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2.日露戦争前夜、そして、開幕

ついに始まったーー日露戦争という地獄が。壮絶な日露戦争前夜から、開幕までを、書きました。

主人公は恐怖と向き合わなければ、ならない。

※この作品には、戦争・死・鬱的表現・絶望を描写するシーンが含まれています。

読者によっては不快に感じる可能性がありますのでご注意ください。

光のない世界で、それでも生き続けるとはどういうことか――それを描こうとした記録です。

時は数年が経ち、僕は日露戦争に出兵した。新政府軍が立ち上がったあと、拡張主義に陥り、ついには日本とロシアで、戦争が始まった。僕は徴兵させられた。僕は徴兵の手紙を見た途端、小刻みに震えあがったのを覚えている。僕は途端に死の恐怖にあった。もう明日には準備し、出兵しないといけない。出兵したら、死ぬだろう。いや、死なないかもしれないが、それでも、死ぬ可能性は確実に上がる。死の恐怖は収まらず常に続いている。死の恐怖は収まることを知らない。死んだら何も残らなくなる。死んだら全て終わって灰になるんだ、という思いが拭えなくなる。そうだ、この世界にありがとうって伝えとかないと。どうせ死ぬなら、何か伝えとかないと。友達に。

僕はそう思った。だが、恐怖で体が上がらず、われながら臆病だと、悟った。僕は、臆病だ。何か夢を見る。


僕には家族がいない。見捨てられた。明治初頭のころに、家族に捨てられて、楽しかった思い出なんて最初からなかったし、僕には希望がなかった。僕は生まれながらに不幸だった。気づいたら、捨てられてて、必死に泣いたんだけど全く意味がないってことに気づいた。山奥に捨てられたんだ。理不尽だ。

努力は大切だなんていうけど、僕は努力する資格がないんだよ、ふざけるなよ!って殴りたくなる。じゃあ、僕が、今も、飢えを凌いでるのは何?ふざけるな!

僕は、時々ごみを漁って、時々虫を生で食べて、糞でも頑張って食ったこともあったんだ。でも、僕は、犯罪はしなかった。でもなんとか働くようになってから、なんとか食いつないでいけている。でも、僕には何もできない。実質的に、幸福にはなれない、僕は多分幸福になる権利を持っていないんだろうな。僕は、希望がないんだろうな。

僕は人間として認められていないんだろうな。希望、そんな甘い言葉言わないでくれ。

言わないでくれ。頼む。言わないでくれ。


「言うな!」

僕は、飛び起きた。とんでもない悪夢を見た気がした。ぼろい部屋に目が付く。なぜだろうか。さあ、僕は知らない。僕は涙を流した。悲しかった。なぜかひたすらに悲しかった。なんでこういう悲しい出来事を思い出すんだろう。それに、もう朝であることに僕は深く絶望した。

結局僕は何もできなかったじゃないか!なんで、最後の最後で僕は躓くんだ!ああ、最低だ!ああ!

僕は出兵する。残念ながら、だれとも別れを言い出せなかった。

                 

日露戦争で、僕は船に載せられた沢山の人々を見た。誰しもが、明るい表情は決してしなかったし、僕もそれと同じような血相をしていた。誰しも、皆鬱病かのようだった。

ああ、終わる。ずっと頭の中でぼやく。いや、声にも出している。

「ああ、終わる。終わるんだ。そうか。終わるのか。」

当然生き残る可能性もある。けど僕が行くのはもっとも危険な場所らしい。

僕はずっとぼやく。何度でも、何度でも。そして時々揺らして、恐怖に耐え抜く。

死ぬのか。死ぬのか。生きたいけど、生き残れなさそうだ。やっぱり死ぬのか。死ぬのか。死ぬのか。ほんの一瞬が何時間かのように感じられた。そして夜、仰向けになって寝れない夜を過ごした。僕は、死に耐えきれない。怖い。まあそういうもんなのか、と考えてから、疲れ始めたのか、ようやく眠れた。


ついに着いたようだ。日露戦争の開幕だ。

「旅順についたぞ。」

地獄を僕は見ることになる。




次回は、「蜘蛛と地獄(予定)」です。お楽しみに!

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