第3章 ニッポン人、米兵と再会す
グラスト要塞から逃げ帰った魔族たちは、恐怖と共に報告を持ち帰った。
その報告を聞いた魔王は、玉座で長く考え込んだ後、薄く笑った。
「力には力を――同じ世界から来た者をぶつけるのが一番だ」
数日後、要塞の謁見の間。
漆黒の鎧を纏った魔王は、日本兵4人を挑発するため、ある“客人”を呼び寄せた。
現れたのは、迷彩服に身を包んだ屈強な男たち。
肩章には星条旗、胸には名札――米兵だった。
「貴様ら……アメリカ兵か」
特攻兵の目が鋭く光る。
アッツ島の男が低く唸る。
「ここで何をしてやがる」
魔王は楽しげに答えた。
「彼らもまた貴様らと同じ、別の世界から召喚された戦士だ。
だが、彼らは力と富、そして故郷に帰る術を約束され、我に忠誠を誓った」
米兵たちの目は冷たく、どこか虚ろだった。
占守島の守将が眉をひそめる。
「……洗脳か」
硫黄島の将が低く呟いた。
「“勝てば帰れる”とでも吹き込んだんだろう」
魔王はわざとらしく肩をすくめた。
「同じ時代の戦士同士、戦う価値があると思わぬか?」
特攻兵は一歩前へ出た。
「……米兵かどうかなんざ関係ねぇ。俺たちの敵は、今、ここに立つ奴らだ」
その瞬間、魔王は不敵に笑い、米兵たちに命じた。
「次の戦場で、彼らを討ち果たせ」
こうして、“同じ世界の戦士”同士の、避けられぬ激突の幕が上がった――。