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またまた猫又、以下潜り。  作者: ネコヌコニャンコ


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第一話

夢の中で思いついた設定で書きました。




「早く行け。海莉カイリこの件はお前の領分だ。」


 おじいちゃんがソファーに寝転びながらせんべい片手にそんなことを言い出した。


 おじいちゃんの目線の先、そこにはテレビがありニュースが流れている。


 それを見る目は真剣で、冗談を言っているようにも見えないけど…


 見ると、街中に二股の尻尾を持つ巨大な猫が現れ、暴れているらしい。


 二股の尻尾。それだけでおじいちゃんがああ言った理由が何となく察せた。なぜ私に言ってきたのだろう。


「おじいちゃん、領分って言われても、私あんなのと戦えないんだけど。それに……」


「ゴタゴタ言わんでいい。ワシが行けばそりゃあっちゅう間に解決するが、解決しただけでは終わらない、厄介なことを抱えてるのだコヤツは。」


 せんべいの割れ口をテレビの方にヒラヒラと向けながら、気だるそうに言うじいちゃん。


 どうやら知り合いらしい様子だが、あまり関わりたくなさそうな様子。


 というか、化け猫って時点でどう考えても、この一家の身内・・・・・・・でしかないのだけど。


 もっといえば親戚といったところだね。


 いずれにせよ、放っておくと街にも、暴れてる人本人にも被害が出かねない。


 正直、行くことに躊躇わないわけもなかったが、おじいちゃんの強い眼圧に負けて現場へ向かうことになった。


 玄関を出てすぐ、私は数キロほど先の現場へと駆け出したのだった。




 現場へと到着すると、テレビやら消防隊のギャラリーやらがいた。


 警察の人が様子を見に行こうとするテレビ局や一般人を頑張って止めているが、その後ろで何かが崩れたような大きな音が聞こえてきた。


「みなさん!危ないのでここから先は立ち入り禁止です!ただいま原因の対処にあたってますのでもう少しお待ちください!」


 大きな声で警察の人が叫ぶが、しかしそれは誰の耳にも届いていない様子。


 ふと、少し遠くで誰かが救急車に運ばれていくのが見えた。血の匂いの濃さから察するに、相当大きな怪我をしたようだ。何人かいる。


 ふと見ると、彩奈あやなだった。苦しそうな声が漏れている。


 彩奈は、私の幼馴染で、幼い頃から一緒に遊んだり、やんちゃしたりしている大切な友達。


 それをこんな目に合わせたやつ……あの化け猫。絶対許さない。


 すぐにでも彩奈に駆け寄りたかったが、人の密度だったり、救急隊員の邪魔になってはいけないという理由で、今は我慢することにした。


 私は今のうちにパーカーのフードを被る。必死に揺れ動きそうな尻尾・・の動きを押さえつける。


 静かに気配を消して、私は現場へと入ったのだった。



 これは……ひどい。何がひどいって、高層ビルにでかいバッドに殴られたような痕が残っていたから。


 無論、言うまでもなく窓ガラスは粉々で、建物の内外関係なく大量にその破片が散らばってる。


 靴を履いていたとしても踏んだら足に刺さりそう。


 しかも、四方八方の建物、街路樹関係なく破壊されている。


 それはそうとして、静かにこちらを見て佇む猫がいた。


 まるでぬいぐるみみたいで……ラグドールだっけ?そんな種類だった気がするけど。とりあえず美人な猫がいた。


 しかし、明らかに違和感があるとするなら尻尾が二又であること。


 それつまりこの世の猫ではない、または猫ではない存在の猫ということに他ならない。


 私は少し先走る怒りを抑えながらその猫又に話しかける。


「ねぇあんた、ここを破壊して一体どういうつもり?私の友達も巻き込まれてたんだけど。」


 あ、少し苛立ってるみたいな言い方をしちゃった。

まあ実際そうなんだけど、仮に犯人がこの猫又じゃないときどんな反応すれば……


 返答をしばらく待つが、沈黙だけが流れる。


 猫又はこちらをジッと見つめ、私も猫又をジッと見つめ続けるので、なんだか奇妙な空間が出来上がってしまっていた。周囲は瓦礫の山だし。


「………ふぇ?あたしに話しかけてたの〜?」


 突然としてどこか気の抜けたような声が響き渡る。声の主は言わずもがな猫又からである。


「え、あんた以外に誰がいるの?」


「たしかにそうだね〜あたししかいないねぇ…」


 間延びした声で特段気にした様子もなくあくびをしている。


「んで?結局あんたは街を壊して何がしたかったわけ?」


「ん〜?もしかしてぇ、あたしを討伐しにきた人〜?」


「場合によってはね。」


 声の奥の質が変わった。相当警戒されているようだ。


 当たり前か。普通の人だったら珍しいと思うか、見間違いだと思うだろうし。猫又を見たとしても。


 しかもその上話しかけてきた。相手からすれば、多少は知識を持っている相手だ。油断はできない。私もできないし。


「ん〜、そう言われてもねぇ〜。あたしはただ気づいて欲しかっただけだよぉ…」


「気づいて欲しかった?誰に?」


「誰でも。できたらあたしみたいな猫又に…とかね♪」


 仲間を探してたってこと…?でも街を壊した理由にはなってないけど…


「まぁ〜、君みたいな同族に会うとは思わなかったけどね。」


 猫又の緩んでいた声が少し引き締まる。それと同時に、私の尻尾が服からはみ出ていたことにも気がついた。


 慌てて隠すも、もう遅い。まぁ、この際それはどうでもいい。


「……一つ聞いてもいい?」


「なぁに?」


「彩奈を傷つけたのはあんた?」


「……ふぅん、復讐したいってことだねぇ〜。残念ながらあたしはアヤナちゃんを知らないけどぉ、ちょっとはしゃいじゃったときに誰かを巻き込んだりはしたかもね〜?」


 瞬間、ナイフのように鋭利な爪を猫又の喉元へと運んでいた。


 さっきのふざけた言い方、悪びれもせずただこちらを煽るように笑みを浮かべながら。


 腹が立つ。殺してしまいたいくらいに。


「……へぇ〜。可愛いお顔じゃん♪いっちょ前に猫耳まで生やしちゃって♪あたし、君が欲しくなっちゃった。」


「あ?なにふざけたことを言ってる?」


「睨んでる顔も…むしろ睨んでる顔こそ至高だねぇ〜。やっぱりほしいかも。」


 話が通じない。欲しいやら睨むのがいいやら、なにを言ってるのって話。


 でも、そこから溢れる不気味さは私にも伝わっている。


 気づけば爪の先が猫又の喉に食い込んで……え?寸前で止めたはず…


「ねぇねぇ〜飼い慣らされた猫って、実は精神的に子猫のままだったりするんだよぉ〜?」


 突然、猫又がそんなこと言い始めた。


「なに?いきなり何の話?」


 警戒しつつ猫又をよく見ると、徐々に体が大きくなってきている。


「大人の猫になっても子猫のままならぁ〜、猫又が子猫でも、そのまま大きくなるのは不思議じゃないよねぇ〜?」


 手先にかかる質量が一気に増した。


 素早く距離を取ると、デカくなった猫又が立ち上がる。


 その足が大きな瓦礫を踏み潰す。砂埃が舞い上がるが、それを意に介する様子もなくただ、猫又は私を目新しいおもちゃを見るような、まん丸の目で見つめていた。


 舐めている。それはもう明らかに、十中八九舐めている。


 理由は単純。先程からのやり取りで、猫又が自分の方が強いと思っているからかな。


 無論それが事実でその通りなのだが、少し納得いかない。


「じゃあさ、一個いいこと教えてあげる。」


「なぁに?」


「狙った獲物は逃さないんだよね私。」




 猫又の尻尾が地面を叩き、瓦礫の破片が頬をピッと裂く。


 ひとまず物陰へと移動してどう倒すべきかを考える。


 おじいちゃんから聞いた。うちの家系の猫又は尻尾を切られると弱って死ぬらしい。大体の動物体の器官切られたら弱ると思うんだけど。


 とはいえ、無策に飛び出してきたから、尻尾を切るような得物を持っているはずもない。


 別の方法を考えないといけないんだけど…


 突如として耳に響く風切り音。気づいた時には遅かった。


 猫又の尻尾に叩きつけられたと同時、吹き飛ばされていた。


 背後で割れたガラスがパラパラと崩れ落ちる。


「ほらぁ、そんな風に油断してると死んじゃうよぉ?」


 クッソ、手に入れるって言ってた割に容赦ないじゃんこいつ!


 ヤバい、意識飛びそう。ついでに吐きそう死ぬ。血の味もする。口切ったかも最悪。


 霞む視界の中で、猫又の尻尾が大きく尖った瓦礫を掴むのが見えた。


 まだダメージに震える手をゆっくりと頭の上に持ってきて、顔を撫で下ろすように手をスライドさせた。


 猫又が瓦礫を投げる。咄嗟に横に転がって回避した。


 見えないけど位置は分かる。次の攻撃仕掛けようとしてることも分かる。


 同時にあいつを倒す方法も浮かんだ。


 そこらへんの瓦礫を拾って猫又に向かって投げつける。


 瓦礫に当たった猫又は、頭から吹っ飛び、瓦礫の上に倒れる。


「いった〜い……仮にも猫に石投げるなんてひどいよ〜…」


「同じ半端な猫ちゃん同士、石投げても大丈夫でしょ?」


「何もよくないしぃ、そのヘルメット……」


「言わないで。あまり私も使いたくはないの。見た目かっこ悪いし。」


「う〜ん、じゃあそうするね。」


 ようやく話が通じた気がする。ホッとしていると、猫又は立ち上がった。


 ちなみにヘルメットというのは、先ほどの手を顔の前で上から下にスライドさせることで顕現できる、うちの家系の能力の一つだ。とは言ってもお父さんの方の家系だけど。


 視覚と聴覚、嗅覚が半分くらい使えなくなる代わりに、体の感覚が鋭敏になって、身体能力も大幅に上がる。


 それがこのヘルメットの効果だ。使いこなせるようになれば更に強化効果を得られるらしいけど…おじいちゃんが言ってただけな上に、お父さんにも会ったことがないからわからないんだよね。


 まぁ、気にしても仕方がないってことで。


「そうそう、言い忘れてたけど、私の尻尾って、当たるとムチより痛いから気をつけなよ?」


「え〜、ムチより痛いの〜?痛いのは嫌だしぃ……早いうちに動けなくして持ち帰るね〜。」


「テイクアウトの前に代金は払ってね。あんたの降伏と服従ね。」


「あはは〜、じゃあ私は君に払ってもらおうかな〜。」


 再び猫又が動き出し、今度は足で踏み潰そうとしてくる。


 咄嗟に私は尻尾で砂を巻き上げ、物陰に姿を隠す。


 やっぱり見つかったようで、さっきと同じように瓦礫を尻尾で投げようとする。


 その隙にまだギリ残ってる建物を足場にして、猫又の上に飛び乗る。


「ちょっとぉ〜背中に乗らないで〜。」


「ここなら絶対攻撃は当たらないでしょ?」


「そうだけどぉ、降りて欲しいなって〜。」


「無理。今からが私の作戦の本筋なんだから!」


 私は猫又の背骨周りの筋肉部分を叩きつける。それも、相手が痛がるほどではなく、くすぐったい程度に収まる範囲で。


 猫又が震え出した。喉の奥から声にならない声が漏れている。


「どう?尻尾が二又でデカくなれるとはいえ、その基は猫。つまり、背中は弱点よね?」


 声をかけるも、反応はない。だが、力が抜けていくのか、徐々に徐々に猫又の体が縮んでいく。


 それに合わせて叩く力も弱くする。


 それをしばらく続けると、猫又が元の大きさまで戻った。


「に"ゃ"あぁぁぁぁ……気持ちいいにゃぁ……」


 ようやく喋ったかと思えばこの言葉である。


 今は背中をポンポンと軽く叩く程度だけど、尻尾をピンと伸ばし、下肢部分を持ち上げている。


「さて、そっちに戦闘の意思は無くなったみたいだけど?どうする?負け認める?」


「やだぁ〜、負けじゃない〜だからもっとしてぇ〜……できればもっと強くね〜」


 うわ…リクエストしてきやがったよ。


 ちょっと引き気味にバシッと猫又の背中を叩く。


「ひゃぁん!いいよ〜、もっともっとやってぇ?」


 どこか熱に浮かされたような瞳で言われ、何度もバシバシしてしまう。


 その度に嬌声を上げる猫又。気がつけば少しずつ四肢が伸びてきていた。


 いくらか繰り返した時、目の前には、眩しいくらいのフワフワとした白髪をした、中学生くらいの女の子がいた。猫耳と尻尾つき。


 その子は今、私にお尻を向けてフリフリと振っている。


 ……あれ?これ私、通報案件では…???


 絵面的にとんでもなく危なかったので止めようとしたが、それを引き止めるのが一匹…訂正。1人。


「あぁん、待ってよぉ、もっとやってよぉ〜、力抑えてる分もっと気持ち良くなれるんだから〜フヘヘヘ。」


 う〜ん、ただの変態らしい。よだれまで垂らしてだらし無い顔をこちらに向けている。


「無理。あんたが負けを認めて、悪さもしないで、私のいうこと聞くっていうんだったら、やってあげてもいいよ?」


「えぇ、ほんとぉ〜?」


「ホントホント。」


 まぁ、やるとは言ってないし…


 すると、猫又ちゃんは仰向けに寝転び、いつの間にかきていた服をまくってお腹を見せる。


「ほら、ほらっ、降参したからぁ〜。だからお願い〜。」


 ついには耳と尻尾まで無くなったので、一回だけベシッとお腹を叩いて、家に向かう。


「ちょっと待ってぇ〜、早く、早くもっとしてぇ?」


 変態の言うことは無視無視。というか、これ以上続けると私が捕まりそうだし。


 ワーワー喚いてる猫又ちゃんを無視して、家に帰ったのだった。


続きは気が向いたら書きます。不定期です。ついでに、猫って可愛いよね。

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