5.静まりと波紋、そして、罪と罰 「独白」
主人公は、幻聴と幻覚に怯え、絶望し、PTSDになってしまう。それでも、主人公は、光を求めなければならない。
日露戦争は収束し、日本軍に軍配が上がる。日本軍は勝利のファンファーレを受けた。そして今、僕は帰還する船に乗る。酒に溺れる者や、ほっと胸に手をおき、家族に会いたいと願う者がいた。僕は違った。僕には家族なんていやしない。きっと誰も「お帰り」なんていってくれない。悲しさに溺れるだけだ。それもあるが、僕はもっと罪の罪悪感に溺れた。戦争と定義したとしてもそれは、
ー人殺しに過ぎない。
僕は人を殺した。何人もの命を。汚れた、いや汚れていなくても人は人で、殺してはならないはずだ。僕は人殺しだ。すれ違うために、彼らは言うのだ。
「人殺し!」
と。僕は戦争で、仕方なく殺したんだぞ。お前らは、黙っていろ!お前だって殺したくせに!と心の中で突き返す。すると、彼らは、お前は馬鹿なのか?如何なる場合においても人は人を殺してはならないという。
じゃあ僕はどうすればいいんだよ!少なくとも、どうすればよかったんだよ!っていうと、嘲笑うような目を見ていう。
僕は気味が悪くなって、海に吐き出す。苦悩する。
そして夜、日露戦争で死んだ彼らが、帰ってきたのだ。彼らは口ずさむ。
「どうして、お前らだけが生き残ったのだ。」
「生きていても何の意味もないお前が、なぜ生き残った。」
僕は、彼らが言った言葉に静まり返って、空気に溶け込んでいく。心臓を針でつつかれる感触であった。僕は頭をこれでもかと、沈めて、抱える。うめき声を出しながら、必死に答えを求めている。亡霊に怯え、部屋を飛び出した。廊下で、出くわす。死んだ彼らに。逆方向にいっても彼らはいた。見つめる。
僕は倒れ、叫び声に似たうめき声を出す。すると、われに返り、一人の軍人が、
「うるさいですよ。」
と注意されると、死んだ彼らの亡霊は消えていて、僕はベッドに戻り、死んだように眠った。
でも僕は未だに苦悩している。僕は生き残った。彼らは死んだ。僕は彼らの死を背負わなきゃいけない。そんな価値ある人生なんて僕にはできない。僕は嫌だ。考えるのも嫌なんだよ、誰か助けてくれ。僕は、何のために生きているんだ。人が死ぬと、僕はいつも生きている意味を忘失する。生きる意味をどう定義するんだろうか。生きる意味が、僕にはわかんなくて、何の意味もない人生を生きるのが馬鹿らしくなっていった。生きる意味を問う。僕は首をかしげる。なんなのだろうか。生きる意味を、光や希望のためと、定義するならーーー
光がない僕は、どうすればいいんだ。
帰路につき、勝利記念に、ファンファーレが届く。でも僕には、ゆがんだハーモニーに聞こえた。
そして僕は苦悩する。いつまでも。いつまでも。生きる意味を唱えるための篝火は、最初からなかったんだよ。
実は、25話目以降は考えていなくて、長考中。暗いですが、頑張ってください。
6話目の名前はまだ決まっていません。
毎日投稿します。