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ニッポン人、魔王と激突す



 魔王の瞳は深い闇のように冷たく、声は戦場全体を震わせた。

「幾千の魔族を斃し、異世界の兵をも圧倒したか……だが、この私を前にしては塵に等しい」


 その言葉と同時に、漆黒の魔力が渦を巻き、四方から雷と炎が襲いかかる。

 特攻兵は叫びながら突き進む。

「散開しろッ!」


 占守島の守将が槍で雷を受け流し、硫黄島の将が爆薬を投げて炎を相殺する。

 アッツ島の男は魔王の背後に回り込み、一閃を浴びせるが、厚い魔力障壁に阻まれた。


「硬ぇな……!」

 魔王は不敵に笑う。

「我が身を裂ける者など、この世に存在しない」


 しかし特攻兵はニヤリと笑った。

「存在しない? じゃあ……作るまでだ!」


 4人は視線を交わし、迷いなく動き出す。

 占守島が魔王の正面から突き、槍の連撃で視線を釘付けにする。

 硫黄島が左右から爆煙を発生させ、魔王の周囲を覆う。

 その間にアッツ島が足元へ斬撃を叩き込み、魔力障壁を一瞬だけ揺らす。


「今だ!」

 特攻兵が懐から血塗れの軍刀を抜いた。

 かつて本土防衛の最前線で振るわれた、彼の魂そのもの。

 全力で踏み込み、渾身の一撃を魔王の胸へ――。


 轟音と共に、魔力障壁が砕け、刃が肉を裂く感触が伝わる。

 魔王は驚愕の表情を浮かべ、血を吐いた。

「……何者……だ……?」


 特攻兵は短く答えた。

「ニッポン人だ」


 次の瞬間、刃が心臓を貫き、魔王の巨体が崩れ落ちた。

 漆黒のマントが地面に舞い落ち、戦場は静まり返る。


 その沈黙を破ったのは、現地兵たちの歓声だった。

 4人は互いに無言で頷き合い、振り返ることなく城門の外へ歩き出した。

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