表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/29

ニッポン人、処刑部隊を撃破す



 湿地の泥に義足の戦士が足を取られた。

 その瞬間、特攻兵の号令が戦場に響く。

「今だッ!」


 硫黄島の将が槍を突き込み、義足の戦士の膝関節を砕く。

 金属音と共に片足が完全に機能を失い、巨体が泥に沈んだ。

 その隙を逃さず、現地兵が縄で絡め取り、動きを封じる。


 一方、占守島とアッツ島の二人は巨人の周囲を回り込み、絶え間ない攻撃で注意を引きつける。

 巨人は大剣を振るい続けるが、その指揮の声が他の隊員に届かなくなった。


「……指示が途切れた!」

 義手の戦士二人の動きが目に見えて鈍る。

 特攻兵が地を蹴り、片方の義手を肘から斬り飛ばした。

 アッツ島の男はもう一人を背後から抱え込み、首を一撃で断つ。


 残ったのは巨人ただ一人。

 しかし、もはや部下は倒れ、包囲は狭まっていた。


「……見事だ。だが、俺は倒れん!」

 巨人が雄叫びを上げ、大剣を振り下ろす。

 その刃を、特攻兵と占守島の槍が同時に受け止め、アッツ島が脇腹に渾身の一撃を叩き込む。

 硫黄島の将が追い打ちの槍突きを胸板に貫いた。


 巨人はしばらく立っていたが、やがて大剣を地面に落とし、ゆっくりと膝をつく。

「……ニッポン人……その名……忘れぬ……」

 そう呟き、崩れ落ちた。


 森に静寂が戻る。

 現地兵たちは歓声を上げたが、4人は静かに敵の亡骸を見下ろしていた。


「……強かったな」

「米兵と同じだ。敵でなければ、共に戦いたかった」


 その言葉は、戦士としての純粋な敬意だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ