ニッポン人、魔王の最後の策を阻む
処刑部隊全滅の報告が、魔王城の謁見の間に響き渡った。
玉座に座る魔王は、しばし無言でその報告を聞いていた。
やがて、冷たい声で言う。
「……四人のニッポン人。奴らをこのまま放置すれば、我が千年の支配は崩れる」
重臣の魔族たちは顔を青ざめさせた。
「陛下、我らの精鋭はすでに……」
「知っている。だからこそ、最後の手を使う」
魔王は立ち上がり、玉座の奥の封印扉を開く。
そこには、異世界と異世界を繋ぐ巨大な魔方陣があった。
魔王は血を滴らせた手をその中心に置く。
「召喚するのは……神々の牢獄に封じられた古き戦士たち。
異世界人でも魔族でもない、戦だけを生きた怪物だ」
魔方陣が紅蓮に輝き、黒煙が噴き上がる。
その向こうから、巨大な影が幾つも現れ始めた――。
その頃、前線の野営地。
特攻兵は本部に集まった仲間と地図を広げていた。
「魔王が動いた……最後の決戦だ」
占守島の守将が口を開く。
「城を叩くには、この残存戦力じゃ心許ない」
「いや、逆だ」特攻兵は口角を上げる。
「敵は連敗続きで士気が下がってる。今攻めれば、魔王の策を潰せる」
アッツ島の男は静かに頷く。
「……なら行くか。俺たちが戦場を終わらせる」
硫黄島の将は口元を引き締め、短く言った。
「次は……勝って帰るだけだ」
その夜、月明かりの下、ニッポン人四人と人族連合軍は魔王城へ向けて進軍を開始した。