SHOT16: REPORT
SHOT16: REPORT
『で、彼らはどうだった?』
電話の相手は火雲仁美だ。トオルとハルカに今夜は泊まって行くようにと言い、別室に移したところで春風カリンは火雲に現状報告をすることにした。『レムナント』の襲撃の件についての報告だ。今ちょうど一通りの報告が終わったところだ。時刻は既に2時を回っている。
「そうですね〜。面白い子じゃないですか?」
カリンは今は自分のものとなっている喫茶店でBlue Catsでコーヒー片手に歌うように言った。
「信念もしっかりしてるし、なにより『守りたいもの』がはっきりしてる。ちょっと回りに流されやすいですけどね〜」
カリンはいったん言葉を区切ると、
「やっぱり、あなたの弟さんですね。島崎先生」
火雲はその言葉は黙って聞いていたが、
『トオルには、』
「あぁ!わかってますわかってますよ!言いません言いません。こう見えて以外と秘密は守るんですよ?」
『・・・貴様のその『以外と』が不安なんだ』
「ハッハッハ〜」
カリンはこどものように爆笑する。声はしなかったが、電話の向こうではおそらく火雲がため息をついているだろう。
しばらく笑うと、カリンは笑みを変えた。さっきまでのこどものような笑顔から、まるで獲物を捕らえた狩人のような鋭い眼光を持った笑みへと。
「ところで、火雲先生」
声には楽しむような抑揚が乗っていたが、火雲もカリンの変化に気づいたようだった。
『何をしろと?』
「おっ、いつもと反応が違うじゃないですか〜」
『貴様がその声になった時はなにか無茶な提案をするときだ』
「ほぉ〜」
カリンは関心関心、と言った具合に頷く。
『で、なんなんだ?』
「あぁ、そうそう」
カリンはいっそう笑みを深くする。その緑色の目が確かな輝きを放つ。
「『神楽』、もう一個準備できますか?」
『・・・悪いが、お前には適用しないぞ』
「私用じゃありませんよ」
カリンは一口コーヒーをすすると、
「ハルカちゃん用、です♪」
うっとりとしながら、ハルカは微かに目を開けた。わかるのは自分が横になっていることだけだ。自分が何をしていたのかを思い出す。トオルと駅に向かう途中で変な男の人に襲われて、戦いになって、そしてトオルが、
「トオルお兄ぃ、」
ハルカはばっ!、と飛び起きようとして、自分の上になにかが乗っていてそれが出来ないことがわかった。そのなにかが自分後方から来ていることだけは辛うじてわかった。
「ちゃん?」
中断した台詞の続きを言いながら、寝返りをうつように背後をみる。そこで、ハルカは顔を真っ赤にして固まった。自分の顔の目の前、鼻先数センチのところにトオルの顔があった。
「・・・・・・ッ!!?」
無言で軽いパニックに陥るハルカ。だが、ゆっくりとした鼻息を聞いて、ふっ、と肩の力を抜いた。
(よかった。お兄ちゃん、死んじゃったかと思った)
そう心の中で呟いた直後、
「・・・ハルカ・・・」
トオルの口から、声にならないような小さな声が漏れた。
「なぁに?」
寝言だとわかっていながら、ハルカはささやくように返事をした。トオルはまるでそれを聞いたように小さく微笑むと、
「・・・お前は絶対、兄ちゃんが守ってやるからな・・・」
ハルカは一瞬目を丸くしたが、すぐに目をつぶった。投げ出していた手足を体の方へ引き寄せ、トオルに抱かれるように丸くなる。
「ハルカも、トオルお兄ちゃんを守るね・・・」
真っ赤になったその顔から、一粒の大きな涙が流れ落ちた。
初めてのラノベっぽい描写入れてみました。
あんまり上手くないな・・・^^;