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独眼竜記 ―伊達政宗異聞 千年の龍、東北を翔ける―『俺は豊臣の家臣じゃねぇ──逆襲の刻を待つ!』  作者: 《本能寺から始める信長との天下統一》の、常陸之介寛浩
第四章「影は南より来る」

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第三十一話 鷹は南風に乗って

米沢の空に、一羽の鷹が翔けていた。


春を運ぶ南風に乗って北へと向かうその影は、伊達の城に不穏な知らせを届けようとしていた。


「最上より使者、到着──!」


午前の静けさを破るように、城門の報せが響く。


程なくして、城の大広間に通されたのは、

黒紋付の旅装束に身を包んだ壮年の武士だった。


その胸には、最上家の家紋──“九曜”が刻まれている。


「義姫様……お久しゅうございます。

 殿──最上義光様よりの文、お届けに参りました」


義姫の眉がわずかに揺れる。


政宗の傍らに座していた輝宗が「読め」と命じると、使者は膝を正し、巻物を開いた。


『近頃、我が最上家にて内紛の兆しあり。

一部重臣が不穏な動きを見せ、義姫殿の御帰還を以て、

家中の安定を図りたし。早急の帰参を請う』


――最上義光


一瞬、空気が凍りついた。


「……内紛、だと?」


輝宗が目を細める。使者は頷いた。


「義光様は、義姫様の“血筋”と“正しき言葉”をもって、家中を鎮めたいとお考えです」


義姫はその場で即答できなかった。

視線を伏せ、口元に手を当てたまま、じっと沈黙している。


「そのような大義を口にしながら、実の妹を“政略の駒”に戻すつもりか」


輝宗の声には明らかな苛立ちが滲んでいた。


「返答は後日とせよ。伊達は動かぬ──義姫もまた、ここに留まる」


「……心得ました」


使者は深く頭を下げ、静かに下がっていった。


使者が去った後も、義姫は俯いたまま微動だにしなかった。


その姿を、政宗は黙って見つめていた。


(……母上の手が、震えている)


(“最上義光の妹”であることが……母上を縛っている)


政宗は、義姫の背に、かつて見たことのない“影”を見るような気がした。


「母上……」


呼びかけると、義姫はほんの一瞬だけ目を細めた。


だが、次の瞬間には平静を装い、微笑んでみせた。


「何でもないわ、政宗。お前には……関わらせたくないことよ」


「関わらぬことなど、わしにはできぬ。

 伊達を継ぐ者として、そして……母上の子として」


その言葉に、義姫の目が揺れた。


「……まだ、早いわ。お前が知るには」


「遅い、のではないか?」


政宗の声は静かだったが、その奥には確かな“疑念”があった。


その夜。

義姫はひとり、使者から渡された封印された“別の書状”を開いていた。


そこには、兄・最上義光の筆で、こう記されていた。


『──“影”が動いておる。最上家では止めきれぬ。

北へも、間もなく迫るであろう。』


夜風が障子を揺らした。


政宗の予感と、義姫の動揺。

そして“影”の正体は、まだ誰も知らぬ──

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