場全体に広がっているそれには、実はゴーレムを召喚すると共に、強化する効果もあったのである。
その魔法陣の中心を見てみれば、何とそこには文字らしき物が書いてあるではないか。
そこに書いてある文字は「אמת」。
それはヘブライ語で真理を意味する言葉であり、伝承によるとゴーレムは、その文字を書いた羊皮紙を額に貼る事で完成すると言われている。
二人が今までそれに気付かなかった事を責めるのは少々酷であろう。
魔法陣が現れたかと思えば、その直後には巨大な、威圧感を放つフィールドボスが現れるのだ。ゆっくりと観察をしている暇などありはしない。
防御力に乏しい二人は、敵の攻撃を一撃でも貰ったら死ぬ可能性もある。そのせいでうかつに目を離す事もできなかった。
プレイヤーの意識の死角を突いた、なんとも意地の悪い仕様であった。
とはいえ、ゴーレムの弱点などの情報は街の図書館で調べる事が出来たりと、一応ヒントを入手する手段も用意されてはいたのだが。
この「אמת」の最初の一文字に触れ、消す事で「מת(ヘブライ語で『死んだ』)」となり、ゴーレムが大幅弱体化する。
盾役がゴーレムの攻撃を抑えている間に、他のメンバーが文字を消す。それが、このゴーレムの攻略法であった。
アナスタシアの頭脳が高速で回転し、その答えを導き出した。
直後、彼女は魔法陣の文字に触れようと走り出そうとする……が、その動きが突然止まった。
「マスター!?何してるのネー!?」
彼女の視線の先では、おっさんが武器を仕舞って素手の状態になり、そしてその場に棒立ちになっていた。
そんな無防備状態のおっさんへと、ゴーレムの拳が唸りを上げて襲い掛かる。おっさんは寸前で、腕をその拳の前に突き出した。しかし当然ながら、その程度でゴーレムの拳を防げるはずも無かった。おっさんは派手に吹き飛び、地面に仰向けに倒れる。そしてそのHPが、一撃で九割ほども減少した。
これは一体どういう事であろうか。何故、おっさんはわざわざ相手の攻撃を受けたのか?まさかおっさんは、勝つ事を諦めてしまったのか!?
「フー……成る程、このタイミングか……」
仰向けに倒れたまま、おっさんが呟く。
するとその瞬間、ゴーレムが突然地面に膝を付いたではないか。
「こいつを倒す方法を思いついたぜ。後はおっさんに任せておきな」
おっさんが立ち上がる。
その顔には、いつものふてぶてしい自身に溢れた笑みが浮かんでいる。その表情は、とても勝利を諦めた者に出せる物ではなかった。
そう、おっさんは決して諦めた訳ではなかった。
おっさんとて人間である。時には力及ばず敗北する事もあるかもしれない。だがおっさんは、どんな絶望的な状況下でも決して勝利を諦めはしないのだ。
おっさんは素手のまま、無造作にゴーレムへと歩み寄った。
「ちょっとマスター!!どうしちゃったノー!?」
「いいから黙って見てな、アナ公」
一見、無防備な状態のまま、おっさんがニヤリと笑う。
「言っただろうが、こいつを倒す方法を思いついたってな。俺を信じろ」
そう言われてしまっては、アナスタシアには返す言葉が無かった。
恐らくは自分には到底思いつきそうもない、とんでもない方法でゴーレムを倒して見せるのだろう。そんな確信にも似た予感を感じ、アナスタシアは動かない事を決めた。
おっさんは戦いながら、ずっと目の前のゴーレムを倒す方法を考えていた
まず何が問題かと言えば、自分の攻撃では威力が足りずにゴーレムを倒せないという事である。。
その為、必要な攻撃力をどこかから調達する必要があると考えた。
それも、前の前の敵に有効な【衝撃】属性の、高威力の攻撃が必要だ。おっさんはそう考えていた。
ゴーレムの拳が再び、おっさんの前の前に迫る。
「目の前にあるじゃねえか……とびっきりの、デカくて固くて強力な奴がよぉッ!!」
その瞬間、おっさんが目の前に迫る拳に、横から手を添えた。するとゴーレムの巨体が、おっさんが触れた箇所を支店に一回転する。
ゴーレムの巨体が宙に舞い、そして派手に地面に叩きつけられた。
「What happend!?」
その非現実的な光景に、アナスタシアが叫びをあげた。
おっさんは投げ飛ばしたゴーレムから距離を取ると、再び一見無防備な構えを取り、呼吸を整える。その時であった。
『【カウンター】スキルの習得条件を満たしました』
「ほう……?」
おっさんの視界の片隅にシステムメッセージが流れる。それを見るなり、おっさんは素早くウィンドウを操作し、スキル枠を拡張した。そして新たに条件を満たしたスキル【カウンター】を、その場で習得した。
「オオオオオオ……ヴオオオオオオオ!!」
ゴーレムが呻き声と共に立ち上がり、再びおっさんへと突撃する。
その拳が黒いもやのような物を纏い、妖しく光る。その正体はボスモンスター専用のアーツによる物で、高威力の格闘攻撃が繰り出される。
だがおっさんは、その振り下ろされる拳に向かって、臆する事無く自ら飛び込んでいった。
「踏み込みが甘えッ!」
おっさんが、両手の掌をゴーレムの拳に押し当てる。
するとゴーレムはまるで大型トラックに撥ねられた人間じみた勢いで、後ろに向かって大きく弾き飛ばされた。
動きは遅く、大振りのテレフォンパンチだが絶大な威力を誇るイーヴィルメタルゴーレムの専用アーツ。その威力は、生半可な盾役ならば一撃で沈むレベルである。
だが、それ攻撃はおっさんのカウンターにより、倍加されて自身に跳ね返った。
それによってゴーレムは大きく吹き飛ばされ、岩壁に派手に叩き付けられ……そして、その巨体がガラガラと音を立てて崩れていった。
おっさんの勝利である。
そして、その勝利を称えるメッセージが、サーバー全体に流れ――
『 ( ゜д゜)<……
――コホン、失礼いたしました。
フィールドボス、イーヴィルメタルゴーレムが討伐されました。
討伐貢献度1位、【謎のおっさん】さん
討伐貢献度2位、【アナスタシア】さん
以上の方々には討伐報酬及び初回撃破報酬が贈られます。
なお、討伐貢献度3位以下は該当者なしになります』
――何だかシステムメッセージがおかしかった気がするが、勝利を称えるメッセージが流れた。
そして二人……特におっさんは、大量の経験値とゴールドを入手した。そして大量のドロップアイテムもだ。
岩石族モンスターだけあって、その大部分は鉱石系アイテムである。金鉱石やミスリル鉱石のような稀少な鉱石や、質の良い魔石。そして、おっさんの目当てであった魔鉄鉱もあった。それを見て、おっさんがほくそ笑む。
「マスター!さっきのは一体何なのヨー!?」
そんなおっさんの下に、アナスタシアが駆け寄る。そして先程ゴーレム相手に見せた物が一体何なのかと問い詰めた。
混乱している彼女に対して、おっさんはニヤリと笑い、答えを言う。
「あれは合気だ」
「What!?」
「まあ、殆ど我流だけどな。久しぶりにやったし、敵の動きも単調だったから上手く決まったようなもんだ。まだまだ実戦で使えるレベルじゃねーなぁ、ハッハッハ」
「ちょっとマスター!?説明になってないヨ!合気って何なのヨー!」
ギャーギャーとわめくアナスタシアを横目に、おっさんは先程手に入れたスキルの事を思い返していた。
【カウンター】。スキル詳細を見てみれば、その習得条件は、このスキルを習得していない状態……すなわちスキルの補助が無い状態で、完璧なタイミングでのカウンター攻撃を行なう事であった。それも偶然による物ではなく、プレイヤー自身の意志で狙って、だ。
そのような真似が出来るプレイヤーは、正式サービスが開始されたばかりの現状では殆ど居ないだろう。
すなわち、この【カウンター】スキルは、現状ではおっさん以外に知る者が居ない激レアスキルという事になる。
(なら、こいつは対人戦の切り札と成りえるか)
思わぬ形で手に入った新たな力に、満足な笑みを浮かべるおっさんだった。
Q.マップに特殊なギミックがあって、通常の方法では倒せない敵が出ました。どうしますか。
A.合気を使う
(2015/2/27 大幅加筆修正)
ビール飲みながら「よし、より一層B級チックで馬鹿馬鹿しい話にしよう」とか考えてたら何故かこうなってしまった。
多分おっさんは今後もこんな感じで意味不明に無双します。
あと、さりげなく他の廃人たちの情報も出てきました。
なお言うまでもなく作中でおっさんが使っていた謎の合気らしき物はフィクションであり、実際のそれとは一切関係ありません。
(2013/12/14 誤字修正)