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HEAVY TRIGGGER  作者: salfare
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SHOT15: NATURAL


SHOT15: NATURAL


「カリン先輩、さっき俺を襲ったのって、」

「あぁ、あの眼鏡か」

 春風カリンは指を口に当てて考えるような仕草をする。

「武装や服装、簡単に引いたとこからみて、多分『レムナント』の下っ端ね」

「『レムナント』・・・残党?」

「説明受けてないの?」

カリンは一瞬目を丸くしたが、

「そっか、新入生だもんね。『レムナント』ってのはあたし達の一番の標的、『SCHWARZER REGEN(シュヴァルツェア・レーゲン)』の残党集団よ」

「『レーゲン』の残党?」

「そう。8年前、『823事件』の後に日本政府が特殊部隊を派遣してれ『SCHWARZER REGEN』(シュヴァルツェア・レーゲン)の掃討戦に打って出た。あのときは全滅させたって発表されたけど、」

「実は何人か取り逃がしてた・・・」

そう、とカリンは頷いた。

「散り散りになって姿を隠していた残党達が集まりだしたのはちょうど5年ほど前よ。ちなみに霧ヶ丘が今年開校ってのは大嘘よ。霧ヶ丘高等学校計画もそのとき立ち上がった。『レーゲン』掃討を行った特殊部隊、『Haze Hill』を復活させるためにね。火雲先生みたいな教員は大体みんな『Haze Hill』の正規構成員だよ」

「『Haze Hill』、霧の丘。なるほど」

「霧ヶ丘高等学校の教育はかなり実践的なのよ。実際の戦闘による経験値獲得はもちろん、座学もしっかりやるから、特殊部隊隊員として全く抜け目のない若い戦力が続々と生まれた」

でもね、とカリンは一息置き、

「イレギュラーもいたのよ」

「イレギュラー?」

「第二期生、一昨年卒業した学生の中に二人、『レムナント』の味方をする連中が現れたのよ」

トオルは息をのんだ。霧ヶ丘に誘われるのはテロに少なからず恨みがあり、テロを撲滅したい者達のはずだ。なのに、

「なんで・・・?」

「彼らは、『レーゲン』の考えに共感したのよ。「人類は引き金の重さを忘れている」ってね」

「引き金の、重さ?」

「NAWMは、設定次第で武器の威力を下げられる。だから人間同士の戦闘もお遊びに出来る」

カリンは真剣な顔になり、何かを思い出すような面持ちで話し続けた。

「「人に銃口を向けて引き金を引くことはそんなに安いことではない。引き金一つで人が一人死ぬ。それこそが現実。そうでなければならない」それが『レーゲン』の思想なの。だから彼らは『本物(ナチュラル)』の武器しか使わないわ」

本物(ナチュラル)』とはMBQを含まない、いわゆる純粋なもので出来たもののことだ。MBQが完全に流通しきった今の世の中ではきわめて珍しい。

「あなたは?」

「へっ?」

「カリンさんは、共感しなかったんですか?」

「君は?」

「僕は、何となく共感できます」

質問の投げかけ合いの結果先に答えたのはトオルだった。カリンはトオルの答えに深く頷くと言った。

「私も同じだよ。その考えには賛成だ。だから、」

彼女はそばに置いていた狙撃銃(スナイパーライフル)に手を伸ばした。

「こいつは、NAWMじゃないんだよ」

「えっ?」

カリンはのばした指でそっと銃の側面をなでた。その顔には、何かを懐かしむような薄い笑顔があった。

「こいつは『本物』(ナチュラル)なんだ。本物の金属で出来てて、本物の火薬で本物の弾を飛ばす。一発で人を殺せる代物だよ」

カリンは目をつぶった。

「正直、怖いこともある。もし、人が死んじゃったらどうしよう。もし、関係ない人を巻き込んじゃったらどうしようって。おもわず銃を下ろしたくなるときもある。引き金を引く指が震えるときもある。でもさ、」

カリンはつぶった目を開くと、トオルの方を向いた。少し困ったような、悩みでも相談するような表情で、言った。


「それが、銃を持つものの責任って奴だと、思うんだよね」


トオルは返事を出来なかった。その言葉は大きく、重くトオルにのしかかった。彼も、対人戦闘で当たり前のように刀を振るう。現に今日も、鷹尾リヒトを斬った。だが、トオルが気兼ねなく刀を振るえるのは、その殺傷能力が非殺傷用までおさえられているからだ。どうせ誰も死なない。どうせ誰も傷つかない。そんな甘えにも似た感情が、トオルに刀を握ることを許しているのだ。だが、カリンにそんな甘えは無い。彼女は一瞬のミスが関係のない人間や、あるいは守りたいものをも消してしまうような重圧の中で、その震えに耐えながら引き金を引いているのだ。彼女は強い。そこに、『覚悟』という強さを、トオルは確かに感じた。 

「で〜も!」

カリンは勢いよく座っていた机から飛び降りた。短い黒髪がふわりと揺れる。

「その責任に関係のない人を巻き込むのは邪道ってもんよ!そうでしょう、後輩君?」

「はい!」

トオルは返事に迷わなかった。そうだ。その重圧を他の人間に押し付けては行けないのだ。背負うべき人間がその責任を背負い、それを持たない人間を守らなければならない。トオルは決意も新たに自分の膝の上で眠るハルカに視線を下ろした。その姿にカリンはうっすらと笑った。


どんどん設定が複雑になって行きますが、ご了承ください^^;

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