12.絵
光を、主人公は信じたいと思えるようになる。
僕が手帳を書いた後、誰かが、玄関のドアをノックする音が聞こえた。誰だろうか。
だが僕はその光景を見て、狼狽えた。若い男女が、倒れている老人を持ってきて、
「道端で倒れていたんです。上がってもいいですか」
と、言ってきたため、頭が真っ白になりつつも、僕は頷いた。
ーそんなまさか。嘘だ。信じられない。
僕は老人をベッドまで運ぶ手伝いをした。何もかもが信じられなくなっていた。
僕が老人をベッドまで運んだあと、若い男女に会釈しながら、僕が医者を呼ぶと、遅れてきた医者はこういった。僕は水を飲み、コップを手で握る。
「もうかなり危ない状態です。」
僕は持っていたコップを落とし、割った。そんな馬鹿な。もう、
ー死ぬのか。
などと嘆いている暇もなく、医者は、
「すぐに、家族を呼んであげてください。」
と静かにいった。
僕はそうかと、自分で言いつつも、老人の家族については知らなかった。
ー家族はどこにいるのだろうか。
手あたり次第、連絡手段を探す。家族がどこにいるか調べないと、電報局に伝わらないからだ。
暫く急いで、老人の家を物色していると、ある手帳があった。
何か手がかりがあるかもしれないと、手帳を開いた。日記のようだった。
5月7日
人は孤独のまま突き進む。私には、最初から、生きる権利がなかった。貧乏人だった。どうやら、この世界はそういうルールでできていて、それもごく自然と進んでいる。
心の痛みだ。私は人を殺した。
この世界に私は睨みつける、その目は疑いと、憎しみであふれていた。
でも世界は何も言わない。なぜだろうか。
5月13日
私はなぜ生きているのだろうか。もはや誰からも必要とされなくなったときに、私は問い直す。
心の痛みは途絶えずに。
私は失望した。
5月23日
今日は誕生日。でも誕生日なんて見せかけにすぎず、孤独な夜と眠れない夜を過ごす。
家族がいない。とっくに捨てられていた。
5月27日
久しぶりに人里に出た。眩しい。目が焼かれるような痛さに耐え凌ぎながらも、私は人の顔を見た。
自分もそうでありたかった、と自分はどこかで叫んでた。ああ、悲しい。(手帳には、涙の汚れが残っていた。)
6月3日
ある絵に見惚れた。「光妖」という絵だった。光妖は、闇の中から、灯している。
光妖によって光を照らしている。いつまでも、いつまでも、光を照らす太陽のようだ。
夜は必ず終わって、朝日が必ずやってくるんだ。
悲しい夜に付きまとう暗闇も、月も、必ず、明るくなる。目を焦がすほどの太陽が、光が、もはや失望して、存在しないなんて嘆いた、あの幻の、光が。
光はやってくるんだ。
光は必ずやってくる。
そう言っているような気がした。
僕は光妖を探していたことを思い出した。
僕は、中に入っていた写真が落ちた。光妖を取っていたようだ。
「いい絵だ。」
光が見える。そして、僕が呟いたたった一つの言葉に、
何か、答えがあると思った。
光があると思った。
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