2-4 幼馴染達の優しさ
交差羽です。『中二病スキルで全てを救う』を2章4話を投稿させて頂きました、中二病と赤髪とバトルと主人公が大好きな作者です。ネコも好きです、ほっぺつんつんも好きです、ほっぺに手を添えてもらうのも好きです。
本日から『中二病スキルで全てを救う』2章が正式に再開しました。本日と明日は多めにアップします。後は適宜ですかね。
あと、本日からカクヨムでの連載と、この作品のスピンオフ連載も投稿しました。もしよければご覧ください。
その後、俺は一瞬の隙を見て女性の魔の手から脱出した。
「フハハ、闇が呼んでいる。フハハハッフ、ゲホゲホ。」
マントを翻し、そのまま夜の闇へ脱兎のごとく逃亡。
その際、伸身宙返り2回ひねりを加えることも忘れない。
「待ちなさいよーーー!!!」
怒気が籠った声が後ろから聞こえた気がしたが、気にしない、気にしない。
クルクル横回転しながら、両耳を塞ぎ聞こえないふりを貫いた。
そして、追跡が無いことを確認しながら、コソコソ家に帰ったのだった。
怒った女の人って怖い・・・
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次の日、
「ねえ、拓斗その左頬どうしたの?」
朝一番に聞いてきたのは美桜だった。
いつものように整った目鼻立ち。
その肌はきめ細やかでシミやクマとは縁遠いように見える。
肩甲骨まで伸びた黒髪は濡羽色で、今日はそのままストレートに下ろしている。
相変わらずの美少女っぷりに目がくらむ。
心配そうに顔を近づけて来る美桜。
近づくとふわっと桃のような甘い香りが鼻孔をくすぐり、プルプルした桜色の唇に目を奪われそうになる。
そこから視線を上げて行けば、少し赤くなった頬と、さらには黒曜石のような輝きを宿す瞳。
その瞳には心配の色が見える。
ほんと、吸い込まれそうな綺麗な目をしてるよなー。
思わず見惚れていると、
「ねえ、拓斗ってば聞いてる?なんか左頬赤くなってるよ?」
美桜がさらに顔を寄せて来る。
いや、近い近い近い。
俺はハッと意識を戻す。
そして、見惚れていたのを誤魔化すように
「い、いや、大丈夫。昨日殴られてさ。」
と口に出す。しまった、余計な事を言った。
すると美桜は驚いた表情になり、
「殴られた!?誰にさ。」
と身を乗り出してくる。
そうですよね、美桜の性格なら心配してくれますよね。
だが、本当のことを言うわけにもいかないし・・・。
俺は「ははは」と誤魔化そうとするも、その様子から何か悟ったのか、
「まさか何か悪いことしてお父さんに殴られたとか?結衣ちゃんの着替え覗いて殴られたとか?いくら結衣ちゃんが可愛いからって、まさか、拓斗がそんな悪の道に染まってしまうなんて。よよよ。」
と、美桜が一見悲しそうな顔を見せてくる。
だが、俺には分かる、この顔は俺をからかって楽しんでいる時の顔だ。
さっきのやり取りで重大なことでは無いと判断したらしい。
良かった、あまり突っ込まれないで。
さて、ではなんと言い訳をするか。
えーっと、女性を助けたら殴られた?それだとまた心配されそうだし。
そしたら、そうだな猫、猫がいいな。うん、あの人猫っぽかったしそれでいいだろう。
バレない嘘をつくためにはその中に真実を混ぜることも重要なのである。
昔どっかの偉い人が言っていた。
「いや、猫だよ。なんか、猫が困ってたみたいだから助けたんだけど、そしたら殴られた。いやーひどい目にあった。」
俺は苦笑するように言い募る。完璧な言い訳である。
これなら某心理学研究者も見破ることは出来ないだろう。
イージーミッションである。
すると美桜は一瞬ポカンとした顔をした後、俺の言ったことを想像したのか笑いが抑えきれないといった様子で、
「はははは、なるほどなんだよ。拓斗らしいね。」
と、お腹を抱えて笑い出す。
ひどい奴だ、人が猫(っぽい人)に殴られたのに笑うなんて。
俺が心の中で憤慨していると、
「いや、拓斗らしいって失礼な。」
「いやだってさ、拓斗って勘違いで誰かを助けて、その後ごめんなさいって言う展開によくなるじゃん。」
「・・・・・・。」
俺は思わず何も言い返せず、むくれる。思い当たることしかない。
以前にも似たような展開で美桜とツグミにお世話になったことが思い出される。
昔路地裏で女性が女性に迫られて困っていそうだったから助けたら、ただイチャイチャしているだけだったとかな。
まったく、あの時はひどい目にあった。後から来た美桜とツグミに取り持ってもらわなかったら俺も白百合愛好会に入れられるとこだった。
美桜はひとしきり笑うと涙目になりながら、けれど黒曜の綺麗な瞳で優しく俺を見つめる。
そして、人差し指を一本立てるとそれで俺の左頬をつつきながら、
「でもさ、私はそんな拓斗のおせっかい嫌いじゃないよ。」
ニコッと花が咲くように笑うのだった。
その様子はとても愛おし気で、包み込んでくれるような優しさ纏っていて、そして美しかった。
その視線が気恥ずかしくて、思わず頬が熱くなる。
「ふん、なんだよそれ。」
俺は、照れ隠しそう呟くしかないのだった。
その後、同じように頬の腫れを見たツグミにも心配され、言い訳をすると
「もう気を付けないとだめだよ。」
そう言って優しく俺の頬に手を置いてくれた。幼馴染達にだいぶ甘やかされている感じがする。
まずはこの話を読んでいただいた読者の方にお礼申し上げます。今回は拓斗君が甘やかされています。羨ましい限りです。今後も甘やかされる可能性があります。気になる方は続きを読んでもらえると幸いです。




