5話
クラス表にたどり着いた俺は、自分の名前を探す。
人がごった返していて、なかなか字が読めない。
「さぁやぁま!」
----------ドンッ
「ゲホッ、またかよ。中島ぁ。てめ、いい加減にしろよ」
「ごめんごめん!けどさ、俺らまた同じクラスだぜ。三組!すごくね?」
俺、三組なんだ。
中島とも同じクラスだし、三年生も普通に過ぎていきそうだ。
「おら、教室行くぞ!」
なかば、引きずられながらその場を後にする。
三年三組
と、書かれたプレートがあるクラスに入る。
「中島、佐山!こっち!」
「おっ、金井っちじゃん!同じクラス?やったね!」
「佐山も来いよ!」
二年生の時同じクラスだった金井が呼んでいる。
金井の席には、初めて見る顔もたくさんあったけれど、軽く自己紹介をしてたむろしていた。
「てか、佐山と中島。また同じクラス?佐山、かわいそうに・・・」
「おう・・・」
「えっ!かわいそうって、おいおい!佐山ぁ、おう、じゃねぇだろ!」
普通に会話も盛り上がる。周りの男子も、会話に参加しはじめて結構仲良くなれた。
「てかさ、女子の固まりがすごいんだけど」
初めて同じクラスになった田中君が言った。
「マジマジ。全員集まってんじゃん。あの席だれ?」
クラス中の女子が一つの席の周りに集まっている。
ちなみに、俺の席の隣。
窓側、一番後ろ。
真ん中に、誰か一人の女子が座っていて周りに女子が集まって囲んでいる。
「佐山の隣じゃん?隣誰?」
「知らねぇ」
「俺知ってるぅ!!」
クラスは違かったものの、いわゆるお調子者で有名だった、照岡が言った。
「誰???」
「なんと!・・・」
「じらすなよ!」
「はいはい。なんと!
一ノ瀬千雲です!」
「マジ!?」
「俺、あいつと初めて同じクラスなんだけど」
「有名だよなぁ」
「だって、女子なのに野球部でエースピッチャーなんだろ?」
「俺、野球部なんだけど、本当すげぇよ。無口だから喋った事無いけど。
俺が一年の時、先輩に虐められて、体育倉庫連れてかれた時に、一ノ瀬が来て、先輩の顔面殴り飛ばして助けてくれたぜ」
「えっ!?戸崎、そんなことあったのか!?」
「俺も俺も!ゲーセンで恐喝にあった時、背負ってたバットで相手の腹を、ぶっ叩いて警察に連れてってた」
照岡までそんなことを言い出した。
「マジかよ・・・俺らラッキーじゃね?
一ノ瀬さ、優しいし可愛いじゃん。」
「けど、俺。同じ小学校だった女子に聞いたんだけど、小学生の時から変わったらしいぜ。
無口になっちゃったし、それでも、いちは最高なの!、とか言ってたけど」「ま、俺らは同じ小学校じゃなかったしな。
知らねぇけど。俺、狙ってみよっかな」
「無理無理!照岡。お前は無理」
「はぁ!?ひでぇ」
笑いの渦が起こる。
ちぐと同じクラス?
え、本当・・・。
いまいち気持ちの整理ができない。
しかも、隣の席。
どうすれば・・・。
って、俺!何もしないし。ちょっと仲が良かった、その・・・・親、親友と・・・。
「はーい。廊下に並んで下さい」
先生が指示を出す。
男子の固まりと女子の固まりが散って、廊下に並ぶ。
もちろん、俺は一番後ろ。
田園中は始業式だけしたら、そのまま帰宅する。
始業式を終わらせて、中島と帰宅する。
「お前さ、たしか一ノ瀬と仲良かったんじゃねぇの?」
「ん。あぁ、まあな」
「何だよ、その反応!」
「別に」
「どんな奴だった?」
「・・・・ケンカが強かった。」
「それだけかよ!お前なあ・・・。まっ、そんなこと言って、もしかして」
ニヤニヤしながら俺を見る中島。
「そっ、そんなことねぇよ!好きじゃねぇし!!」
「あれ?いつ俺が、好きなんて言いました?」
「こんの、中島!」
「春が来た春が来た、佐山くん〜」
「歌うな!」
「じゃあな、またあした!俺、朝練あるから。佐山一人で行っててくれや」
「はいはい。じゃあな」
中島と別れたあと、一人で家に向かう。
先輩の顔面殴るとか、
ちぐ。ちぐならやるかな。
自然に笑顔になる。
相変わらず、女子に囲まれてて。人気者なんだな。
ん?けど、なんか変わったって言ってた・・・。
何が変わったんだろう。
今までのちぐじゃないのなら、もう俺なんて忘れているかもしれない。
何となく、明日が不安になった。
だけど、早く明日になってほしい。