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1-16  狂気の数秘学者

交差羽です。『中二病スキルで全てを救う』を16話を投稿させて頂きました、中二病と無双と困難に立ち向かう主人公が大好きな作者です。疾走する主人公も好きです、魔術で無双するのも好きです、白衣も好きです。

 その坑道は街はずれ、うっそうと茂った山中にあった。

 

 周囲が完全な闇に覆われている中、その坑道だけは明かりが灯っている。


 比較的新しい裸電球が左右の壁に掛けられ、はるか奥まで続いている。

ゆっくりと下に傾斜する穴は地の底まで続いているようだ。


 まるで、ここに目的のものがあると主張する様に、炎に群がる蛾をおびき寄せる様に、光を湛えながら。


 周囲には石炭を運び出すために使用されていたであろう狭い砂利道と、トロッコ用だろうか草木が生い茂り所々が歪みずれているレールがあった。また、その少し先には石炭を貯蔵・加工していたであろう古びた工場があり、電気はそちらから供給されている様だった。


「ここが美桜をかどわかした悪しき輩の巣か。常闇に続く穴とはさもありなん。ここが貴様らの墓穴となると知れ。」


 俺は右手で顔を覆いながら青い瞳を輝かせ、中に足を踏み入れる。


 絶対に美桜を助けると心に刻みつけながら。


******************************


 俺は慎重に坑道の中を進む。

自身の影を伸ばし物理的な作用を持たせる魔術を使い、罠の類を警戒する。


 しばらくは人が10人手を広げて並んでも優に歩ける程度の真っ直ぐした道だった。

200m程は進んだが、その間特に罠や敵が現れると言った様子は無かった。


「まさか外れを引かされたか。」


 そう思い、焦りが足元から登ってくる。


 さらにしばらく進むと道が枝分かれしていく。俺は追跡魔術の方向を確認しながら枝別れを進む。

しばらく5m程の狭い道を歩いていると、その奥からズリズリと言う足音が響いてきた。


 その音は徐々にその数を増やしていき


ズリ、ズリ、ズリ、ズリ、ズリ、ズリ、ズリ、ズリ、ズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリズリ


 何度か聞いた音、しかし嫌な思い出しかない音が段々と近づいてくる。

しかし、今だけは安心できる


「この道筋が囚われの姫へと続く道で間違いないようだな。有象無象どもよ、貴様らに用はない。我が闇の贄となるがいい。」


 先手必勝、俺はそう言って駆け出す。


 奥からは狭い通路をわらわらと数十体の異形が迫ってくる。


 しかし、その形態は以前に見た異形達とは異なる。

全身の歪さ、獣のような体躯は変わらないが、その頭部に付いているものが以前の女性型ではなく、牛の頭だったり、鹿の頭だったり、鳥の頭だったりしている。嫌悪感を催すところは変わらないが、以前の異形達と比べると動きに無駄が大きく、他の異形との連携も取れずぶつかってバランスを崩しているものも居る。


「奴らの劣化版か。ならば容易い。ここは押し通らせてもらう。」


 俺は奴らの最前列に闇魔術を叩きこむ。以前よりスピードも威力も上がった魔術を。


「闇よ、深き闇よ、形為せ。ダークマテリアライズ:モードランス!!」


 さらに今回のダークランスは螺旋状の溝を刻み、回転をかけ破壊力を増している。


 指揮者のように両腕を広げた後に体の前で素早く交差させる。十数本のダークランスが発射され異形達の前列に着弾する。


 前列の異形達はなすすべも無く上半身や頭、腹を貫かれ倒れ伏す。


 さらにダークランスは勢いを殺さず、10体ほどの異形をまとめて吹き飛ばす。さらに都合のいいことに、この異形達は以前の異形達と違い再生能力がないようだ。警戒しながら観察したが再生する様子はない。


 むしろ以前戦った異形達が特殊個体だったか。


 そう思いながら俺は駆ける。

先ほどのダークランスで吹き飛ばされた異形達の死体に邪魔され後続がもたついている。


 俺はさらに追加のダークランスを形成する。


 今度のダークランスは1本。けれど大きさは2m程で通路の半分近くを占める。俺は腕を前に突き出し、それにも回転をかけて思い切り射出する。打ち出されたダークランスは敵陣の中央を貫き、1本の道を作る。俺はそれに向けて一直線に駆け抜ける。


 当然異形達はその穴を埋めようと左右から迫ってくる。


「漆黒より出ずる闇の御手、ダークネスブロー。」


 俺は手足を闇の魔術で強化し、それを手刀で弾く。さらに合気道のようにいなし、避け、時に相手の胴に掌底を叩きこみ、時に回し蹴りで数体まとめて吹き飛ばす。

出来るだけスピードを落とさないように何とか異形の群れを駆け抜けると、


「深き闇に沈め、ダークスワンプ。」


 俺と異形達の間に闇の沼を作り出し、追撃を防ぐ。

そのまま、異形達を置き去りにしてさらに駆ける。奥へ奥へ、下へ下へ。気分はまるで地獄への片道列車。


 けれど、地獄だろうと奈落だろうと美桜が囚われているなら、俺の大事な幼馴染が捕まっているのだというなら、俺は喜んでその道を駆け下りよう。全力で、全力で、全力で。


******************************


 幾度戦闘を繰り返しただろうか、恐らく10回程度か。正直俺はかなり疲労していた。

痛む全身、手足は重く補助魔術がなければ正直動かすことも出来ないだろう。


 元々はただの高校生、あのような異形と戦うだけでも異常なのだ。それを10回。


 やや思考もぼやけている感じがする。


 だが、だがそれでも俺は前に進む、進まなきゃいけない。美桜が待ってる。絶対にあいつを一人になんてしておけない。


 俺はその思いだけで坑道内を駆ける。

そうしていると、突然大きなドーム状の空間に出た。そこは今までの坑道とは違い壁は綺麗に整えられその痕跡も新しい。


 明かりも、先ほどのような電球の明かりでは無く、地面の線からうっすらと立ち上る赤黒い光によって占められている。

そして何より違うのは、ドームの中央、少し高くなった祭壇のような場所に白い薄絹を纏う1人の少女が、傍にある神鏡から伸びる黒い鎖に手足を縛られながら横たわっていた。


「美桜!!!」


 俺は思わず駆け寄ろうとするが、その前に声がかけられる。


「おやおや、お客様のご到着ですね。」


 俺は警戒して思わず立ち止まる。

赤黒く光る線よりも壁際、箱型の電子機器が備え付けられている異質の中においてなお異彩を放つそこから一人の白衣の男が進み出た。


「ようこそお越しくださいましたです。わたくし、この度の主催者である、エプタ・サモス・エレーミスと言いますです。以後お見知りおきをです。」


 そう言って、しわくちゃで薄汚れた白衣の男はケタケタ笑いながら、片手を胸に当て、まるで貴族がするかのような礼をしてきたのだった。

まずは16話を読んでいただいた読者の方にお礼申し上げます。ついに拓斗君が異形達に一矢報いて、美桜ちゃんの元に辿り着くことが出来ました。白衣の科学者は大体黒幕になることが多い気がします。白衣の科学者は大体おしゃべりでネタバレすることが多い気がします。気になる人は続きを読んでいただければ幸いです。

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