ニッポン人、処刑部隊と激突す
夜明け前、北西戦線の森は不自然な静けさに包まれていた。
鳥の声も、虫の羽音もない。
特攻兵は背筋を走る冷たい感覚に眉をひそめる。
「来るぞ……全員、戦闘配置だ」
その声と同時に、森の奥から鉄の足音が響く。
やがて現れたのは、漆黒の甲冑に身を包んだ巨人と、義手・義足の四人の戦士。
彼らの瞳は、米兵のような虚ろさではなく、研ぎ澄まされた殺意を宿していた。
「標的、確認」
巨人の低い声が森に響く。
次の瞬間、義足の戦士が信じられぬ速度で間合いを詰め、硫黄島の将の胸元へ刃を振るう。
将はとっさに槍で受け止めたが、衝撃で地面に足跡がめり込む。
「……重ぇ」
アッツ島の男は義手の戦士と剣を交える。
金属の義手から放たれる打撃は、鎧越しでも骨を砕きかねない威力だった。
一方、占守島の守将は二人同時に相手取っていた。
連携は正確無比、息の乱れもない。
「……これが洗脳なしの異世界精鋭か」
その口元に、戦士としての笑みが浮かぶ。
特攻兵は巨人と対峙していた。
振り下ろされる大剣を紙一重で避けるたび、地面が抉れ、土煙が上がる。
「おいおい……こりゃ米兵よりも手強ぇな」
交戦から数分、双方に深手はない。
だが、日本兵たちは悟っていた。
――この敵は、真正面からの力押しでは倒せない。
巨人が剣を引き、わずかに間合いを取る。
「……実力は認める。だが、任務は遂行する」
その声に、処刑部隊の五人が一斉に陣形を組み直した。
特攻兵は仲間たちに短く叫ぶ。
「次が本命だ、気ぃ抜くな!」
夜明けの光が差し込み、両軍が再びぶつかり合う――。