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ニッポン人、魔族の将軍を野戦で討つ

バルゴ砦の陥落からわずか三日後。

 北西の平原に、黒い軍旗が林立した。

 魔族軍二千。

 その中心には、鱗付きの黒鎧を纏った将軍ドレグザが馬上から睥睨していた。


「人間ごときが砦を奪ったと聞いた時は笑ったが……愚かだ。

 野戦での我らの力を知らぬらしい」


 ベルダン側は千。

 数では劣るが、砦を落とした勢いと士気は高い。

 その先頭には、当然のように四人の“ニッポン人”がいた。


「正面からぶつけてくるとはな」

 特攻兵が口元を歪める。

「上等だ。なら、正面から叩き割る」アッツ島の男が剣を肩に担ぐ。


 開戦の角笛が鳴り響き、両軍が動き出す。

 弓兵の矢が空を覆い、平原は土煙に包まれた。


 その中を、四人は先陣を切って突進した。

 占守島の槍が魔族騎兵を馬ごと貫き、道を作る。

 硫黄島の将は油壺を投げ、火矢で敵弓兵陣を焼き払う。

 アッツ島の男は剣を振り下ろし、敵の盾ごと両断した。


「将軍を見つけた!」

 特攻兵が叫び、四人は一点突破を開始する。

 敵の包囲が迫るたび、槍が、刃が、炎がそれを切り裂き、前へ、前へ。


 やがて、黒鎧の将軍ドレグザが姿を現した。

「貴様らが“ニッポン人”か! 今日、この首を戦利品とする!」


 巨剣がうなりを上げる。

 しかし特攻兵は身をかわし、逆袈裟に斬り上げた。

 アッツ島の男が背後から膝を斬り、占守島の槍が脇腹を貫く。

 最後に硫黄島の将が油を浴びせ、火矢を放った。


 炎の中、ドレグザは咆哮を上げて倒れ、動かなくなった。


「――敵将、討ち取った!」

 その声が平原に響き、人族軍が一斉に押し出す。

 魔族軍は総崩れとなり、北西戦線から撤退していった。


 しかし、特攻兵は追撃命令を出さなかった。

「戦意を失った奴は殺さない。それが俺たちだ」


 その姿を見た逃げ延びた魔族たちは、ただ恐怖を抱いていた。


「あれは……死神だ。だが、戦わねば殺さない死神だ」

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