第五話 ~謁見。そして覚醒する勇者様~
現在自分は、謁見の間でグラーバの国王に謁見していた。
「……ふむ…勇者が二人か…まあよい。……勇者達よ、まず、謝っておかなければならないことがある。まだ元の世界に帰す手段が見つかってないにもかかわらず呼び出してしまったことを深く詫びよう。」
へぇ…てっきり王族ってプライドの塊で出来てんだと思ってたな…チッ…やりづらい相手だ…
自分が心の中で舌打ちしている間にも、国王の話は続く。
「だが、勇者殿に協力してもらわない限り事態が良くならないのも事実。どうか、魔王退治に協力してもらえないだろうか」
それに対して竜真は、
「俺等にできることがあるなら、俺等にしかできないことなら、それで笑顔になる人がいるなら。俺は協力します。たとえ急に呼び出され、右も左も分からない状況でも、それが困っている人を助けない理由にはなりません。俺にできることがあれば、なんなりと。」
ちなみに、今グラーバの国王はさっきレティさんが使ってた魔法具を身に付けている。なので竜真の言葉は自分と国王にしか聞き取れない。他にあの魔法具を身に付けている奴もいないみたいだしな。
「そうか…すまない。助かる。……ではもう一人の勇者殿。おぬしはどうだ?」
こっち来たか…ま、他の奴らに聞かれねぇなら多少本音かたるか…
「失礼になるかもしれないが、俺は出会ってすぐの人間の言葉を鵜呑みにすることができない。故に、竜真とは別行動を取らせて貰いたい。そして、自分で答えを出す。それがどうなるかはわからないから、即答はできん。」
「ふっ…よかろう。だが、まだ味方だと決まったわけではないおぬしには、最低限のサポートしかできん。それでもよいか?」
ま、そりゃそうだわな。
「ああ、構わない。だが、話を聞く限り最低限のサポートはしてもらえるんだよな?」
「うむ。この城を出るまでの衣食住と、初期装備くらいは出そう」
……それくらいが妥当か。なにもないよりマシだな…
「さて、勇者殿。覚醒の泉の説明は受けたか?……そうか受けたか。なら話は早い。レティ。勇者達を覚醒の泉へ」
そう言ってレティさんに魔法具を渡す王様。
「かしこまりました。では、リョーマ様、ツジムラ様、こちらです」
かくして、泉へと移動する自分等。
~移動中~
「ここが覚醒の泉になります」
着いたのは、すごい量の魔力で溢れた場所だった。
にしてもすごい量だな…
「では、まずリョーマ様からお入りください。魔法により、水には濡れないようになっているので、心配はありません」
緊張した面持ちで、泉へと入っていく竜真……もうリョーマでいいか。
リョーマが泉の中ほどまで入ったくらいだろうか。いままでうんともすんとも言わなかった泉が、突然眩い光に包まれた。
眩しッ⁈
ノリのいい奴なら某大佐のマネをしていたであろう眩い光は、暫くするとゆっくり消えていった。
あ~…まだチカチカする…
漸く視力が回復した頃、まさに『覚醒』したリョーマがそこにいた。
「うわぁ…」
うん、レティさんがそうなるのも頷ける。
『覚醒』したリョーマは、以前とは比べ物にならないくらいに魔力と『気』の量が上がっていた。
……もうここまでくると人類最強を名乗ってもいいんじゃねぇの?ってくらいに。
魔力を感知出来ないリョーマでさえ、体から溢れる力に呆然としている。
それほどの力を感じるのだろう…
次は自分か…リョーマでこうなるとしたら…自分はどうなるんだ?
「では、次にツジムラ様、お願いします」
落ち着きを取り戻したリョーマが戻ってきて、レティさんが自分を促す。
無言で泉に入る。
多少興奮していたが、泉に入って少しすると、その興奮は冷めていった。
この泉、どうやら入った人の才能を極限まで引き出すもののようだ。
予想通り、中心まで行ってもなにも起きない。ってかリョーマの才能どんだけだよ…
少し落胆しながら戻る。自分を見る目が同情と侮蔑になっていた。
最後に少しシラけてしまったが、勇者の覚醒は滞りなく終わり、自分等は部屋へと案内され、休むことになった。
やれやれ…明日からめんどくなりそうだ…