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動き始めた運命

戦闘ってどうすればうまく書けるんでしょうね?

奈々と亮輔は、学校を出てから近くのスーパーに寄って夕飯を買い、今は家の帰路の途中にある公園の横の歩道を歩いていた。もちろん、荷物もちは亮輔だ。とはいっても夕飯一食分なのでそれほどの重荷にはなっていない。その亮輔のわずか前を歩く奈々は、突然亮輔のほうを振り返った。亮輔は止まる、どころではなく若干後退した。そのままの位置で停止してしまうと、どうにかなりそうだったからだ(理性的にではなく、物理的に)。目の前にはなにやら苦しそうな顔をしている奈々がいた。苦痛に呻いている、といった表情ではなく。心苦しいことがある、といったような。当然だった。奈々の頭にあるのは、それだけの罪科を背負った問いだったからだ。


「亮輔」


「なに?」


「家族・・・欲しい?」


亮輔は、しばしポカーンとしてしまった。何を聞いているのかと、そう思ったからだ。あと、漫画で見た『子供・・・欲しい?』みたいなトーンだったために、思考回路はショート寸前だった。


「家族って・・・なっちゃんがいるだろ?」


「そういうことじゃなくて、亮輔の、本当の家族」


「だから、それがなっちゃんだっての」


俯いて、心なしか震えているように見える奈々の様子を、亮輔はとても見ていられなかった。


「だから、そういうことじゃなくてっ」


いつもの、強い奈々のことが、亮輔は大好きだったからだ。そこに、恋愛感情などというものは、もちろんなかった。強い、憧れ。こういう風になりたい、そんな羨望のまなざし。それを、亮輔は奈々に持っていた。


「そういうことだよ」


奈々は、先ほどの一輝との邂逅で、ある思いが甦っていた。だから、一輝に、亮輔に、あんな、こんなことを聞いてしまっていた。どうしても、負い目を忘れることが出来ない。忘れることは罪だし、忘れてはいけないということも理解していた。それでも忘れたいと思うのは、長く亮輔といればいるほど、彼のことを、まるで本当の息子のように思ってしまうからだった。そしてその度に、今まで以上の何かが奈々を襲うのだ。


「俺には父さんも母さんも・・・いたんだろうけど、さ。二人には申し訳ないんだけどさ。俺、なっちゃんがいいんだ。もうなっちゃんじゃないと嫌だよ」


震える奈々の身体を、片手でそっと引き寄せて、自分の胸に顔を当てるように亮輔は抱きしめた。だんだんと、身体の震えが収まっていく奈々に、亮輔は一息ついた。これを誰かに見られたらどうするか、なんて思いながら。




「しってっか? いけね~んだぜ、近親相姦はよぉ?」


静かな夜に、男の声が響いた。公園のほうから足音が聞こえてくる。二人は急いで身体を離した。


「なあ、セブン? いけねーよなぁそれはよ」


決して、恥ずかしいから、とか誰かに見られると云々などという理由からではなく。


「最近のガキはすすんでるんだなあ。ずいぶんと大胆になったもんだ、俺が『寝ていた』間によ』


あのままの体勢ではまずいと、身体の奥が囁いたからだ。


「セブン、聞いてんのか、おい」


男は、大きな背広を羽織っていた。ポケットに両手を突っ込んで、奈々のほうに話かけている、ように亮輔には見えた。


「ファイブ・・・!」


隣に居る奈々から苦々しげに呟く声が聞こえた。二人は知り合いなんだと亮輔は理解した。決して、仲が良くなどないということも。目の前の男は、奈々の声が、聞こえたのか聞こえないのか口の端を吊り上げた。そういって親しげに両手をポケットから出すと大きく開いた。


「覚えててくれたのか、嬉しいなあ。本当、嬉しすぎて・・・」


右手を亮輔と奈々のほうに向ける男。その手は、まるで銃を形作るように、人差し指を伸ばし、親指を立てて、人差し指を二人に向けていた。




「消したくなる」




亮輔は、突然奈々に抱きすくめられると、今まで自分たちがいた場所が、何かに襲われているのを空中から眺めていた。気づけば、自分は奈々にお姫様抱っこをされていた。


「ちょ、なっちゃ・・・」


声をかけようとして、やめる。奈々の横顔が、今まで見たことがないものだったからだ。目の前の男を見据える視線には、憎しみの色が混ざっていた。着地して、降ろされると、奈々は男と亮輔の間に立ち、男のほうへ身体を向けながら亮輔に話しかけた。


「亮輔、これ持って逃げな」


奈々が、手に持っていたバッグを亮輔に投げ渡す。どこか形が膨らんでいるバッグに、亮輔は何が入っているか確認しようとするが、奈々に制止される。


「中身見たいなら家帰ってからにして。それと、教科書用意して待ってな。私はちょっと話すことがあるから」


「んだな。どいてなボーズ。今のそいつぁよ、ボーズの知ってるセブンじゃねえぜ」


「そもそも、なんだよ。セブンって」


「それは、お前の知る必要のねぇことだ、ボーズ。首を突っ込んじゃいけねぇことがある、何にもな。そうだろ?」


「こい、ファイブ。私を、殺す(やる)んだろう? その代わり、手を出すなよ、亮輔には、絶対に」


「ああ、出さねーよ。誓っていいぜ。んじゃ・・・いくか」


ファイブと呼ばれた男がそういった瞬間、二人の姿が目の前から消えた。そして、大きな衝突音が響いた後、公園の真ん中に、二人の姿があった。ファイブの手には長い剣があり、奈々は素手で対峙していた。


「動かねえな、ボーズ・・・ぐっ!?」


ファイブが一瞬亮輔のほうを見て溜息を吐いた。仕方ないなあ、なあ? という風に肩を竦めて奈々のほうを見ると、そこに奈々の姿はなく、背中に激しい衝撃が襲う。前のほうに飛び衝撃を和らげ、奈々に注意を向ける。奈々は、激しい憎悪と、認めたくはない、大きな高揚感に襲われていた。男は、その様子を見て楽しそうに、抑え切れないといった感じで笑いを浮かべる。


「けけっ、所詮てめえは俺たちと同類ってわけだ。楽しいかよ、戦うことがよ?」


「黙れ」


「あんなよ、おままごとなんかしててもよ、お前は所詮セブンなんだよ」


「・・・黙れ」


「さっきの、あのボーズの顔見たかよ? お前を見る目によ、恐怖しかなかったぜ?」


「黙れえええええええええぇぇえぇええっ!!!」


その咆哮を、亮輔は、公園の外で聞いてしまっていた。ここにいるのは、危ない。それは分かる。逃げて、なっちゃんが帰ってきたときのために教科書を開いて待っていなければならない。それも、分かる。だけれど、なっちゃんを置いては帰れなかった。それはきっと、愚かな行動なのだろうけれど。


「なんなんだ、あいつ・・・」


突然現れた男。なっちゃんとなにやら知り合いのようで、いきなりなっちゃんを殺すという。そして今、二人は殺しあっている、のだろう。二人が消えて、また現れて消えてそしてまた現れる。その繰り返しだった。亮輔には二人の動きがまったく見えなかった。逃げることも出来ず、近づくことも出来ない。そんな亮輔に出来るのは、奈々が無事であるように祈ることだけだった。


二人は、動きを止めて対峙していた。しかし、二人の様子には幾分か違いが生じていた。ファイブは欠伸をするほどの余裕を持っており、一方の奈々は肩で息をする有様だった。


「・・・まさか、鈍った身体でここまでやるなんてな。まあ、そうじゃなきゃ張り合いがないか」


「ファイブ、これは任務なのか? 契約で、私と亮輔は正式に『逃がされた』はずだが」


「いや。これは俺の単独行動だ。まあ、その相手がお前だったのは俺からすればラッキーかどうかってところだがな」


「・・・そうか、あの事件の犯人はお前だったのか」


「事件? なんのことだかさっぱりだが・・・世間ではそういわれているのかもなあ。おれにはどうでもいいことだが」


「いいのか、まだ組織にいるんだろう、お前は?」


「いいのさ、誰かが(しまつ)しに来たら返り討ちにすればいい。そうだろ?」


「そうだな、だが・・・そのときは永遠に来ないな」


「なぜだ?」


「それは」


奈々は、大きく息を吸い込む。そして、今までで一番早く、強く、逞しく。動き出した。


「私が! (しまつす)るからだ! はあああああああぁあああっ!!」


心の中で、となえる。『オーバードライブ』


瞬時に、加速。そして、反応できていないファイブの背中を蹴りつける。男が再び前に飛んで衝撃を和らげようとする。その瞬間を狙い、前方からファイブの顔面を殴りつける。撃ち飛ばされたファイブは、声を上げることも出来ず、後ろに倒れそうになる。奈々はファイブの後頭部を下から蹴り上げ再びファイブを強引に立たせると左右に殴り続ける。


「これで、終わりだ!!!」


最後に高速での回し蹴り。ファイブは地面に打ち付けられ、ビクともしない。奈々が勝利を確信した。と同時に、さっきまでの自分は我を忘れてしまっていたことに気づき、思わず公園の外を見る。そこにいた亮輔は、いつもと変わらない風に見えた。が、その表情が一転恐ろしいものを見たようなそんな表情になった。


「終わりぃぃぃ??? 誰がだって?」


声のしたほうへ奈々が振り返ると、信じられないものがあった。血に、土に塗れたファイブの姿。しかし身体には既に傷一つついておらず、服がもはや布きれとなっているぐらいだった。口から血を流し、笑っているファイブの姿。


「おい、言えよぉぉぉ・・・誰が、誰に、誰を、終わらせるんだ?」


奈々は、一歩も動くことが出来なかった。その声の恐ろしさに、身が竦んでしまっていた。それだけでは、なかったが。その理由にファイブは気づいているのか、ニヤリと口元を上げる。そして、ゆっくりと近づいていく。


亮輔は、何が起きているのか分からなかった。あの男が倒れて、それで終わったと思った。空気が変わったのを、この離れた位置からでも分かる。空気が、痛い。そして、再び大きい衝突音が聞こえたとき、奈々が吹き飛ばされていた。
















お粗末ですまんです。

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