3話
これも、小学生の頃に遡った話。
俺には、小学校生活六年間、同じクラスでありつづけた奴がいる。
一ノ瀬 千雲という、女子。
俺は、一年生の時隣に座っていた女子が・・・・
余りにでかくて、泣いた。
当時の俺は110cm、隣の女子は138cm。
まぁ何と失礼な事をしたもんだ。
入学してすぐに行った遠足も、隣の人と手をつないで歩かなければならなかった。
隣の女子は右肩を下げて歩き、俺はつま先立ちで2km歩いた。
その、隣の女子が、一ノ瀬 千雲だった。
最初の一ヶ月間、一言も口をきかずにいた。
だがある日、工作の時間に作った船を、他の女子に取り上げられ
高いロッカーの上に置いて、からかわれた。
今思えば、結構小学生なんて酷い事を平気でするもんだ。
思いっきり跳ねて、ロッカーの上に手を伸ばす。
「頑張れよお!」
「すげぇ跳んでるじゃあん!」
応援するくらいなら、こんなことするなっていうの!!
いくら跳んでも、あと少しの所で届かない。
女子が数人で囲んでキャーキャー言ってる。
涙が出てきそうになる。
くそっ・・・・。
「ねぇねぇ、サエちゃん達!あと少しで、佐山君届いちゃうじゃん」
「あっ!いちぃ。」
突然出てきた女子一人。
一ノ瀬千雲。
女子からは<いち>と呼ばれているらしい。
「つまんないからさ、あたしが、もっと高いところに置いて来る」
えっ!何言ってんの?
この子、背高いんだから
俺が届くはずない!
「えっ、いいの?まぁ、いちの好きなようにしちゃいなよ」
「了解!行ってきます!」
ひょいと、ロッカーの上の船を取り上げて、廊下をずんずん進んでいく。
慌てて追いかけていくと一ノ瀬さんは、家庭科準備室に入っていった。
続いて準備室に入ると、一ノ瀬さんが目の前の机に座っている。
俺の船を持ちながら。
「ねぇ」
「なっ、なんだよ!」
「んっ」
俺が作った船を片手で差し出しながら俺を見つめている。
「え?」
「だから。助けてやったの。」
た・・・たす?
「えっと」
状況が理解できていない俺に、一ノ瀬さんは小さい笑顔をつくって
「だから、これ、佐山君のでしょ?」
「うん」
「じゃあ、どうぞ」
俺は、おずおず一ノ瀬さんから船を受け取った。
「佐山君ってさ、なんかよく、いじられてるよね。特に女子」
グサッ
痛いところを簡単に聞いてきた。
「俺・・・ちびだから」
さぁ、何とでも言え!笑え!本当の事だけど、本当の事にしたくない事。
こんな大きい子から見れば、俺ってかなり小さく見えてるんだろうな。
無意識に、目線が床に落ちていく。