1ー23 黒の世界④
交差羽です。『中二病スキルで全てを救う』を23話を投稿させて頂きました、中二病と無双と困難に立ち向かう主人公が大好きな作者です。義賊も好きです、酒場も好きです、情報収集も好きです。
そうして後日、大臣から孤児院への援助金を減額する旨の通知が届いた。
恐らく、ルナを恐れて援助金を無くすことまでは出来なかったのだろう。
しかしそうは言っても、減額でも相当厳しい。
元々余裕があるわけでは無かった孤児院で何とかやり繰りしてやってきたのだ。
そこに減額となると子供達に十分な食事を食べさせてあげることも儘ならなくなる。
あんなクソ大臣のせいでチビ達にそんな思いはさせられない。
俺は院長にかねてから準備していた計画について相談した。
それは、義賊の計画だった。
不当に人々を虐げている者や搾取している者を襲撃し、その取り返した金品でもって貧しい人達を救う計画。
もちろん元の所有者が分かっている物についてはその人に変換し、お金や元々の所持者が不明なものを食料や日用品に変え配布する、といったことなど、事細かに説明した。
最初院長はあまり乗り気ではなかったが、今回は俺が引き下がらないことが分かったのか最終的には渋々承諾してくれた。
「ただし、出来るだけ恨みを買うようなことは避けること。むやみに人を気付つけないこと。そして何より、自分を大切にすること。それが守れるのであれば認めましょう。」
と。
その日から俺は活動を開始した。
幸い、闇を固めて作った鳥型の使い魔を通じて不正を犯している貴族や、悪逆を働いている商人や盗賊などの情報はすぐに集まった。
そして目星をつけた悪人の影に追跡魔法を仕込み、不正な品の保管場所や悪党の隠れ家などを見つけ出し次々に襲撃していった。
なお、一番最初は大臣の不正の証拠を集め、王国所属騎士団の詰め所に置いておいた。
これにより、大臣はそちらの対応に手いっぱいになり、こちらのことまで手が回らなくなるだろう。
その後は活動場所が絞られないように王国各地に赴いて悪党を襲撃していった。取り返した金品は闇市を介して食料や日常品に変えた。
正直拍子抜けだった。
スキルによる妨害こそ度々あったものの、闇の魔術の方がはるかに強大で正に赤子の手を捻るようなものだった。
院長の言いつけ通り、殺人や強姦、人身売買と言った極めて達の悪い悪党や抵抗が激しくあまり手加減できなかった相手に関しては殺すしかなかったが、それ以外の者達に関しては魔術で気を失わせた後に縛って騎士団の詰め所に置いてきた。
闇の魔術の痕跡を出来るだけ気取られなくは無かったしな。
そのようにして2年ほどが過ぎた。
相も変わらず悪党退治に精を出していると食事処で気になる情報を聞いた。
少しくたびれた感じの金髪と濁った金眼の男が目の前の男に語る、
「ソルラディアル王国の東の端。そこで国内最大規模の人身売買組織が暗躍しているらしい。その犯罪組織は領主と結託して孤児院や裏路地から子供達を攫い他国に売りさばいているらしい。」
と。
ソルラディアル王国ではスキル持ちの子供が生まれる。
ハーフになるとその確率は著しく低下するが、それでも他国にとってソルラディアル王国の子供は喉から手が出るほど欲しい逸品だろう。
本来であればそのような人身売買に対しては国や領主が厳正に対処するが、その領主が腐敗に手を染めているのなら話は別だ。
何の罪もない幼い子供達をそのように扱うなど絶対に許せない。
孤児院の子供達の顔が頭に浮かぶ。彼らがそのような輩にぞんざいに扱われたらどうだろう。
絶対に許せない自信がある。恐らく地の果てまで追い詰めて、そいつらに生き地獄を味合わせるだろう。
「いかん、いかん。クールダウンだ。」
俺は熱くなっていたことを自覚し、喉にエールを流し込む。
東の端か、身体強化を全開にしても片道5日間ってところか。
しかし、やはりそのような集団を放っておくわけにはいかない。
孤児院の子供達が被害にあう可能性もあるのだから。
俺は次の目的地を決めると、席を立ち、孤児院に帰るのだった。
その時の俺は慢心していた。俺の力なら全てを救えると。それがどのような悲劇に繋がるのか考えもしないで。
まずは23話を読んでいただいた読者の方にお礼申し上げます。
当初の予定では25話で1章でしたが、少し分割しているの終わりはもう少し先になります。
続きを読んでいただければ幸いです。




