9.朝日 「独白」
主人公は万引きをし、許されない殺人をした。そして、いつものように、憂鬱な夜を過ごす。
それでも、朝日は必ず昇る。憂鬱な自分を鼓舞するように。
罪の意識は拭えない、いつまでも。生きることに対して、僕は罪悪感を感じる。山で寝転ぶ。そしてひたすら上を見つめる。もうだめだろうか。自分はもうあの時、あの頃、あの時には、もうすでに終わっていた。もうだめだ。
ひたすら虚無感に怯えていて、僕はひたすら上を見つめる。その時、雨が降り積もった。顔が雨に濡れても、僕は上を見つめる。運命だろうな。運命だ。
僕はひたすら上を見つめる。そしていつの間にか僕は塩辛い涙を吐き出すように流れている。
なぜだろうか。この世が最低で最悪だと、わかっているのに。わかっているのに。この世は最低で最悪で、生きている意味がわからない、神もいない、でも、死にたくないと嘆く。
死にたくない、死にたくない、死にたくないなんて嘆く。
いつも何で生きているんだろうと、問く。僕は答えず冷たい顔のまま。なんで死にたくないの?と、問く。僕は答えず冷たい顔のまま。
もう自殺してもいいんじゃないか。もうだめだろう。
僕は嫌だなんて答える。
僕は人を殺したのに、のうのうと生きている。僕は人を殺した。もう何も考えられない。ずっと答える。ずっと、ずっと何も変わらず、考えられない。この独白は、僕の精神だ。
もう何も考えられない。びっしょり濡れたぼろい服。万引きして手に入れた、落ちていた赤いリンゴは鮮やかに濡れた。
僕の顔は汚く濡れた。鮮やかに濡れることはできないんだなって、気づいた。
もう駄目なんだろうな。僕は汚れた。赤いリンゴは今も輝いて見える。僕は赤いリンゴを見つめる。倒れたまま。ずっと見つめる。
気付くと夜になっていて、熊が怖いので、人里へ向かった。そして人里の道の端っこで眠る。
それでも眠れない夜が続いている。そして眠れないまま、夜を迎える。
でも、朝日はかならず昇る。人生に希望を見出せるように。
朝日は昇る。
9話目で山場ですね。