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1ー8  Side 美桜 出会い

交差羽です。『中二病スキルで全てを救う』を8話を投稿させて頂きました、中二病と無双と困難に立ち向かう主人公が大好きな作者です。めっちゃミスって一斉アップしてしまいました。書き溜めた分が~~~

その後のことはよく覚えていない。


警察が来たり病院に連れていかれたりしたけど私は何も考えられず、ただずっと泣いていた。


唇も渇いて、喉もカラカラで、もう体の中に水分なんて残っていないんじゃないかと思ったけれど、涙は後から後から出てきた。


そうしてどれくらい泣いただろう。気付いた時には自宅のソファーで横になっていた。


思わずお父さんを探す。

あれは夢で、お父さんはきっと寝室で寝ているはず。


そう思って家の中を探したがお父さんもお母さんも居なかった。


後からわかったことだが、この時お母さんも心神喪失しており、親戚のおばさんが泣きつかれて眠ってしまった私を家に連れてきてくれたとのことだった。


私はソファーの上でじっと膝を抱えて待った。


誰かが帰ってきてくれるのを。


すぐにおばさんが帰ってきて話しかけてきたが、私はそれには答えずただじっと待った。

虚ろな目で虚空を見つめながら、お父さんとお母さんが帰ってくるのを。


その数日後、今度はおばさんに連れられてお母さんが帰ってきた。


当時お母さんも心神喪失し、とても家に帰れる状態ではなかったため病院で数日間経過観察入院をしていたとのことだった。


その間のお世話はおばさんがしてくれた。どうも大人同士での取り決めがあったようだ。

そして、虚ろな目をした母親から、あの事件が現実にあったと淡々と聞かされた。


私は泣いた。


なんで、どうしてと。私が遊園地に行きたがったからか、とも叫んだが、


母親は感情が無い声で


「美桜のせいじゃないわよ」


と言った。


もしかしたら、お母さんもそう思って私を責めたかったのかもしれない。

でも、お父さんから私を頼むって言われたから、きっと心のどこかでそう思っても言わなかったんじゃないかと思う。


その後、お父さんのお通夜とお葬式が行われた。

参列には親族他、お父さんの友達や仕事仲間などたくさんの人が参加し、お悔やみの言葉を送ってくれた。


お父さんはたくさんの人に慕われていたと思ったら、また涙が出た。



ただ、それでだけでは済まなかった。


自宅近くにマスコミが張り込み始めたのだ。

遊園地で殺傷事件、今思うとセンセーショナルでマスコミの格好のネタだったんだろうと思う。

しかし、その頃の自分には訳が分からなかった。


大の大人が


「お父さんが目の前で刺されたんですよね、かわいそうに。その時どんなふうに思いましたか?」


なんて聞いてきて、ただただ怖かった。

お父さんの死に土足で踏み込んできて、汚されているように感じた。


そんな日が数日続いたある日、お母さんが私に児童養護施設に行きなさいと言った。


「美月、少しの間だけあそこの施設に行きなさい。大丈夫、あそこの人達はみんな優しいし、美月を守ってくれるから。」


最初私は抵抗した。

イヤイヤと。お母さんまで居なくなってしまうんじゃないかと不安で。でも、


「大丈夫、必ず迎えに行くから。その間に、悪い大人の人達はお母さんが何とかしておくからね。お願い。」


と言われ、私は引き下がった。


これ以上お母さんに負担をかけてはいけないと、子供心に思ったからだ。



そして、私は児童養護施設に行った。拓斗やツグミ君と出会ったのはその時だ。


その頃には拓斗とツグミ君は親友で、私が後からそこに入った形になる。

その頃の拓斗はあまりしゃべらない子だった。ツグミ君の後ろからこちらを覗いているような子で、ツグミ君はそんな拓斗を見守っていた感じだった。

ツグミ君はその頃からあまり変わっていないかな。


私もその頃は気分が沈んでいたし、自分の感情もうまくコントロールできていなかったから、最初は周りとも全然話さなかった。


だけど、ある時、床に座りお父さんのことを思い出しながら私がぐずっていたら、拓斗がおずおずと


「どうしたの、泣いてるの?」


って声をかけてきてくれて。

全然話しなれている様子じゃなかったし、表情もおどおどしていたけれど、それでも一生懸命な様子が伝わってきて。


私も悲しかったけど、ああ、こんなに一生懸命心配してくれる人がいるんだなって思ったら、泣けてきて。それを見て拓斗はさらにおどおどして、小さい手で頭をよしよししてくれたんだっけ。


私はそのまま拓斗に抱き着いて大声をあげて泣いて、泣いて、泣いて。施設の職員さんが来てくれるまで泣いた後、この子と友達になりたいって思ったんだった。



そうして、拓斗と友達になって、ツグミ君とも友達になって。

児童養護施設を去る時は、もう会えないんじゃないかと不安になって泣きそうになったけど、拓斗も目の端に涙をためながらそれでも一生懸命ぶんぶんと手を振ってくれて、ツグミ君は優しく微笑みながらそっと手を振ってくれた。


ここで泣いちゃダメだって唇をぐっと結んで私も笑顔でばいばいをした。本当はとても悲しかったのを今でも覚えている。



でも、その半年後、私たちは同じ幼稚園で再会した。

最初は開いた口が塞がらなかった。

あんなに悲しい気持ちでさよならしたのに、別れてから3か月は思い出して涙ぐんでいたのに。

私の純情を弄んだのねって幼稚園生ながら思ったが、それでもまた再会できたことに心が弾んだ。


その頃には、拓斗は今と同じようにモテたいモテたい言うようになっていて半年前のおどおどした様子はすっかりなりを潜めていたけれど、それでも芯にある優しさは変わらなかったし、ツグミ君も相変わらず拓斗を見守るスタンスはぶれていなかった。


私は、改めて二人と友達、いいや親友となってその後もずっと小学、中学、高校と付き合って今に至っている。



私にとって二人と出会えたことは何よりの幸いだ。


だから、二人を本当の家族のように大切に思っている。

二人に彼女が出来て私から離れて行ってしまうこともあるかもしれないけれど、その時は家族として温かく見守ろうと思う。


正直寂しい気持ちもあるけれどきっと大丈夫。ただ、願わくば、私たち3人がこれからも一緒に居られる時間が続きますように。

すみません、7話をいじっていたら、いつの間にか一斉アップしていました。8話として追加です。

もしよかったら続きを読んでいただければ幸いです。

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