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1.光を見つける住人たち~「光探」

光を守る住人「光妖」を見つける、若者は、絵に希望を見出している住人に出会う。歴史小説かつヒューマニズムをえぐる、小説でございます。※この作品には、戦争・死・鬱的表現・絶望を描写するシーンが含まれています。

読者によっては不快に感じる可能性がありますのでご注意ください。

光のない世界で、それでも生き続けるとはどういうことか――それを描こうとした記録です。

ある噂話でこんな話が飛び交った。光妖ーヒカリコウだ。光を守る妖らしく、光妖に関する絵は、江戸時代以来もっとも売れた絵だと評判らしい。光妖は、金色の狐らしい。著者は身を何のためか、隠しているらしい。だが、誰かが、「光妖をこの目で見た。」などと言い出し、僕は好奇心で、探すことにした。これが、すべての始まりだった。

光妖の絵の書によれば、

「光妖生きとし今も時折光妖表はし人へ拝む。山頂に表はし拝ぬべし。」

と書かれている。僕は山頂に向かい、山頂に住む住人に「光妖を見ていないか。」などと徘徊するようになっていた。ただ、何度尋ねても無視した人や、なぜか「うるせえ!」と投げ飛ばす人もいたから、あまり治安のいいところではないのだろう。と思っていたのだが。

いつの間にか日が暮れ、野宿になるだろう、と熊を恐れて心配していたのだが、そこに住人が、

「お前さん、一人かい?危ないぞ。ここは人食い熊がそこら中にいるからな。うちにはいりなさい。泊めてあげるからさ。」

住人は、若そうだが、無精ひげを生やした、大人だった。

中に入ると、かなり広い空間が広がっていた。まるで屋敷みたいだ。僕は貧乏な部屋に住んでいたから、興奮を覚えた。

何やら絵を描いているらしい。何やら奇妙な絵や、竜、馬なんかも書いてある。

「絵を描いているのですか。」

僕は聞いてみた。

「ああ、匿名でいろいろ売っておる。何も、事情で匿名じゃないといけないからじゃなあ。」

少し息を住人は吸った。

「あるときのことじゃった。・・・・」

住人は、過去についていろいろ話してくれた。(なぜだろうか?語りたい気分にでもなったのだろうか。)


「儂はのう、旧幕府軍にいた若造だったんじゃ。白虎隊じゃったんだ。」

水を打ったかのように静まり返った。だが、その静まりはすぐに消え去った。

「白虎隊!?・・・白虎隊は、全滅したはずじゃ・・・」

「ああ、儂は、白虎隊から途中で逃げた臆病者じゃったんじゃよ。そして・・」

驚きを隠せずにいた。そして、語っていった。


住人は、白虎隊にいた旧幕府軍だった。(住人が身元を明かさないのも、このためだろう。)新政府軍と旧幕府軍との衝突で、白虎隊は、切腹し、壊滅した、15歳でできた若い軍隊である。白虎隊には、様々な友がいたという。地獄みたいな状況で、彼らは戦っていたのだ。しかも15歳の若さで。消えてった、命があった。

「あいつらは、とても気のいい奴だったよ。そんな奴が、戦争で殺し合わないといけねえなんて、とても、」

「傷ついた。地獄のようだったよ。どうせ負ける会津戦争で、戦わないといけないなんて。悲しかった。15歳だった時に。沢山血を見た。死体を見た。死体を見るたびに、あいつはいい奴だった、あいつもいい奴だったって。泣きじゃくったよ。でも、もったいないから、死体を漁るしかなかった。毎晩恐怖と不安で仕方がなかった。今度は儂の番じゃねえかって。みんな地獄に落ちたような目だったよ。死んだ魚の鱗の目。とっても、」

「地獄だった。」

「庇って死んだ奴もいる。「生きろ!」って叫んだ気もする。」

「結局最後は、切腹した。その時、俺もあっちに行くつもりだったんだ。でも、死にきれなかった。俺はあっちに行く勇気がなかったんだよ。本当に臆病だな、って感じた。でも、敵に殺されるのは、何か嫌だった。たぶん、生への執着なんだろうな。」

その後、住人は、殺されないように生き延びようと、頑張って逃げたという。

「でもな、毎回、聞こえるじゃよ。「どうしてお前だけが生き残った。どうして死ななかったの?」って、亡霊に。」

ただ、住人は、もうだめだと、もう一回切腹を試みてみたとき、だれかに、呼び止められた、という。それが、

「絵の先生だったんじゃ。」

絵の先生は、呼び止めて、

「まだ死んではならぬ!まだ希望はある。だから死んではならぬ!」

と、刀を川に投げ捨て、止めさせたらしい。

絵の先生は、お屋敷を借りて暮らしていた。住人はそこで永居させてもらい、状況を聞いてくれた。かなり面倒見のいい先生だったという。

ひと月ほどたったとき、絵の先生は、

「絵でも、なんでも、書いてみないか?」

住人は絵の弟子が欲しいのだろうと、最初は、お礼のつもりで書いていた。だが、少しずつ絵に、何かを映し出しているように見えた。そう、それは、

「希望・・」だったのである。希望を書くことで、本来自分が望んでいた栄光と平和が、少しでも近づくという錯覚に陥った。


「絵は希望だと思った。だから今、希望を書いている。絵に希望を描くんじゃよ。」

僕は意味がわからなかった。

「意味が分からんじゃろう。でもな、いつか、わかる日が来る。この最低なこの世を肯定する時が来たら、ぜひ、希望を見つけてほしい。」

僕は話題を変えた。

「そういえば、僕、「光妖」を探しているんですよ。見ていませんか?」

「見ておらん。というか、これは嘘じゃよ。まったく最近の若輩者は、すぐ騙される。」

結局、光妖は見つからず、僕はあきらめることにした。




これから一本二日のスペースで投稿できそうなので、頑張ります。


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