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8.罪と、嘆き

罪の意識に耐えきれない主人公。人殺しをした主人公は付きまとう罪の意識から逃避する。叫ぶ、嘆く。叫べ、叫べ、叫べ、

ーーこの世の残酷さを。

僕は、人を殺した。何もかもを。僕は、地主、軍人を殺した。僕が、殺した。

飢えを凌いで、必死の思いで、食べ物を探した。罪の意識から逃げるためには、何か動かないと、罪の意識に駆られそうで、耐えきれないからだ。もう心が悲鳴を上げていて、叫んでいる。必死に叫びあがる。狭い、暗い、暗い、怖い。叫べ、叫べ、叫べ。

僕が殺した、殺した、殺した。何度叫んでも事実は変わらない。

結局山には、食料などなかった。それもあるが、もはや体力はなかった。人里に向かおう、何かあるかもしれない。僕は必死に、山を下ろうとした。下ろうとしたら、転んだ。転び、頭が地にぶつかり、天をじっと見上げた。ふと思う。

ーああ、これが運命か。

人を殺した運命。運命に過ぎなかった。全ては運命に委ねられていて、僕はそれに踊らされているのだ。全ては運命で出来ている。

運命には抗えず、人は運命の奴隷だ。これが僕の、

ー運命なのか。

運命は、僕を、どん底に突き落としたんだと気付いた。運命は、当然の帰結であり、物語だ。僕は人を殺した、だから、罪を受ける。無から始まって、無で終わる。結局神秘にこだわらなくとも、帰結は、単純明快なのかもしれない。ああ、裁きを受けるのだろうか。そうだ、これが人殺しの、

ー運命なのか。

運命か。


人里へ、とても憂鬱な気分で、死んだ目をして、地を睨みつくすような恰好で、来た。楽しそうに話す若者、泥酔して倒れているお爺さん、酒を交わし、相談に乗る輩もいた。

ー僕もそんな奴でいたかったな。

僕はなれなかった。普通にも当たり前にもなれなかった僕は、人を殺した。なりたかった。なりたかったんだよ。ああ、なりたい!今すぐにでもなりたいんだよ!普通でいたかった。なりたかった、失った、あの日の僕を。人間に、なりたい。ぼくは、なりたい。普通に。

ああ、なりたい!なりたい!

もう一回、人間になってみたかったな。この世界に、希望を持ちたかった。

僕は自然と、涙を流す。でも、もう駄目なんだよな。

人を殺したから。許されないことをした。

僕はあふれる涙を、拭い、決意をした。


万引きをする。犯罪を積み重ねる、万引きをしたって、殺人とは罪の重さが違う。だが、それでも、僕にのしかかる重荷は倍になっていく。もう耐えきれないのに。許されない。駄目だ、死ぬ!耐えきれぬ!

僕は人を殺した!盗んだ!人を奪った!僕は、

屑だ!殺すなら今すぐ殺せ!

と叫びたいところに、僕の中の卑怯者は、

ーやめろ。ずっと檻の中で暮らすんだぞ。

と、抑える。そしてまた、苦しむ。息が途絶えそうだ。心臓の動悸がする。苦しい。僕は人里から、また逃げた。罪の意識から逃げる。逃げる。逃げる。

ーあああ!殺すなら殺せ!ふざけるな!ふざけるな!

何に怒っているのか、自分にもわかっていなかった。


もうだめだ。耐えられない。罪に。

僕は山へ向かう。人気がないところで、僕は、苦悩する。


絶対ハッピーエンドにするので、安心してください!

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