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HEAVY TRIGGGER  作者: salfare
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SHOT1: KIRIGAOKA HIGH SCHOOL

本編スタートです

SHOT1: KIRIGAOKA HIGH SCHOOL


 電車の中で人の海に押しつぶされそうになりながら、島崎トオルは深く後悔していた。彼の手には小型のスマートフォンのような赤い端末がある。『MBQ Materialized Summoning System』、略してサモナーと呼ばれる機械である。実際、携帯のような役割もあるが、その最も重要な役目は名前通り、個人所有物の量子化と保存、再生成である。ようするに、MBQで出来ている私物はすべて分解してこの中に収納し、いつでも取り出せる、という訳だ。彼の公開の理由はその画面を見れば一目瞭然である。そこには『超軽量・最新式高速モーター搭載スケートボード』という文字が見える。彼は先日これをネットで購入したのだが、

「最寄りの駅で電車がとまってた時点で、俺はなんでこれを使わなかったんだ・・・」

独り言を言って、トオルは深々とため息をついた。


 今日は闢歴598年八月一日。あの忌まわしい事件から六年が経ち、NAWMは再び人々の手に渡り、更なる進歩を遂げつつあった。当時は初歩的な兵器だけだった物が今では特別な能力を追加した第二世代型が投入されていたのだ。いまでは徐々に第三世代型も研究が進んでいる。

 さて、八月一日と言えば新年度のはじまりである。日本では既に欧米の教育方式を適用しているため一年の節目は8月なのだ。しかし十五歳のトオルが向かっているのは普通の高校ではない。NAWMを用いた教育を重点的に行う強化学校である。名前は霧ヶ丘高等学校。今年から開校する新米学校だそうだが、トオルの中には疑問があった。

「俺、入試も受けずにこんなところ行って良いのかなぁ?」

満員電車を降りた黒髪短髪に紺、赤、白の国旗みたいなパーカーを着た少年は新品のスケートボードに乗って高層ビルの建ち並ぶ大都会を駆け抜ける。モーター付きなのでかなり早い。トオルの手のサモナーには霧ヶ丘高の入学許可情報が映し出されている。そこには名前とクラス、出席番号と学校の見取り図があるのだが、どう見ても普通の学校の見取り図ではない。圧倒的に広いのだ。そしてトオルは受験をしていない。急に一人暮らしの彼のもとに手紙が届き、学費は免除だからということだったので行くことにしただけである。どんな学校だかは詳しく知らないが、高一になりたての一人暮らし男子にはとにかく金がないのだ。高卒ぐらいはしておきたいので学費がただなのは大変ありがたい。


 それにしても、こんな企業ビルみたいな広さの学校で学費ゼロだったらどうやって学校保ってんだろう?などと思っていると大通りの突き当たりに大きなビルが見えて来た。本当に他のオフィスビルと違いがわからないサイズだ。玄関の自動ドアの上に大きく「霧ヶ丘高等学校」と書いてあるのを手で隠せばもはや差は感じられない。高さは窓の数を見る限り五階建てのようだが一階分の高さが通常のビルの倍はある。高さとしては十階分だ。これが地下にも十階分あるというので驚く。制服なしで学費ゼロとは誰も想像できないだろう。トオルは正面玄関の自動ドアまで来ると新品のスケボーを急いでサモナーに戻した。

「学生証ヲオ出シ下サイ」

 自動ドアの前に立つとそんな機械的な声がした。トオルはサモナーを操作して先ほどの入学許可賞を表示する。

「ナンダ、新入リカヨ。知ラネー訳ダ。入レ入レ」

「・・・なんか調子狂うな・・・」


 建物の中に入ったトオルはそこで驚いて立ち止まった。この建物の一階はそれこそオフィスビルさながらの全面真っ白なタイルで出来たロビーなのだが、そこに自分と同じくらいの年の青少年がいたのだが、たった十七人。トオル自身かなり遅刻して来たのだから、この先さらに誰か来るとも思えない。

「みんな新入生、にしちゃ人少ねーな」

「ここは人員を最大まで厳選しているのですー。だから人は少ないのですよー」

後ろから声をかけられて驚いて後ろを振り返る。そこに絵に描いたようなロリロリ人間がいた。性別は女性で黒髪黒目。しかし身長が120cmくらいしか無い。生徒名簿らしきボードを持っていることからこの学校の教員だと推測できるが、絶望的なほどランドセル+リコーダー仕様だ。こんなキャラを本で読んだ気もするがトオルは触れない。

「本当にいたのか、ロリッ子小学生高校教師・・・」

「はひ?というか君、遅刻ちゃんじゃありませんか〜」

「あっ!そうでした!申し訳ありませんでした、先生!」

120cmまで頭を下げるのはかなりつらい。

「お〜お〜。先生の扱い方をちゃんとわかってますね。よろし〜。今日は許します」

トオルはとりあえず方をなで下ろす。

「では全員集まりましたね。早速最初の授業に行きましょう!自己紹介をかねたデュエルです」

「はっ、デュエル?」

驚いた声を出したトオルにすぐそばで壁に寄りかかっていた金髪の少年が声をかけた。

「殺傷能力を制限したNAWMによる人対人の戦闘です。ようするに戦えばいいんですよ、NAWMを使って」

身長はトオルより若干低め、ハーフらしい顔立ちでオレンジ色のポロシャツを着ている。

「あぁ、なにその、けんか的な?」

「んー、まぁそんな感じかな」

トオルのよくわからない表現にも丁寧に付いて行こうとしてくれる優しさにトオルはあまり気づいていない。

「なるほどなるほど〜サンキューな。おまえ、名前は?」

「ぼっ、僕?僕はアラン。アラン・エニスだよ」

「アランか。俺は島崎トオル。よろしくな」

「よっ、よろしく・・・」

なんとなく頬が赤らんでいるアランにトオルが首を傾げていると、先ほどのロリッ子教師が「ぱんっぱんっ」と手を叩いてみんなの注意を引く。

「はいはーい。じゃあこれから組手の会場に移動しますよ〜」



次回、キーキャラ更に登場!

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