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1-32  世界の真実②

交差羽です。『中二病スキルで全てを救う』を32話を投稿させて頂きました、中二病と無双と困難に立ち向かう主人公が大好きな作者です。フラグ回収も好きです、科学も好きです、不思議も好きです。


「そうです、ご褒美です。友達はgive-and-takeでしょ?だから拓斗君の知りたいことを何でも答えてあげようと思ったのです。」


そう言って、エプタは俺の方を見つめてくる。

その目は何を聞かれるかとワクワクしているようにも見える。

俺は美桜を護るようにギュッと抱きしめたまま、高速で思考を巡らせる。

この事件の首謀者であるエプタ。そのエプタからの情報の価値は重い。

何から聞けばいい?黄泉の国の事か?別の世界の事か?犠牲者の事か?

様々な質問が浮かび、その優先度をつけていく。

だが、エプタが嘘をつく可能性もある。エプタが嘘をついていたとしても正直俺には分からない。

思考が回転し、仮定し、推測する。だが、結論は出ず、


だから、俺は、この事件で最も知りたかったことを聞いた。


「ならば問おう。何が目的で汝はこのような暴挙を行った?」


少し意外だったのか、その質問にエプタは考えるようなポーズをとった後、


「なんのため、ですか。そうですね、強いて言うなら楽しそうだったから、ですかね。」


と、手をポンと叩いて言った。

俺はその答えに愕然とする。奴の思考について行けない。

黄泉の門を開き、美桜を生贄に捧げ、伊邪那美命を呼び出し、多くの人が犠牲になる可能性があった事件を、


「楽しそう、だと・・・」

「そうです、楽しそうです。最後に残った1の世界。そこを自分の好きなように弄り回すのは楽しそうじゃないですか。」


奴は心底楽しそうに語る。最後に「失敗しちゃいましたですけどね。」と付け加えながら。


訳が分からない。奴の思考も、言っていることも。俺には何一つ分からない。


「何を、貴様は何を言っている。」


エプタは俺の様子をいぶかし気に観察した後、


「???ああ、そこからですか。粒子の接触は既に果たし、別の世界があることも理解していると思っておりましたですが。やっぱり頭の回転が良いと思ったのは勘違いです?」


そして胸を張り、


「ですが友達のためです。このエプタが親切にお教えしましょうです。」


と言った。


「では拓斗君、ここからは科学と数秘術の授業です。拓斗君はこの世界が何次元で出来ているか知っていますですか?」


白衣の裾から、打診棒まで取り出してきやがった。さらにそれで左掌をペチペチと叩く。

なんてうざい。


「・・・4次元だろう。」


俺は警戒心を解かないまま会話を続ける。


「いえいえ、違います。11次元です。この世界は3次元と時間軸の1次元、それに折りたたまれた6次元と法則の1次元で構成されていますです。ですので現在この世界は11次元で出来ているのです。ですが、これも本来の姿ではない。」


そこで、ペチペチを止めエプタは初めて真剣な顔つきになる。


「数秘術では7が調和・循環を表し、11は特別な数字とされていますです。これには重大な意味があるのです。なぜなら、それこそがこの世界の真実だからなのです。」


そして、エプタは一つ息をつくと、朗々と語り出す。

エプタらしからぬ雰囲気で。

何かにとり憑かれたように。

何かと同調するように。

その声を響かせる。


「原初、世界は独立した6で出来ていた。

しかし6では不完全。

6の上には法則の1があり、かくして7で世界は調和した。

だが、幾億幾兆の時が過ぎた頃、その7は壊された。

壊したのは暴食の1。滅ぼされたのはその他の5。

暴食は他の5を取り込み、6となる。

世界のほとんどを収めた暴食。

けれど、その飽くなき食欲と執念は凄まじく、ついには法則の1さえ見つけ出す。

全てを喰らおうとする暴食と抵抗する法則の1。

長い、本当に長い戦いの末、暴食は力及ばず折りたたまれた。

しかし、疲弊した法則の1も形を保てず休眠に入り、

構成するものが無くなった世界は陽炎の様に移ろうのみ。

このままでは世界が消えると悟った法則の1は、だがしかし、休眠前に新たな1を作り出す。

しかして可能性は残された。

残された1は原初の爆発により4となり、新たな4と折りたたまれた6、そして法則の1により、世界は11で安定した。

それがこの世界の真実です。」


最後に、エプタの雰囲気に戻り、締めくくった。

俺の背に嫌な汗が流れる。


「何を言っている?」


エプタが何か言っている。

その話の半分も理解できない。だが直感的に悟る。


それが世界の真実なのだと。

知らなければいけない世界の理なのだと。


俺が険しい顔しているのを見て、


「4+6+1で11ですよ?」


と確認してくるがそれどころではない。

知らず、美桜を抱く腕に力がこもる。


「そうですか、これでも分からないですか・・・。これ以上の丁寧な説明は難しいです。」


エプタは馬鹿にしたようにヤレヤレとポーズをとり、首を横に振る。

そこで何かに気付いたように西の方角をじっと見つめると、数秒して俺達に視線を戻し、


「さて、どうも怖い神様がこちらを睨んでいるようですから、そろそろお暇させてもらいますです。」


そう言い踵を返す。


「ま、待て。貴様にはまだ聞きたいことがっ。」


ダメだ、あいつにはもっと聞かなきゃいけないことがある。

俺は焦った声を出し、手を伸ばそうとするが、


「それでは拓斗君。またどこかで会いましょうです。」


エプタは白衣を翻すと、現れた時と同じようにまた闇に溶けて行った。

俺はその姿を茫然と見送るしか出来ないのだった。


まずは32話を読んでいただいた読者の方にお礼申し上げます。ついに世界の真実がネタバレしました。ちょこちょこ伏線は挟んでいましたが。ただ、エプタさんの説明だけではわかりにくい所がありますので、それは次の章やその先で明かしていければと思います。続きを読んでいただければ幸いです。

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