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19話

雲一つ見当たらないほど澄み渡った青空。

太陽の光を受けて、不思議な模様が踊るプールの水面。

白い水しぶきが上がる・・・・・。

「おい、佐山。遅くないか?」

うわぁ・・・。

こんないい日なのに、朝っぱらからこいつかよ。

「四十分からだろ?ちょうど四十だぜ?」

「お前、先輩だからって調子乗るなよ。五分前にはいるだろ?普通は」

いや、俺は一年のときから時間きっかりに来てましたんで、はい。

「じゃ、時間だからな。練習始めようぜ?」

「・・・・けっ」

けっ、て。

聞こえてますから!

何でこいつはいつもこうなのか・・・俺、何かしたかよ?

三年生、水泳部の牧野。

こいつとはどうも気が合わない。

俺は何もしてないぜ?

牧野がいつも一方的に絡んでくる。

「先輩。少しいいですか?」

「ほ?なんだ?」

男子部員の二年生が話し掛けてきた。

「あの、ストップウォッチを借りたいんですけど・・・」

「別にいいぜ。教官室にあるから」

「ありがとうございます!!」

二年生・・・もう少しで楽園が待ってるからな・・・。

本当に、三年生が消えれば部活は楽園状態だ。

一年生は辛くなるけど。

ま、楽園をくれてやる前に俺は結果を残したい。

やたらに絡んでくる牧野の事は忘れよう。

さようなら、牧野。

「一コース借りるぞ!!」

「了解!」

一コースで泳いでいた女子部員が隣に移った。

俺は、冷たい水の中に滑り込む。

クロールで500m泳ぐつもりで。

-----水は俺の味方だ・・・。

本気でそう思う。

歩くより、泳ぐ方が気持ちが良いし辛くても、水泳は楽しいから続けられる。

水の中では、自由になれる気がする。

水泳の神様みたいなのがもしいたら、俺だけに恩恵を授けてくれているようだ。

水をかいて、ぐんぐん前に進む。壁にぶつかったら、クルリと滑らかにターンをして、また泳ぎだす。

もっと・・・・もっと速く・・・。

隣のコースに自分の競争相手がいるとイメージすると、スピードがどんどん上がる。

だんだん、腕や足が痛くなって、息が苦しくなってきた。

そういうときは、何も考えずに自分の内の闘争心を掻き立てて、水の冷たさを感じて、力を沸き立たせる。


「ぶはあっ!」

500mを泳ぎ切って、次の平泳ぎにかかる。

朝練ギリギリまでずっと平泳ぎをしてるつもりだ。

今日は早めに上がりたいからな。




-------「先、上がらせてもらうぜ!!」

「はいよお」

三年生の部員が軽く答えてくれる。

水から上がったばかりで、まだプールの臭いが少ししていて、重い体を教室へと向かわせる。

三年生の教室が遠く感じる・・・。

こういうとき、階段は最悪だ。

うぅ・・・・あと一歩ぉ・・・。

「佐山君!!おはよぉ」

俺の重い肩に、手が置かれた。

さらに・・・重い。

「ああ?五十嵐か。はよ」元気だなあ、おい。

ぴょこぴょこ跳ね回りながら満面の笑みで挨拶してきた。

五十嵐流唖。

確か、二年生のとき同じクラスだったか?

肩よりすこし長い黒髪。

先が少しカールしていて、前髪はセンター分け。

目が大きくて、くっきりしている。

小柄な体型でそれぞれのパーツが形が良い。

人気の女子の上位の奴だ。

ちぐとは、真逆の容姿。

「朝練ー?お疲れ様!!」

「おう・・・ども」

できればその手を離していただきたい・・・。

「そういえばさ、佐山!新しいCD聴きたいって言ってたよね?お兄ちゃんから借りたから、放課後うち来て?」

CD?

そんな事言ったかなあ。

「ああ、ごめん。今日の放課後は予定あるから。またな」

今日はちぐの家に行く。

目的は絵空と遊ぶ約束をしたからだけど。

ちぐも居るはず。

「なあに?彼女??」

一段下がって、上目遣いに俺を見上げながら話し掛ける五十嵐。

せっかく、階段のぼったのに・・・何で降りたのかな?

落とし物?「彼女はいないから。ちょっと友達と約束してんの」

「ふぅん?あの、一ノ瀬とかいう子?」

「えっ、お前よくわかるな。正確にはちぐの弟だけど」

「二人が仲良いって噂・・・本当だったんだ」

噂・・・になってるのか。

「ああ、噂になってるんだ?

CDはまた今度頼むよ。ありがとな」

「ばいばぁい!」

教室の前で別れるときに、手をふっている。

五十嵐もよく絡んでくるんだよなぁ。

牧野とは違うけど・・・。教室のドアを開けて入ると、田中や小島はまだ来ていなかった。

ちらほらと文化部の男子と朝練無しの女子の姿が見えるだけだ。

「佐山・・・」

「ん?」

俺は、いつものように席について鞄から教科書を取り出していたところで、男子生徒に声をかけられた。

ううん・・・。

誰だったかな・・・。

少し大柄な体型で丸っこい顔つき。

身長もさほど高くはない、おっとりとした感じの男子生徒だった。

「ええと、佐藤くん?」

「佐藤?僕?」

「ハズレか」

「ハズレって、酷いなあ。」

「じゃあ、渡辺?」

「もういいよ!僕は、菊地 登也だよ。覚えてね」

「あ、うん。悪かったよ。俺は、佐山大輝」

「佐山は知ってるよ」

「ああ、そう。登也って・・・小島と同じ名前だな」

「そうだね!漢字は違うけど」

ふっくらとした頬に浮かべた笑窪が人が良さそうなイメージとピッタリな笑顔を、菊地はする。

「で、どうしたんだよ」

「あっ、ごめん。僕から話し掛けたのにね。あのさ・・・」

菊地の顔がみるみる赤く染まる。

「お前、わかりやすい」

「え!?そうかな、えっとけど・・・」

「何?お前、五十嵐が好きなの?」

菊地の顔が、ボッ、という音をたてそうな勢いで顔が真っ赤になった。

「図星かあ・・・で、さっき俺が話してたから嫉妬しちゃ」

「違うよ!」

あれ、違う?

「なんだ」

「五十嵐さんは、可愛いと思うしモテるけど僕は無理だよ・・・」

「よくそんな恥ずかしい台詞を」

「ま、五十嵐じゃなくて!あの・・・五十嵐さんの友達に、佐藤さんっていう人がいて」

「お、ここで出てくるのか佐藤は」

「・・・」

「で、佐藤さんが?」

「僕、佐藤の事が幼稚園のときから好きなんだけど」

「ストーカー・・・」

「酷っ!別に追いかけ回したりしてないんだからストーカーじゃないだろ」

「ごめんごめん。続きをどうぞ」

「うん・・・けどね、今まで何の接点も無かったし、僕こんなんだろ?だからずっと告白できなかったんだ。

けど、もう中学三年生でも同じクラスになれなくて・・・。

だから、告白しようと思うんだ!

佐山、五十嵐さんと仲が良いんだろ?

ちょっと、佐藤さんの事聞いてみてくれない?」

菊地・・・健気な奴め。

俺、こういう奴嫌いじゃない。

「そうかそうか!けど俺、五十嵐とはあんまり仲良くないかも」

「えっ?あんなに仲良さそうだったのに」

「嫌いじゃないけどな、何て言うか、あいつから一方的に仲良くしてくる感じかな」

「贅沢だよな、佐山」

「ま、聞いとくよ」

「ありがとう!」

菊地は初対面なんだけど、危ない感じがしない。

仲良くしていけそうだ。

「佐山は、一ノ瀬さんが好きなんだろ?

僕、一ノ瀬さんと話したこと無いんだけど、お似合いだと思うよ。

五十嵐さんより人気だよね。頑張って!」

「おいおい。誰が一ノ瀬の事好きなんて言った!」「え?ちがかった?」

「いや、あの、す好きじゃなく・・・ない・・・けど、あの」

「佐山くん、頑張って」

「うう・・・」

どいつもこいつも、何なんだよ。

「そういや、その娘の下の名前は?」

「うんとね、佐藤 羽奈さん」

「はな?」

「はねって書いて、奈良県の奈」

「了解」俺が答えると、鼻歌まじりに自分の席に戻っていった。

最近、今までの話の中で誤字や矛盾を発見してしまいました・・・

じかんを見て訂正したいと思います。


間違いに気付いてくれた方は、教えて頂けると幸いです。



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