得体のしれないもの
心がみぞおちの辺りにあったとして
もぞもぞ重くのし掛かるのは
このべったりこびりついた感触は
ずっとずっと昔に味わった懐かしいもの?
またきたのね
〈来るんじゃねっ〉
重すぎる
息切れ半端ない
〈はぁはぁ〉
ポップコーン無造作に胃袋に投げたけど
弾けなかった
珈琲流し続けたけど
逆流しそう
ヤニ激しく吸いこみ中だけど
煙りじゃあ話しにならない
コーンとカフェインとニコチンでどんどん膨らみ始めた
〈おいおい〉
得体のしれないものは
ここに暫く永住するらしい
友だち欲しいの?
わたしも欲しいけどさっ
あんたはいらない
得体が知りたい
あんた誰?
誰?
〈まっ……わたしも得体のしれないものだけどね〉
もしかしてわたし乗っとる?
いいよ別に
こんなんで良かったらあげる
と得体のしれないものに話しかけたが
答えるはずもなく
あの人の甘い歌声にこの得体のしれないものを溶かして貰おうと
イヤフォンを耳に捻り込む
〈最初からこうすれば良かったとか……〉