SHOT9: RECONCILIATION
SHOT9: RECONCILIATION
目を覚ますと見知らぬ白い天井が見えた。眩しい蛍光灯の光に島崎トオルは開いたばかりの目を再び細めた。
「あっ!ト、トオル君」
横から声をかけられてトオルは首だけでそちらを向いた。窓から漏れる昼の光の逆光でよく見えないが、そこにはたしかにオレンジ色のポロシャツを着た金髪の少年が座っていた。アラン・エニス。今日、一緒に霧ヶ丘高校に入学したばかりの新入生仲間だ。
「ア、アラン・・・俺、」
「あの後すぐに寝ちゃったんだよ。すごく激しい戦いだったからね」
辺りを見回してみるとそこは真っ白な病室だった。医務室、と書いてあるが少し広めだ。自分の体を見てみると、右腕は包帯でぐるぐる巻きにされ、顔や足の各所に絆創膏の感覚があった。おそらく鷹尾リヒトのサーペントの爆破で負った火傷だろう。
それからトオルはやっと思い出した。彼が鷹尾リヒトとデュエルを行っていたこと。完全に向こうのペースだったこと。火雲に『神楽』を渡されたこと。
「・・・俺、勝った、んだっけ?」
「お、覚えてないの?」
「なんか、必死だったのかな」
「すごかったよ!特にあのブースターを出してから!もう速くて見えないくらいだったよ!」
頬を紅潮させて言った彼の言葉を聞いてトオルははっとした。
「・・・そういえば、あの『神楽』って・・・」
そのとき、真っ白な医務室のドアが勢いよく開け放たれた。そこには息を切らした。鷹尾リヒトが立っていた。
頭に包帯を巻いたリヒトはぶち開けたスライドドアに手をついたまま大声で怒鳴った。
「島崎トオルぅ!!」
「は、はぁい!」
思わず返事をしてしまうトオル。リヒトはゆっくりと、しかし力強い足取りでトオルに歩み寄って来た。あまりにもシリアスな顔で近づいてくるリヒトに対してトオルは必死に愛想笑いをするが、誰がどう見ても引きつっていた。リヒトはトオルのベッドに全体重とともに両手を叩き付ける。「ドンッ!」という鈍い音がする。それからリヒトはゆっくりと右腕をあげると、
トオルに握手を求めて来た。
「「はい?」」
拍子抜けしたような声を出すトオルとアラン。リヒトはゆっくりと顔を上げて言った。
「島崎トオル。お前のおかげで目が覚めたぜ」
その顔には笑顔さえあった。
「たしかに妹は、リトは復讐なんか望んじゃいねぇ。あいつがホントに望んでんのは、いじめはもちろん、争いなんかなんもねぇ平和な世の中ってやつだ。もちろんテロなんかもな。ほんとにリトのためになるなら、俺は霧ヶ丘でテロと戦うことにする。おめぇと一緒にな」
「リヒト・・・」
唖然としていたトオルだったが、
「じゃあ、これからは俺とアランとリヒト、三人で頑張って行くか!」
次の瞬間「ニカッ!」と効果音が聞こえるほどの満面の笑みを見せた。
「へっ、そうすっか!」
「が、頑張ろうね」
「がんっっばるぞー!」
昨日の敵は今日の友。実のところ、これこそ『高校』のあるべき姿かも知れない。
「「「おー!!」」」
短かったですが、入学式編完結!
次回からこれまた短くなりそうですがハルカ・出会い編開始!