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HEAVY TRIGGGER  作者: salfare
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SHOT4: SETSULA

ついに待望の初デュエル。

トオルの実力は?

SHOT4: SETSULA


 いくらなんでも運が悪すぎる、とトオルはため息をついた。

つい数十分ほど前に全生徒を圧倒するほどの殺気を放っていた鷹尾リヒト。その少年こそランダムに決められたトオルのデュエルの対戦者だった。広い空間の中央には二人だけが向かい合って立ち、その間にはMBQでできた半透明な緑色の壁があった。他の全員は壁際に待機し、同じような壁で囲まれていた。

「時間無制限!ギブアップノックダウン性!デュエルスタート!」

火雲のかけ声と同時に緑色の壁が吹き飛ぶ。しかし、両者は動かない。完全に不動のままお互いをにらみ合う。沈黙を破ったのはリヒトだった。

「サモン、サーペント」

「SUMON: SERPENT」

音声入力に反応したリヒトの紫のサモナーが光をまき散らす。その光から生成されたのは手袋のような物だった。五本の指にわかれ、金属のような光沢を持つ真っ白なそれはリヒトの左手に装備されており、人差し指と中指だけに極端に長い30cmほどの爪が着いていた。爪はガラスのように無色透明で中心にワイヤーのような物が通っている。リヒトはまっすぐにトオルを睨みつける。

「サモン、雪羅(せつら)!」

「SUMON: SETSULA」

対して、トオルが召喚したのは一本の刀だった。青っぽい鞘に収まった状態で、紺と白の柄と黒い鍔だけが見えている。

「シンプルだな」

リヒトは静かに言った。

「悪かったな」

トオルはにやりと笑う。鞘の部分を持って左腰の脇にかまえ、柄にそっと右手を添えてから右足を前に出して身構える。

「いいや、むしろ助かるぜ」

さぁ、とリヒトは身を屈め、


「ゲーム開始だ!」


膝のバネを最大限に使って突進して来た。サーペントが装備された左手は大きく開かれ、獲物を狙う蛇のように襲いかかる。

(あのNAWMは初めて見る・・・俺が知らないとなると多分改造型(カスタムモデル)。下手に手は出さない方が良い・・・)

「なら!」

トオルは顔面を狙って襲い来るリヒトの左手に対し、体全体を振って斜め下によける。そのまま左足を踏ん張り、左手の雪羅の柄をリヒトの腹に突き立てた。しかし、

(なっ、いつのまに!?)

リヒトは完全に隙をついたはずのカウンターを空いている右腕の前腕で防いでいた。ミシミシという音が聞こえるが、おそらく折れていない。相当鍛えているのだろう。リヒトはにやりと笑うと、突っ込んで来た不安定な体勢のまま体をひねり、左足でトオルの右脇腹に蹴りを放つ。トオルはぎりぎりで雪羅に触れていた右手を引き、肘でこれを受ける。しかし衝撃は押さえきれず、そのまま左に盛大に転がった。リヒトも極限まで不安定な状態がついに崩れて派手に尻餅をつく。

「いってぇなー」

リヒトはゆらっと立ち上がりながら言った。その顔には笑顔があった。左手をゆっくりと持ち上げ、サーペントの爪の一本を軽く舐める。

「次は、当てるぜ」

くそ、とトオルは思った。カウンターを更に返されたことに対する精神的打撃と脇腹の痛みで、早くも集中力が途切れかけていた。刀を地面についてふらふらと立ち上がる。既に息は荒れている。疲れたのではなく、腹を圧迫されたことで肺から空気が抜けているのだ。

(受けに回っちゃ結局喰らうだけだ。今度はこっちから!)

 トオルは地面を蹴って走り出す。雪羅は既に左腰に構えられている。

「ひゃははっ!来い来い!」

リヒトは笑いながら足を無造作に開く。手はぶらりと垂らされている。二人の距離が一瞬でゼロに縮まる。

「はぁぁあああ!!」

トオルは右足を深く踏み込む。スニーカーから「キキッ!」っという音が聞こえたが、気にしない。慣性に影響されて雪羅の刀身が姿を現す。金属色にうっすらと空色がまざった細い刀身はきりきりと音を立てながら自動的に鞘から抜けて行く。トオルはその勢いを殺さず、雪羅を右手でつかんで水平に振るう。リヒトは体を大きく後ろに反ってこれを回避する。リヒトの鼻先数センチで風切り音が響く。すかさずトオルは不安定になったリヒトの足に向かって左足で蹴りを放つ。リヒトは右手を地面に着き、そのまま足を振り上げてこれを避けた。そのままの勢いでトオルの顎を狙う。

(っ、こいつ!)

トオルはとっさに首を横に振った。なんとか顎は外させたものの耳にバク転蹴りが直撃する。後ろに吹き飛ばされながらトオルはとっさに雪羅の鞘を投げた。

(せめて、こいつは当てる!)

リヒトは高速で迫る雪羅の鞘に対して、体をひねって左手を出す。サーペントの爪に鞘が激突する。「カキンッ!」という乾いた音がし、


直後、サーペントの爪が赤く発光した爆発した。


「ドンッ!」という爆音が響き、煙が視界を奪う。鞘が地面を転がる乾いた音は遅れて聞こえた。混乱するトオルの前でゆっくりと爆煙が晴れる。リヒトは、笑っていた。

「これが、サーペントの本質だ」


次回、リヒト咆哮

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