3度も負けた上級国民、ニッポン人の鉄拳制裁を受ける
補給路を奪還したその日の夕刻。
城内は救い出された食料を運び込む兵たちで賑わっていた。
だが、その空気をぶち壊す怒声が響く。
「馬鹿者ども! なぜこんなことになった! 全てお前たちの怠慢のせいだ!」
広場の中央で、絹の外套を羽織った中年の男が、兵士たちを威圧していた。
この街を治める領主代理――王都から派遣された貴族、グラディオス卿だ。
戦場に出ることもなく、兵の訓練も補給も後回しにした張本人。
今回の劣勢も、彼が私腹を肥やすために防衛費を削った結果だった。
「我が身を守るのは私の役目ではない! お前たち兵が全てやれ!」
「戦えない? なら死んででも時間を稼げ!」
兵士たちの目が伏せられ、歯を食いしばる音が広場に満ちる。
その輪の向こうから、ゆっくりと特攻兵が歩み出た。
「……おい」
グラディオス卿が振り向く。「なんだ貴様は! 下賤な傭兵風情が――」
その言葉を言い切る前に、
ドゴッ
鈍い音が広場に響いた。
特攻兵の拳が、貴族の顎を正確に捉えていた。
次の瞬間、グラディオス卿の身体が宙を舞い、十数メートル先まで吹き飛んでいく。
地面に転がった彼は、外套を土まみれにしながら動かない。
「……あいつ、死んだか?」と兵士の一人が呟く。
「唾つけときゃ治るだろ」特攻兵は何事もなかったかのように言った。
その背後で、アッツ島の男が肩を竦める。
「口だけの指揮官は要らねぇ。士気が腐る」
硫黄島の将は低く笑った。「この街の統治、これで少しはマシになる」
占守島の守将は無言で頷いた。
兵士たちは一瞬呆気に取られていたが、次第に笑いが漏れ始めた。
「……いいぞ!」
「誰も言えなかったことをやった!」
「これで気持ちよく戦える!」
その笑い声はやがて広場全体に広がり、城内の空気を再び熱くした。