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あいつらが死ね!!

作者: 涼風


「おい、飛び降りんのか。」


「…うん。」


「じゃあ、BGMつけてやるよ。」


「はい、いっきっーきっーのきーはいはいはい。」


「おっさん、殺すよ。」


「なんて口の利き方だ。年上への敬意を払いたまえ少女よ。」


「邪魔しないで、いま集中してるから。」


「邪魔なんてしてねえよ。人生一度しかない大イベントだぜ盛り上げようとしてんだよ。」


「うるさいって言ってんの。どっか行って。」


「お前こそどっか行ってくれねえか。」


「は?」


「俺も飛び降りてえんだよ。今日、今すぐ。」


「おっさん、そんなふけてんのに飛び降りたいとか思うんだ。」


「それはこっちのセリフだガキ。そんな歳でなんの悩みがあんだよ。」


「…おっさんにはわかんないよ。」


「なんだ、その貧相な胸でいじめられたか。はぁ~その程度のこと飛び降りようとすんのかよ。」


「は!?は!?ち、ちげえし!胸がないことは認めるけどちげえし!」


「なんだ図星か?」


「ちげえよ!」


「胸は揉むとデカくなるんだぞ。揉んでやろうか。」


「キモ、さっさと飛び降りろ!」


「だから、飛び降りたいけどお前が邪魔なの。」


「…関係ないし。他にも飛び降りれる場所なんていっぱいあるじゃん。」


「まあ、確かにそうなんだが。面倒だ。それにこの場所から離れたらもう飛び降りる勇気がなくなっちまう気がしてよ。」


「おっさんはもう飛び降りる覚悟決まってるんだ。」


「ああ、そりゃな。人生もうこの先なにも待ってないしな。」


「なんで飛び降りようと思ったの。」


「母さんが逝っちまった。俺の所為でな。俺が殺した。」


「そういう言葉って、大抵本人が考えすぎて“殺した“って大げさに言ってるだけだよね。」


「いや、そんなクセ―映画のセリフじゃねえよ。完全に俺が殺した。俺の収入がままならない所為で医療費が払えなかったんだ。借金してまで母親の医療費を払う覚悟は持てなかった。」


「…そっか、ごめん。でも一つ言わせて、飛び降りる覚悟は持てるんだね。」


「うるせーな!しょうがねえだろ、会社だってずっと上司からいびられてよ、心の支えだった母さんも逝った。もう、耐えれねえ…つれえんだよ!」


「はっ、いい歳こいたおっさんが小学生みたいなこといって。」


「じゃあ、なんでてめえは飛び降りようとしてんだよ!」


「わ、私のことはどうでもいいでしょ…」


「はっ、じゃあてめえが飛び降りた後、体にマッキーで『貧相な胸でごめんなさい』って書いといてやるよ!」


「や、やめて!分かった、話すから…」


「おう。」


「学校でいじめられてるの…」


「何を言うかと思ったらその程度かよ、俺と変わんねえじゃねえか。」


「おっさんなんかと一緒にすんな!」


「いーや、一緒だね。お前はその程度事で飛び降りようとしている。」


「おっさんにわかんの!毎日上履きを買いなおしてる気持ちが!」


「知らないし、興味もない。」


「じゃあ、何も言ってくんな!」


「あーはいはい、じゃあ早く飛び降りろよ。後ろ詰まってんぞ。」


「詰まってるっておっさんだけじゃん。」


「それもそうだな。」


「・・・」


「・・・」


「まだ?」


「…うん。」


「・・・」


「・・・」


「なんでいじめられてんの?」


「わかんない。なんか気持ち悪いんじゃない?あいつらから見れば。」


「じゃあ、いじめられてる原因を“可愛すぎるから“って考えたらどうだ」


「は?何言ってんの?」


「最近テレビでよく聞かないか?『可愛くてゴメン』とかいうフレーズ。」


「うん。ストーリーとかで聞く。」


「お前もそんな風に考えてみればって話、『私、可愛いからいじめられてるんだー』って。」


「私可愛い?」


「いや、全然可愛くない。」


「くたばれ、くそじじい。」


「でも可愛いの定義は人それぞれだろ。お前が自分の事可愛いって思ってれば可愛いんだよ。まあ、勘違いブスになるだけだがな。まあ、それでも飛び降りる選択よりはマシじゃねえか。」


「おっさんもいじめられてるんだよね。」


「ああ。」


「じゃあ、おっさんも可愛いて思えば?」


「いや、俺は無理だ。いじめられる原因が明確だからな。」


「なに?」


「単純に無能だから。」


「はは、分かりやすくていいね!」


「初めて笑った。」


「…当たり前じゃん。人間なんだから。」


「さっきはブスって言ったけど、笑ったお前は可愛いよ。」


「なに?口説いての?キモいよ。」


「本当の事言っただけだろ。最近のガキは本当にかわいくねぇ。」


「おっさんも考え方を変えてみれば?」


「は?」


「ほら、こういう風に。『無能だと上司にいびられてる俺、実は有能で女社長に求婚される~戻って来いと言われたがもう遅い~』、どう?」


「うわー、嫌だわー。」


「でも、飛び降りるよりかはマシだと思うよ。」


「まあ、お前のいうことも一理ある。」


「おっさんに認められてもうれしくないけど、一応言っとく、ありがとう。」


「おう。」


「・・・」


「・・・」


「あっ、見ておっさん。朝日。」


「綺麗だな。」


「うん。」


「・・・」


「・・・」


「少女よ、俺は今朝日を浴びて思考がクリアになっている。いわゆる賢者モードだ。」


「キモ、くたばれ。」


「それで気づいたんだがよ。なんで俺らが飛び降りなきゃいけねえんだ?」


「どういうこと?」


「俺もお前も被害者じゃね?」


「あっ!確かに。」


「じゃあ、結論は一つだ。」


「うん!」


「「あいつらが死ね!!」」

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