今までの自分から卒業を
中学校の卒業式の最後、壇上に立った卒業生達が合唱する。
クラスメイト達が涙ぐんだり大泣きしたりしながら、指揮を振り、ピアノを弾き、声を合わせて歌っている中、私は無表情で歌っていた。
「あんた、やる気が無さそうに歌ってたでしょ?」
卒業式を終え、号泣する先生のありがたい最後の言葉を、すすり泣く声があちこちから聞こえる教室で頂戴すると、卒業式に出席していた母と共に家に帰った。
「そんなわけないじゃん。あれでも真剣に歌ってたよそういうお母さんだって、虚無の顔でこっちを見てたじゃん」
本当、親子って似るものなんだね。
そんなことを呑気に思っていると、普段は放任主義の母から珍しく心配そうな顔で私を見た。
「あんた、カナちゃんと同じ高校じゃなくて本当に良かったの?」
カナちゃんというのは、小学生の頃からの友人だ。
「良いよ。私の頭で入れる高校はあそこだけだったんだから」
「そう」
心配そうに見つめる母からそっと目を逸らした。
ごめん、お母さん。けれど、これもこれからの私のためだから。
昔から人見知りな私は、自分から声をかけることが物凄く怖かった。
カナちゃんと友達になれたのも、たまたま席が隣同士で彼女から声をかけてくれたから。
そして、社交性のある彼女と一緒にいたことで、小学校・中学校での人間関係はそこまで不自由しなかった。
けど、私は思った。
『このままでいいのか?』と。
学生の時ならまだいい。けれど、社会人になったら?
人見知りを理由に周りと関わりをカナちゃんに頼っていた。
けれど、それではダメだ。
少しでも人見知りな自分を変えよう!
そんな思いを胸に、私は頭の悪さを理由に友人と同じだった志望校を変えた。
「確か、高校行きのバスは......」
志望校に合格し、入学式を終えた翌日、真新しい制服に身を包み、真新しい鞄を持ちながらバスターミナルをさ迷っていると、自分と同じ制服を着ている女の子がバス停の前で立っていた。
ここには、頼りにしていた友達はいない。
握っていたスカートから手を離すと、勇気を出してその子に声をかけた。
「あ、あの!」
「はい?」
その後、声をかけた女の子が実は私と同じ新入生で、バスの中でその子と話しているうちに友達になった。
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