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ニッポン人、二千の米兵を圧倒す



 翌朝、ベルダン北西の丘陵地帯に異様な軍勢が姿を現した。

 迷彩服、ヘルメット、防弾ベスト。

 手にはM16やM4、腰にはグレネード。

 それは、この世界ではあり得ない兵装――二千名の米兵だった。


 魔族の鼓笛が鳴り響き、米兵たちは無表情のまま前進を開始する。

 その瞳は焦点が定まらず、命令以外の動きを許されぬ人形のようだった。


「……全員、洗脳されてるな」

 占守島の守将が唇を噛む。

 硫黄島の将が鼻で笑った。

「銃を持ってりゃ勝てると思ってやがる」


 特攻兵は短く息を吐き、現地兵に指示を飛ばした。

「距離を詰める。奴らの強みは射程だ。懐に入ればただの的だ」


 銃声が丘陵を揺らし、弾丸が雨のように降り注ぐ。

 しかし四人は左右に散開し、ジグザグに駆け上がる。

 占守島の槍が米兵の前列を薙ぎ倒し、硫黄島の将は煙幕を展開。

 アッツ島の男はその煙を利用し、敵陣中央に突入して銃手を両断する。


 現地兵たちも続き、混戦へと持ち込む。

 至近距離では、米兵たちは銃を有効に使えず、訓練通りの動きができない。

 洗脳された頭では、予測不能な近接戦闘への対応が遅れるのだ。


 特攻兵は敵の弾幕を掻い潜り、指揮官らしき米兵を殴り倒す。

 その瞬間、指揮系統が乱れ、米兵たちの動きはさらに鈍った。


「今だ、押し切れ!」

 現地兵の鬨の声が丘を覆い、米兵の陣形が完全に崩れる。


 わずか半日で、二千の米兵はほぼ全滅。

 生き残った者たちは武器を捨て、茫然と座り込んだ。


「追撃はするな」

 特攻兵の声に、現地兵が動きを止める。

「戦意を失った奴は殺さない。それが俺たちの戦だ」


 その光景を遠くから見ていた魔族将校は、恐怖で体を震わせた。


「……二千の米兵を、四人が……」


わずか半日で、二千の米兵はほぼ全滅。

 生き残った者たちは武器を捨て、茫然と座り込んだ。


「追撃はするな」

 特攻兵の声に、現地兵が動きを止める。

「戦意を失った奴は殺さない。それが俺たちの戦だ」


 煙が晴れた丘の上で、4人は立ち尽くす米兵たちを見回した。

 占守島の守将が静かに言う。

「……銃を持ち、洗脳されながらも、奴らは最後まで崩れなかった」


 硫黄島の将は油壺を背負い直し、口元を引き結ぶ。

「まともな状態で戦ってたら、俺たちだって危なかった」


 アッツ島の男は剣を納め、ゆっくりと敬礼した。

「同じ戦場で死線をくぐった者には、敬意を払う。それが戦士ってもんだ」


 特攻兵も無言で米兵たちに頭を下げる。

「……洗脳さえなければ・・・米兵もきっと人族側にたったはずだ。」


 現地兵たちはその光景に息を呑み、やがて小さく頷いた。

 敵味方を越えた敬意――それはこの日、戦場に立ったすべての者の胸に刻まれた。


 その光景を遠くから見ていた魔族将校は、恐怖で体を震わせた。


「……二千の米兵を、四人が……しかも、その上で敬意を示すだと?」

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