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最凶ニッポン人の補給路奪還作戦

昼前。

 城門の見張り台から、慌ただしい声が響いた。


「西門前の補給路で襲撃! 運搬隊が包囲されてる!」


 城壁の上から見れば、二百メートル先の土道で、十数台の荷馬車が魔族の群れに囲まれていた。

 荷台には麻袋や樽――城の数日分の食料だ。

 運搬兵たちは必死に槍を振るっているが、訓練も浅く、じりじりと押し込まれている。


「駄目だ、あれじゃ持たない……」

「外に出たら全滅だ!」

 現地兵の顔色は、朝の活気を取り戻したはずなのに、再び恐怖に染まった。


 その瞬間、城門脇にいた特攻兵が剣を肩に担ぎ、ニヤリと笑った。

「――行くぞ」


「待て、外は危険だ!」門番が制止する。

 しかし占守島の守将は既に槍を手に、硫黄島の将は油壺を背負い、アッツ島の男は刃を研ぎながら歩き出していた。


 城門が開ききるより早く、四人は地面を蹴った。

 距離百メートルを一気に詰める。


「撃て!」魔族の指揮官らしき影が吠える。

 矢が雨のように降るが、特攻兵は前傾姿勢で突っ切り、盾代わりの剣で弾き飛ばす。

 占守島の守将は、進路を邪魔する敵を槍ごと地面に縫いとめ、隙間を作る。

 アッツ島の男は、刃こぼれした剣であろうと関係なく、敵の首を刈りながら突撃。

 硫黄島の将は油壺を敵陣に叩きつけ、火矢で一気に爆炎を上げた。


「ひ、ひぃっ!」魔族の前列が爆発に怯み、陣形が乱れる。

 その隙を、特攻兵が正面突破。

「荷馬車を動かせ!」と叫び、運搬兵を背中で庇いながら、迫る魔族を切り伏せる。


 占守島の槍が横薙ぎに敵兵を薙ぎ払い、アッツ島の男がそこに飛び込み、逃げ惑う敵の背を斬る。

 硫黄島の将は爆煙の中、背負っていた綱で荷馬車を繋ぎ、全てをまとめて城門の方向へ引きずり始めた。

 運搬兵が驚愕の声を上げる。

「ひとりで……馬車四台分を!?」


「唾つけときゃ治る程度の筋肉痛だ」硫黄島の将は笑い、力任せに車列を動かした。


 十分も経たぬうちに、魔族の群れは半数以上が地に伏し、残りは森の奥へ逃げていった。

 四人は何事もなかったかのように荷馬車を城内へ押し込み、門が閉じられる。


 唖然とする現地兵に、特攻兵が肩越しに言った。

「これで三日分の飯は確保だ。……あとは戦うだけだろ?」


 その言葉に、城内の空気が震えた。

 誰もが四人を見て思った――

 この人たちは、本当に死なない。

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