1-7 Side 美桜① 悲しみ
交差羽です。『中二病スキルで全てを救う』を7話を投稿させて頂きました、中二病と無双と困難に立ち向かう主人公が大好きな作者です。遊園地も好きです、友情ものも好きです、悲しいことは苦手です。
1話分がもう少し少ないほうが読みやすいとのアドバイスを頂いたので、1日2話にして分割しようと思います。何卒宜しくお願い致します。
私の名前は鍵山美桜。
私立朔月高校に通う高校2年生だ。
部活は演劇部とミステリー研究部に所属し、日々忙しい毎日を送っている。
趣味はランニングと美味しいお菓子を見つけることである。
ちなみに最近の一押しはうま〇棒に似た茨城名産の納豆味スナックで、歴代一位はカー〇のうすしお味だ。
あのだしの旨味が効いた味とサクサク感は癖になる。開けると大抵1回で食べきってしまうが、関西でしか売っていないので入手が非常に困難なことは悲しい。
そんな私だが、困っていることもある。
それは高校生になってから告白される頻度が非常に増えたことである。
特にGW前のこの時期、何とかイベント前にと意気込んでいる男子諸君の目が怖い。
おそらく、一般的にみると私は可愛いの部類に入るのだろう。
くっきりとした二重瞼や、整った鼻梁と口元、普段から美容液や乳液といったスキンケアも欠かさないようにしてお肌もプルプルだ。
だって、女の子だもん、私だってお肌のトラブルには気を遣う。
ただ、モテたいかと言われるとあまりそう言った願望は今のところない。
どちらかと言えば、ミステリー研究部で気を抜いている時の方が自分としては幸せだ。
だから、告白されても断るようにしている。
ただ、真剣に思いを向けてくる人を無碍にはしたくないので、その対応だけはしている。ただしその際、拓斗に頼んで近くの物陰に控えてもらっている。
毎回告白の呼び出しに付き合わせている拓斗には申し訳ないことをしていると自覚はしているが、流石に男子に呼び出されてホイホイ着いていくほど私も無警戒ではない。
何度か、そのまま詰め寄られる場面もあったし、その時は拓斗に介入してもらう手筈になっている。
では、そんな拓斗は私にとって恋愛対象なのか、と言われると実はあまりそう言った感情もない。ツグミ君に関しても同様である。
拓斗もツグミ君もどちらかと言えば私の中で家族の分類になっている気がする。
拓斗は手間のかかる弟、ツグミ君は影から見守ってくれるお兄さん的なポジションだ。
過去、友達や男子に拓斗やツグミ君が好きなのかと問われたことがあって、
「好きだ。」とは答えたが、
「幼馴染だからね、どちらかと言うと家族みたいな感じなのかな。」
と言ったら、なんか納得してもらえた。
おそらく外から見ても自分たちの普段の行動はそんな感じなのだろう。
実際、部室で3人で長いこと話していてもドキドキすることはない。
ただ、去年の文化祭の時に拓斗に胸を触られた時は正直ドキッとして、顔が赤くなって、思わず投げ飛ばしてしまった。
嫌な感じはしなかったが、それでもこれが恋愛感情から許してしまったのかと言われると、まだあまりピンとこない。
ただ、私としては、3人でゆっくりのんびり過ごしながら、これからもずっと一緒に居られたらな、とは思っている。
一方で、この関係が通常の高校生男女にあまり当てはまらないことも自覚している。自分でも少し普通では無いとも思っているが、恐らくこれは私たちの最初の出会いが影響を及ぼしているんだろう。
私は5歳の頃、一時期児童養護施設に入っていた。
入っていたといっても、数週間程度だ。
私は元々お父さん、お母さん、私の3人家族だった。
ある日、家族3人で遊園地に出かけることになった。以前から私が行きたい行きたいとねだっていた遊園地で、お父さんはたまの休日を返上して遊園地に連れてきてくれた。
本当に楽しかった。
しかし、お昼時、遊園地のフードコートにいる時にその事件は起こった。
近くで男女が言い争いをしていたのだ。
両者ともヒートアップして、大声で聞くに堪えない罵声を浴びせあっていた。
その頃の私にはほとんど意味は分からなかったけど、とても怖いと思った。
お父さんがおもむろに席を移動しようと言い、お母さんの手に引かれて立ち上がった時、言い争っていた男が女性に体当たりした。
それと同時に女性の口から血が溢れ、地面に倒れ伏した。
広がっていく血溜まり。
男の手にはナイフが握られていた。
男はそのまま半狂乱になりながら手の中の光るナイフを振り回し、周りのお客さんを切りつけていた。
すぐ近くに居た私達の方にも向かって来ようとしていたので、急いで逃げようとしたが足がうまく動かないで倒れこんでしまう。
男はなおも私たちの方に向かってきて、お母さんは私を庇う様に覆いかぶさった。
男はナイフを振り上げ、そのまま振り下ろしてくる。
私はぎゅっと目をつぶって衝撃に備えた。
しかし、私にもお母さんにも衝撃はなかった。
間に入ったお父さんが体で受け止めていたのだ。
お父さんがそのまま、犯人を突き飛ばすと、犯人はどこか打ったのかそのまま倒れて動かなくなり周りの人に確保されたが、お父さんも血を吐いて倒れた。
お父さんの胸には先ほどのナイフが根本近くまで刺さっていたのだ。
お母さんがお父さんのそばに駆け寄り、その様子を見て泣きじゃくり叫んでいる
「死なないであなた、お願い誰か、誰か助けてください。」
慟哭のような叫び声が響く。誰かが救急車を呼んでいる声がする。
そんな中、私は茫然とその光景を見ていた。
腰が抜けていて一歩も動けない、体にも力が入らない。
これは心が夢だ、夢のはずだと叫んでいるが一向に覚める気配もない。
これはそう
現実
なんだ。
そうじわじわと這い寄るような感覚が徐々に足元から上ってきて私は吐きそうになる。
お父さんににじり寄り叫ぶ。
「嫌だ、死なないで、パパ、パパーーー!」
お父さんは震える手でゆっくりと私の頭に手を載せる。そして言った。
「愛し・・てる・・・よ、美・・・・桜。」
「それ・・と、ケホッ、母さん・・・・・。美桜を・・・・頼んだ。ゴホゴホゴホ・・・・・。心から・・・・愛してい・・・・る。」
そうしてお父さんはそのまま二度と目を覚まさなかった。
まずは7話を読んでいただいた読者の方にお礼申し上げます。今回は美桜ちゃんの過去話です。どうして拓斗君やツグミ君と近すぎず遠すぎずの距離になったのかのお話です。今日の15時頃に続きをアップしますので気になる人は続きを読んでいただければ幸いです。