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1-1  プロローグ 始まりの光

はじめまして交差羽です。今回、『中二病スキルで全てを救う』を投稿させて頂きました、中二病と無双と困難に立ち向かう主人公が大好きな作者です。

1話からフラグがありますのでフラグ管理が好きな方、現実にフラグが見える方、これからフラグが見える予定がある方も含めて、多くの方に見ていただければ幸いです。

 深夜。人通りも途絶えた街中にて、


「フハハ、フハハハハハハ、フハハハハハハハハハハハ!!!」


 俺は夜の闇を駆ける。ビルからビルへ。

月を背に、どこまでも黒く、どこまでも速く。

夜の街灯がテールランプの様に視界の端を流れていく。


「とうっ!!!!」


 ひときわ高く飛び上がり、そして決める渾身の伸身ムーンサルト!!


 10点、10点、10点、9点、10点、10点、10点。


 心の中で中二病の衣装に身を包んだミニ拓斗君達が点数板を上げている。

ん? 9点? 誰だ9点出したやつは!?

右眼に黒い眼帯を付けたミニ拓斗君がニヤリと笑い指先を立てる。

くっ、捻りの際の指先が伸びきっていなかったか!


 そして降り立つビルの上。


(今夜は月が綺麗だ。)


 俺は空を見上げ、バッと両腕を広げる。その様はまるで熟練の指揮者の様。

このポーズを格好良く仕上げるために鏡の前で何時間練習したことか、ホロリ。


 身に纏うは漆黒の衣装と外套。その色は光の一切を反射しない深い黒。

少し長い前髪の間からは燃えるように青い右眼が爛々と輝き、黒いグローブをはめた両手からはうっすらとオーラのようなものが漂っている。

その姿はどこまでも深く、黒く、見る者すべてに畏怖を与える。


 そう、中二病に対する畏怖を!!


 俺は笑う、声高に。


「フハハハハハハハハハ、素晴らしい。」


 そして呟く意味深に。


「闇が呼んでいる。」


 本当は闇さんにもお呼ばれされていないし、むしろ闇さんもちょっとご遠慮して欲しいと手を振ってはいるけれど。でもでもそれでも構わない。


 そして俺は厳かに告げる。

まるで俺の存在を世界へと示すように、まるで俺の存在を深淵へと刻み込む様に。


「さあ、ここからは深き闇の時間だ!!!!」


その声は夜の闇に溶けていくのであった。



****************************




 ガタンゴトン。


 朝、単調な電車のリズムを聞きながら、俺、来栖拓斗(くるすたくと)は昨日チェックした来期アニメに思いを巡らす。


 最も注目しているのは、最近流行りの異世界転生もので、主人公がダークヒーローよろしく宇宙海賊相手に無双するものである。

ネット小説時代からずっと追っているけれどワクワクしながらいつも読んでいた。それがついにアニメ化である。PVを見た時からリアタイで必ず見ると決意していた。


 異世界転生も色々なバリエーションがあるけど、個人的には異世界行ったらやっぱり無双がいい。


(あー、俺も異世界行ってみてーな。)


 そんなことを考えていると、電車はカーブに差し掛かったのか、キーーと甲高い音を立てながら曲がっていく。

思考は途切れ、俺の体も振られるが、吊り輪の補助は最低限に、体重移動のみで体勢を崩さないようバランスをとる。

今日のモテポイント+1点と心の中で独り言ちる。


 そうこうしているうちに電車はいつもの時間、いつもの駅に辿り着く。


 ここ朔月市(さくげつし)は人口10万人ほどの地方都市。

海に面したこの街は歴史が深く、神社仏閣の他にも明治時代には炭鉱なんかもありそれなりに賑わっていたが、現在はほどほどの地方都市として可もなく不可も無くといった感じだ。


 そんな朔月市にあるのが我が学び舎、私立朔月(しりつさくげつ)高校である。


 私立朔月高校は全校生徒600人、近年中高一貫校になり、文武両道を掲げている。

地域との交流も盛んで地元民からも評判も良好だ。


 学校に着き、自分の教室である2-3に入る。適当にクラスメートたちに朝の挨拶をしつつ席に着く。

教科書を机に入れ、一息ついていると、後ろから声がかかる。


「おはよう、拓斗。」

「おはよう、ツグミ。」


 俺は反射的に返事を返す。

そこに立っていたのは、少し華奢だが整った顔をした(おとこ)()だった。そう、男の娘である。女子と見間違うような線の細い顔つきに、色素の薄いさらさらの髪、ふとした動作は妙に色っぽく全体的に儚げな雰囲気が漂っている。見た目はどう見ても美少女で、急に話しかけられると今でもドキッとする。


「ねえ拓斗、一限目英語だけど今日はちゃんと宿題やってきた?」


 そんなツグミが穏やかに聞いてくる。


「ああ、やってきたやってきた。たださ、2か所だけ訳が分かんないところがあって。」

「え、どこかな見せてみてよ?」


 ツグミに促され、俺は英語のノートを広げる。するとツグミが顔を寄せてくる。その距離は少し動けば額が付きそうな距離で、フローラルな香りにドキッとする。そんな動揺を悟られないよう思わず軽口が出る。


「何というか、ツグミはいつ見てもほんと可愛いよな。」

「朝から何言ってんの拓斗は。」


 少し顔を離し、口元に手を当てながらクスクス笑いながら返してくる姿も可憐だ。惚れてまうやろぅ、っと心の中で叫ぶ。


 そんなこいつは時任(ときとう)ツグミ。ツグミと俺は幼稚園の頃からの付き合いで、二人居る幼馴染のうちの一人だ。高校では同じミステリー研究部に入っている。


 成績優秀、人当たりも良く、スポーツもできて顔も良いというスーパーマン。本来であれば、ちょっぴり嫉妬したくなるようなスペックだが本人の性格の良さがそうさせない。

しかも、幼馴染の俺のことが大好きなようで、


「帰宅部だと拓斗と一緒にいられる場所が確保できないから部活作って遊ぼうよ。」


と言い出し、スペックを無駄活用した挙句発足したのがミステリー研究部だ。これだけのスペックがあれば運動部でも引く手数多だろうに、奴は俺との時間をとても大切にしたがる。なぜツグミが女の子じゃないんだろう、と本当に何度思ったことか。


 そんな馬鹿な話をしていると、教室前方の扉が開き一人の少女が入ってくる。


 サラサラな黒髪は肩甲骨あたりまで伸び、大きな二重の目と整った鼻梁は見る者を惹きつけ、小ぶりで潤った唇は楽し気に微笑んでいる。道ですれ違えば多くの男が振り返りそうな、誰が見ても美少女と認めるような女の子だ。


「おはよー。」

「おはよー、鍵山さん。」


 女子の集団のみならず男子からも挨拶がとぶ。男子は少し鼻の下が伸びている奴もいるな。

その女子は挨拶を返した後、俺達の方に来て隣の席に座る。


「おはよー、拓斗、ツグミ君。」

「おはよう、美桜。」

「おはよう、美桜ちゃん。」


 この女子は鍵山美桜(かぎやまみお)。私立朔月高校2年にして、校内3大美少女に数えられる一人だ。さらに言うなら、俺達二人の幼稚園からの幼馴染でもある。


 え、校内3大美少女の一人が幼馴染でうらやましいって?


 ふざけんじゃねぇ!!!!


 それが元で今までどれだけ男子から敵意の視線を向けられたと思ってる。

告白の仲介依頼とかもしょっちゅう来るし。

自分が告白されたことがないのに男子に体育館裏に呼び出されたのが2桁ってどうゆうことか。


 おかげで、来栖君は男子にモテモテだねって噂され、さらには腐がつく女子に『受け専の拓斗』と言われていたと知った時には発狂しそうになった。


 ちなみにそれを話した時の美桜は、


「なるほどなんだよ。でもね、みんな分かってない。大丈夫、私は拓斗×ツグミ推しだから。」


と、とてもいい笑顔で言いやがったので、デコピンを一発食らわせておいてやった。


 なお、美桜はミステリー研究部部員でもある。


 基本演劇部で活動して、ミステリー研究部は気が向いた時だけ来る幽霊部員だが、それでもミステリー研究部で3人そろって駄弁るのは俺の大切な時間ではある。なのでこいつら二人のためなら、それくらいの苦労はまあしょうがないかな。


 3人で雑談をしていると始業のチャイムが鳴った。今日も一日が始まる。


****************************


 キーンコーンカーンコーン。


 4時限目の化学の授業が終わって、昼休み。各々机を並べ昼食をとる。俺はいつものメンバー、俺、美桜、ツグミで集まる。


「さっきの化学の授業結構面白かったね。」


 ツグミが言う。


「量子力学の話?俺にはさっぱり分かんなかったよ。」

「あの先生、自分の好きな分野になると途端に饒舌(じょうぜつ)になるよね。量子力学は最も美しい学問である、ってね。」


 美桜が化学の先生の真似をして、眼鏡を持ち上げるようなポーズをする。無いはずの眼鏡がキラーンと光って見える。さすがの演技力。


「流石演劇部、似てる似てる。よっ名女優。」

「いやー、照れますね。もっと褒めて褒めて。」


 美桜が眼鏡キラーンを連発する。俺と美桜がふざけあっていると、昼食を食べる手を止めたツグミが唐突に提案してきた。


「ところでさ、実は今日の部活でちょっと行きたいところがあるんだけど。いいかな?」

「行きたいところ?」


 俺もふざけるのを一旦止めて、思わず聞き返す。


「そう。今日はさ、久しぶりに朔月(さくげつ)神社に行ってみない?」


 ツグミが部活で外に行きたがるとは珍しい。特に理由が思い浮かばず問いかける。


「神社?神社に何かあったっけ?」

「拓斗は知らないかな?最近噂になってるんだけど朔月神社に黒い影が出るらしいんだよ。」

「あっ、それ私知ってる。あれでしょ、黒い幽霊の話。」


 美桜が両手を顔の脇に持っていき、チロリと舌を出して幽霊の真似をする。

そんな仕草もいちいち可愛いのは美少女の特権だろう。


「私が聞いた話だと、なんか全身真っ黒で顔ははっきり見えないけど、ふらふら神社の本殿あたりをうろついてて、最後はふっと消えるらしいよ。」

「幽霊ねー。そっか、幽霊か、ふーーん。んで、ツグミはそれを確かめてみたいと。」


 俺は興味ない風を装いながらツグミに問いかける。

しかし内心では不安いっぱい胸いっぱいだ。

幽霊かー。やだなー幽霊。昔、幽霊が怖くて母さんにトイレに付いて行ってもらってたんだよなー。

もし本当に幽霊なんて居たら、またトイレに1人で行けなくなる。

この年で家族同伴でトイレとか、そんなことになったら社会的にヤバイ。

特に妹にはそんな情けない姿は絶対に見せられない。


「そうだね。朔月神社は古くからある神社だし、ミステリー研究部として検証してみる価値はあると思うんだよ。」

「本心は?」

「幽霊を見てみたいかな。それに気になることもあるんだよね。」


 瑞々しい唇に人差し指を当てて考えるような仕草をするツグミ。


「出たよ、ツグミの未知への探求心。」


 これはツグミの悪い癖だ。ツグミは大抵のことをそつなくこなせるせいか、未知のものや難しいことに飢えているきらいがある。

俺達二人は子供の頃から何度それに付き合わされたことか。

最後にこれが出た時は異世界との通信を試してみよう、だったか。


「どうする。」

「うーん私はパスかな、今日は演劇部の練習あるし。ほんとに不審者だったら困るから。もしなんかあたった場合のバックアップってことで。」

「了解。んじゃ、今回は俺とツグミの二人な。」


 よし、今日の部活の方針は決まった。こうして、俺とツグミは放課後、朔月神社に(おもむ)くことにしたのだった。

念のため、幽霊に会った時の対処法をグー〇ル先生にご教示をしてもらっておこう・・・。


****************************


 夕方、幽霊が出るという時刻まで近くのコンビニで時間を潰し、俺とツグミは朔月神社に向かった。


 GW(ゴールデンウィーク)前のこの時期、少し日は長くなってきたとはいえ、すでに周囲は薄暗い。そのせいか、参拝客は見当たらずシンと静まり返った境内は厳かな雰囲気とともに何かが出そうな雰囲気も漂わせている。

しかし、ツグミはあまり怖がってはいないようで、


「どこから探そうか。確か、噂では境内横の林の中みたいだけど。」


なんて(のたま)っている。


「林の中ってお前。流石にもし幽霊じゃなくて不審者だったらマジでやばいだろ。」

「いやいや、流石にずっと林の中に潜んでいるような人も居ないでしょ。それにもし何かあったら僕が拓斗を守るよ」


 あらやだ、なんて男前な発言。見た目は完全に女の子なのに、そのギャップにキュンときちゃう。


「いやいや、それなら俺が守るほうでしょ。俺、ツグミを助けるためなら魔王だって倒せちゃうよ。」

俺は力こぶを出すポーズをする。


「本当に拓斗なら魔王ぐらい簡単に倒せちゃいそうだね。」


 クスクスとツグミが微笑む。


 緊張した空気が少し弛緩し、俺達二人は本殿脇の林の中を歩く。濃い緑の匂い。本殿脇の林はしっかり管理されているようで歩き回るのに困らないぐらいには下草が刈られている。

そのまま、本殿の後ろの方まで回るが何も見つからない。そろそろ林を出ようと提案しかけたその時、


「拓斗、あそこ。あそこに何か見える。」


 ツグミが前方の木と木の間を指さす、そこを何か黒い人影のようなものが通った。

黒い影はそのまま林の奥の方に向かって去っていく。

俺は思わず立ちすくんでしまうが、ツグミは間髪入れず黒い影を追う。

俺は10秒ほど逡巡してしまい、それでもツグミを追いかける。


「くそっ、見失った。どっち行った。」


 既にツグミの姿も黒い影の姿も無い。焦った俺は、黒い影が最初に去っていった方向に走る。

やばい、ツグミを一人にはしておけない。

少し走ると先の木々の間から光が見え、そのまま林の外に出る。

そこは本殿の裏側だった。あたりを見回すと、本殿を囲う壁の一部に人が通れるぐらいの穴が開いており、その穴を通り黒い影が本殿の中に入って行くところだった。


 俺は迷わず黒い影を追い、そのまま本殿敷地内へ入る。


 中に入り辺りを見回すと、木製の階段を上った先、少し高い所にある本殿の扉が開いていた。

俺はそっと階段を上り中を覗き込む。何かあってもいいように慎重に中を確かめるが、そこには黒い影もツグミも居ない。



 しかし、そこには予想外の光景が有った。



 薄暗い室内。

正面にはヒノキだろうか木でつくられた胸辺りまでの高さの神棚とその左右に祭事に使う道具が整然と並んでいる。

その中央、ご神体を飾っていると思われる神棚の上に虹色に光る球が浮かんでいる。

大きさはソフトボール程だろうか、神々しい光を放ち、その色合いをわずかに変化させている。


 ただただ美しいと感じた。

俺は光に吸い寄せられるように、導かれるように本殿の中に入る。


 頭のどこかで理性が、これはおかしい、触らないほうがいいと警鐘(けいしょう)を鳴らすが、俺の本能がその手を伸ばす。


 虹色に光る球に触れそうになる瞬間、一瞬躊躇(ちゅうちょ)し手が止まるが、球から指先に怒りとも悲しみともつかない激情が伝わり、それが体の中を駆け巡る。



 そして俺は、その感覚に後押しをされるよう光の球に触れた。



 光の球は俺の手のひらに吸収されるように消え、


 そして、俺の意識は暗転した。

まずは1話を読んでいただいた読者の方にお礼申し上げます。いかがでしたでしょうか。フラグは見つかったでしょうか。フラグ自体は1章の中でもちょくちょく回収しようと思います。ちなみに僕は学生時代、フラグが立てられなかったか、立てても見えない人間でした(血涙)。そんな僕が書いた物語ですが、本編が大きく動くのは9話ぐらいからだと思います。読者の皆様にはそこまでぜひ読んでいただければ幸いです。もし、面白い、続きが気になるという方がいらっしゃれば、ぜひブックマークや評価をお願い出来れば嬉しいです!よろしくお願いしますm(__)m

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