7.決して意味はない、その殺人
人は人を殺し、見下し、憎しみ、共に歩もうとする。
主人公は、人を殺した恐怖と向き合い、この人生に希望を見出せるのかーー
今回はそんなお話。
人生はお金がないと、何もすることができない。何かをするにもお金がかかる。残酷なことに、僕はお金がない。お金がないから、暮らすことができない。暮らすことができないのなら、僕には権利がない。ふざけないでほしい。お金がないから、暮らせない、生きることも、何もできない。僕がドアを開くと、地主が立っていた。
「いい加減にしろ!さっさと払いやがれ!家賃払え!賃料払え!って毎回言っているよな!」
僕はため息をつく。
「絶対今月中には、払うので。絶対に。」
「いつもそう言っているよな!もう立ち去ってくれ!」
「いや、それは困ります!本当にお願いします!お引き取りを。」
僕は土下座をする。
「立ち去れ!くそ野郎!」
「金がないんです・・・」
地主は間髪入れずに、
「立ち去れ!」
と咆哮する。
そして僕の顔面に思いっきり殴りかかった。あまりの痛さに僕は泣きじゃくった。まるで童のように。僕は倒れ、二階から一階まで、落っこちてしまい、その衝撃で、足を折った。脳が痙攣する。僕は、気づいたら、そこにあった硬い棒を拾っていて、そして気づいたら、地主の前に立っていた。棒を地主の脳天まで振りかざし、
「死ね!死ね!さっさと、消えろ!」
と叫び声を上げながら、何度も振りかざした。だが地主は脳に血しぶきがあがりながらも生きていて、地主は言う。
「なかなか人間は死なないだろう?これがお前の最初の殺人だ。俺は一生付きまとう。お前の脳内に。一生だ。苦悩するがよ・・」
地主が喋っている途中、僕は、死にそうな地主の顔の脳天に、棒を打つ。地主は死んだ。まだ事件現場からは誰もいなかった。田舎でよかったと思う。僕は何も考えることができず、手が震える。震える手で、僕は穴を必死に掘る。死体が僕の手に乗る。
「くそ!」
と言いながら、震える手で、掘る。ああ、殺してしまった。ああ!恐ろしい。恐ろしい。
僕は斧を必死に穴の中に埋め、血しぶきの上がった服を井戸に捨て、服を新しく変えた。ああ、殺した、殺した、僕が殺した!許してくれ!許してくれ!頼む!
手が必死に震える!震える!
「ああああ!」
僕はうなり声を上げて、ひたすらに走る。
走る。痛い。足が痛い。僕は思いっきり転んで、また上がっていた。
「うわああああ!」
ひたすら走る。罪の意識から逃げるために。殺した地主、殺した軍人、殺された軍人。殺した、殺した。あああ!消えろ!
手をじたばたさせる。震える、心臓の鼓動さえも!あああああ!殺した、殺した。僕が殺した。自分で、殺した。山までを光の如き速さで、駈け上った。
落ち着くまで座っていると、いつの間にか僕は眠っていた。
気づくと、森と数々の人に囲まれていた。そこには地主もいた。彼らはいう。
「人殺し!」
「何の意味もない、糞にたかる蠅みたいに。」
「ろくでもないやつだ。」
「消えたほうがいいんじゃない。」
「意味もない。」
「消えて。」
「救いようのない、悪魔だね。」
「殺したなら、死刑にすべき。」
「お前は人を殺したのに、なぜ生き残っているの?」
「教えて。」
「教えて。」
「何で生きているの?」
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
「ごめんなさい・・・・・」
気づくと僕は泣いていて、1分ほどすると、これが夢であったことに今更気づいた。だが、まだ聞こえている・・・
「なぜ生きているの?」
僕は、その問いに答えることが、できなかった。
次回は「殺した恐怖と虚無感(予定)」です。さようなら。