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1-4  噂の黒い人

交差羽です。『中二病スキルで全てを救う』を4話を投稿させて頂きました、中二病と無双と困難に立ち向かう主人公が大好きな作者です。春の日差しも好きです、ほっぺをつねってくれる美少女も好きです、夜間にフハハハと跳び回る人は微妙です。

 ノートに走らせていたシャーペンを止める。


 春から夏に変わりかけているこの時期。ふと顔をあげると、窓から差し込んだ光が生徒の横顔を照らしている。


 爽やかな風が吹き、教室のカーテンが揺れる。


 耳には御年64歳の歴史先生がゆっくりとした口調で話す鎌倉時代の話が流れてくる。


 それを聞きながら窓の外に視線を移し、俺はここ数日のことを振り返った。


****************************


 能力を分析し実践するためには数日間を費やした。


 どこで実験したかって?


 それはもちろん深夜にまたあの格好になって、夜の街を満足いくまで「フハハハハハ」と言いながら跳び回った後、郊外の森の中で実験しましたよ。


 その度に俺のMPはガンガン減りましたけど。


 しかし、その貴重な犠牲の結果、いくつかのことが判明した。


 まず一つは、この能力は俺の中二病ノートの黒の章がベースになっている、ということだ。


 黒の章は俺が魔術にはまっていた時に書いたもので、基本的には闇属性の魔術しか使えない。

その特性上、夜間ほど能力が上がるが日中になるとその出力は低下する。試したのは主に夜間だが、朝方になると力の低下がみられたのでほぼ間違いないだろう。


 能力としては主に、5つ。攻撃スキル・防御スキル・身体能力アップスキル・影を用いたアイテムボックス、それに魔眼がある。


 攻撃スキルであるダークマテリアライズは闇を固めて剣や槍を作り出すスキルで、非常に汎用性が高くイメージ次第で様々なものを生み出せる。

 

 さらに四肢に闇を纏わせ、攻撃や防護の両方に使える闇の衣、ダークネススケイル。これは近接戦闘の徒手空拳用のスキルだが、魔力消費が非常に少ない割にクリティカルヒットの際の攻撃力が高い。

 

 身体能力アップスキルは先日使用したダークネスロンドで、これも汎用性が高く風の様に速く動けるようになる。しかし、純粋な身体強化ではなく魔術により体に補助装置をつけているような感じで俺自身の筋力や俊敏性がアップしているわけではないようだ。

 

 アイテムボックスである混沌よ闇に沈め、ダークネスゲートは無生物のみの収納で容量も20㎏程度、時間停止能力なんかもない。あくまで闇魔術なので時空間魔術は対象外となっている。

 

 最後に魔眼。これにはパッシブとアクティブの二つの能力があり、パッシブスキルは動体視力や反射神経が爆発的に上がる。これによりダークネスロンドの際の動きに対応が可能となる。またアクティブスキルは右眼に宿る魔方陣を発動させる。それにより相手の本質や魂といった魔術的な要素が見えるようになる。ただし、このアクティブスキルは非常に魔力を消費するので使い勝手は悪い。

 

 以上が今使えるスキルの一覧だ。


 また、二つ目として、黒の章のすべての魔術が使えるわけではないようだ。

黒の章には俺が数か月間、練りに練り()ねに()ねた月の餅つき兎も真っ青な内容を書き綴ったが、その中の召喚魔法や昼を夜に変えるような大魔術は使えなかった。


 まだ未開放なのか、そもそも使えないのかは分からないが何らかの制限があるようだ。


 正直、能力の出力に関してもノートに綴ったものよりは数段劣っており、感覚としても能力を支配しているというよりもまだ能力を借りている、といった感覚がある。


 そして3つ目。これが致命的なのだが、能力発現中は自分の言動が中二病発症時代に戻ってしまう点だ。

意識もあるし理性もあるが歯止めが効かない。


 何とか普通にしゃべろうとカンペを読もうとしたり、リポビタ〇Dを飲んでファイトを一発して頑張ったがすべての発言が致命の一撃となって俺を襲ってくる。

もちろん記憶はあるので能力を解除した際に悶えることになる。


 ちなみにファイト一発と叫ぼうとしたら、


「深き闇より来たれ、我が真なる力よ。ファイトいっぱあーーーーつ!!」


と、右膝を地面につき、左腕は水平に広げ、右手は顔に添えるポーズをとってしまった時は本当に絶望した。

しかも、俺を中心に黒い渦が地面からエフェクトのように出現したのでカッコよさ(イタさ)もマシマシだった。


 最近枕のシミが多くて、洗濯の回数が増えてる気がする。ごめん母さん。


 あれ、でもこの言動って黒の章を書いた時のものだから、他の章を書いていた時の言動ってどうなるんだろう・・・

と不吉なことが頭をよぎるが、都合が悪いことはサクッと頭の隅に追いやり、鎖でグルグル巻きにして心の深海に沈めておく。

 君のことは(びょう)、間違った(びょう)で忘れるから静かにお休みと、心の中で親指を下向きに立てて黙祷をささげる。

 The ENDだぜ・・・もしその予想が正しい場合の俺の心が、だが。


 嫌な想像をしてしまったが、しかし、検証の結果、この能力が非常に有用なことが分かった。


 身体強化スキル(闇よ付き従え、ダークネスロンド)があるだけでも大抵の人間に殴り合いで負けることはないだろうし、感覚として恐らく銃弾も避けられる。

注:ただし「闇よ付き従え、ダークネスロンド」としっかり発音しないと発動しません。


「さてと、それじゃあこの能力を使って何ができるか、だな。」


 この数日、俺は能力の検証と共に様々なことを考察した。


 この能力はそもそも何なのか、あの黒い影や虹色の球体は何だったのか、能力を得た時の声の主は誰か、などいろいろだ。


 しかし正直何も分からなかった。


 あの後神社にも行ってみたが特に変わったところはなかったし、もちろん黒い影や虹色の球体もなかった。

そもそも虹色の球体は恐らく俺の体の中にあるのだろうし、あの声の主も世界の意思とか神様とか精霊とか球体の前の持ち主とか色々想像は出来るがどれも決め手になるものはなかった。


 ひとまず能力を使う上で、中二病の言動以外に副作用となるようなものは無いようなので、次に俺はこの能力で何ができるかを考えることにした。


 超常の力を手に入れた際、人はその能力を扱うのに大義が必要だと俺は思う。

誰かのためでもいいし、何かの目的のためでもいい。

ただ、目的無く力を振るえば人は簡単に闇落ちする。指針となるべきものが必要なのだ。俺はそのことを多くのアニメから学んでいる。

では俺の中の指針とは何だろうか。それはもちろん



『モテたい!!!!!』



である!

そもそも中二病自体がモテたくて始めたこと。であれば、その力を使ってモテるための努力をしよう。

これはモテポイントゲットのチャンスである。


 そのためにはそうだな、例えば、夜の街で暴漢に襲われている人たちを助けようかな。

そうすれば、吊り橋効果でモテモテに。あわよくばそのままお付き合いなんて、と妄想を膨らませてニヤニヤしていると、後頭部を何かでペシンと叩かれる。


「拓斗気持ち悪い顔してる。なんか変なものでも食べた?」


 そこには歴史の教科書を丸めて筒状にしたものを持ち、両手を腰に当てた美桜がいた。

周囲の生徒はすでに散らばって雑談に興じている。

いつの間にか授業が終わって昼休みになっていたようだ。


「いや、気持ち悪いって。普通に傷つくぞ。」

「だって、本当にニヤニヤして変な顔だったもん。(・∀・)ニヤニヤ みたいな。」


 美桜の顔が顔文字みたいになって思わず吹き出す。


「おま、おまえ、その顔はやばい。」


 美桜は拗ねたのか、頬をプーと膨らませ、俺の両頬を引っ張ってくる。


「おらおら、人の顔を笑ったのはこの顔ですか。このニヤニヤした緩んだほっぺですか?」


と遠慮なく両頬を引っ張ってくる。

軽く抵抗するが離してくれる様子はない。そろそろ痛くなってきたので俺は両手を上げて降参する。


「わりゅかったっへ。ほめんなはい、ゆるひてくだはい。」

「うむ、分かればよろしい、分かれば。」


 そう言って美桜は俺の頬から手を放す。そこへツグミも合流して、昼食をとることにした。

いつものように会話に花を咲かせていると、


「そういえばさ、この前の神社の話の続きか分かんないけど、最近黒ずくめの人が街にも出るようになったらしいよ。」


と美桜が話し出す。


「うちの後輩が見たらしいんだけど、夜中にコンビニにアイス買いに行ったら、全身真っ黒で何かぶつぶつ言っている人が歩いてたんだって。すれ違った時にも何か言っていたみたいだけど怖くなってすぐ走って逃げたって言ってた。」


 その話を聞いて俺はドキッとする。


(まさかあの姿が見られた!? しかも噂になってる!? やばい、やばい、やばい)


俺は動悸が抑えられず、思わず視線が泳ぐ。冷や汗が止まらない。


ツグミが提案する。


「それは怖いね。美桜ちゃんも部活で遅くなることがあるし、気を付けないと。もしよかったら帰りだけでも待ってようか。」

「いやいや、たぶん大丈夫だよ。帰りは演劇部で出来るだけ一緒に帰るようにしてるし、その不審者も深夜に近い時間しか出ないみたいだしね。」

「でも心配だよ。」

「まったくツグミ君は心配性だな。お母さんみたいだね。でもありがと。それにそれだとむしろツグミ君が襲われないか心配になっちゃうよ。ツグミ君可愛いから。」

「そこはせめてお父さんじゃないかな。でも、何かあったら必ず連絡してね。拓斗もだよ。拓斗も夜間に出歩いちゃだめだからね。」


 クリっとした眼で真剣にこちらを見つめるツグミ。周囲に光のエフェクトが見える。

確かにこれは襲っちゃいたくなる可愛さだな、って違う。その不審者は俺かもしれない。


 俺は冷や汗をかきながら、


「お、おう分かった。夜間は出歩かないようにするし、不審者にも気を付ける。」


と返事をする。しかし、心中はそれどころではない。


(これはまずい、せめて「フハハ」と声を上げたり、危ない発言をしないように気を付けないと!

その上で、ダークヒーローよろしく人助けをして、黒い人が正義の味方だと言う噂が流れるようにしないと)


 昼休み中、俺はそんなこと考えながらずっと上の空で二人の会話を聞いていたのだった。

まずは4話を読んでいただいた読者の方にお礼申し上げます。今回拓斗君は闇魔術の分析を頑張りました、が、実はまだちょこちょこ制限があります。なお、フハハハは止められません。ちなみに、漆黒の衣装を纏ったり魔導書を出すときはラテン語由来で、その他の魔術発動時は日本語と英語が混ざっているのは、一応理由があります。その辺もそのうち出せるかな?

この後も読んでいただければ幸いです。


引用:

「深き闇より来たれ、我が真なる力よ。ファイトいっぱあーーーーつ!!」:リポDのCM

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