61.
黙って手紙を読んで、ミラはぽろぽろと涙を流した。
涙で手紙が汚れないように、そっと手紙を机に置く。
レオンは何も言わなかった。何が書かれているかも聞かなかった。
ただ、涙が溢れて、次から次へと零れ落ちるのを見て、そっとミラに近づいた。
「ねえミラ、抱きしめてもいいかな」
ミラは答えられなかった。
するとレオンはそのまま、ゆっくりとミラの背中に腕を回した。
レオンの胸に顔を埋めて、ミラはそのまま声もなく泣き続けた。レオンはミラが落ち着くまでずっと背中をさすってくれていた。壊れ物を扱うように、優しい手つきで、そっと撫でられて。
ミラは次第に落ち着きを取り戻す。
きっとひどい顔だ。鼻水を拭いて、鼻も真っ赤、目も真っ赤。
「——ありがどう、ございばす」
声すらおかしい。
レオンは笑わなかった。うん、と言っただけだった。
「お母さんからの手紙、みつかってよかったね」
「はい」
良かったら、とミラはレオンに手紙を渡した。
「いいの?」
「はい」
レオンはミラにハンカチを渡すと、元の椅子に戻って手紙を読んだ。
「——愛されてるね、ミラ」
「はい」
ミラはしっかりと答えた。
わかっていたけど、改めて言われると、やっぱり、本当に嬉しい。
「母は、厳しくしたことを謝ってますけど……そんなことないって、言ってあげられたら良かったです」
母の教えのおかげで、今日まで来れたと思っている。
くじけずにやってこれた。
「でも、幸せになってって書いてあるから。ミラが幸せなら、それだけでお母さんは嬉しいんじゃないかな」
そうだろうか。そうだといい。
母が幸せだと思ったのと同じ、それ以上に、ミラの方があの母の子に産まれて、幸せだったんだから。
「そういう気を遣う所、よく似た親子だね」
「私、父に似てるそうです」
「そうだね。書いてるね」
結局、父親の事はわからなかった。
ミラは箱の中の指輪も出してみた。中指に嵌めても、まだ大きい。
「男物だね」
シルバーの、特に何の変哲もない指輪だった。男物で、裏に何か彫られているが、それも王国の言葉ではない。
「これも、魔法の痕跡がない。それなのに精巧な技術で作られているね」
「父の国は、魔法よりこういった技術が進んでいるんでしょうか」
「そうだね。そんな国があるのかな……」
レオンは不思議そうに首を傾げた。
「……私、生活魔法を考える時、唐突に、ふっとアイデアが湧いてくるんです」
「へえ」
「生活魔法だけじゃなくて、普通に暮らしていても、もっとこうしたら便利なのにって」
「確かに、子供の想像力豊かな域を超えて、ミラは独創性に溢れていたもんね」
「——父は、ものすごく……ほんとうに、途方もなく遠くから来たのかもしれません」
何となくの勘だけれどそう思う。
ミラの視線は箱に落ちた。レオンもつられて箱を見つめる。
「そうかもね。魂で受け継がれた記憶、みたいな」
だからミラは生活に、効率よく魔法を取り入れるなんてことを始めたのかもしれない。
サビナが沈黙を守ったのは、知らなかったからだったのだ。
サビナも知らない、という事はわかった。それはきっと、限りなく偶然が重なって。
本当に運命のような出会いをして、そしてまた突然に別れたのだろう。
けれど、愛を誓って、それを疑う事のないほどに絆は深まっていた。
「ちゃんと愛し合って生まれて来たんだとわかると……嬉しいものだね」
レオンは黙って頷いた。
決して平坦ではない道のりだったが、ミラがこの先傷つかないのと同じくらい、過去を振り返っても傷つかないといいと思う。
「私も、予感がします」
ミラがはっきりと言い放つ。
何のことかと思うレオンに、ミラは続けた。
「私も、母のように、素敵な恋をするような気がします」
レオンの目がはっと見開かれた。
「それって……」
「はい。——たぶん。一生分の愛を頂いてますから」
ミラが朗らかに笑った。
いつものあどけなさの残るような、天真爛漫な笑みともまた違う。
恋をして、輝いている目をして、まっすぐにレオンを見つめ返していた。
ここまでお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました!!
ふわりと思い立っちゃって
まったりと書き始め、そのまままったりと書き続けて・・・
特にこれといった山場も、魅力あふれるヒーローもおらず
(個人的には、好きなキャラはたくさんいるんですよ(;´Д`A ```)
それでもこうして、呼んでくださる方がいる。本当にありがたいです。
良いねしてくださった方、ブクマして下さった方、ただふらりと読んでくださった方。
お付き合いくださいまして
本当にありがとうございました!!
まだまだミラは独り立ちしてスタート地点に立ったところなので、王妃だのなんだのと考えるのは、まだ先になります。
今いる学園の生徒を卒業させて。
一期生の子達は良い子ばかりでしたが、人気が出た学園に入って来た新入生は、平民のミラを馬鹿にしちゃったりなんて、するかもしれませんね。
でも、着実に強くなっていったミラに怖いものなんてありませんので。
しっかりとキャリアを積んで、やりたいことをやりつつ、やらねばならぬこともやって
レオンとの未来も思い描けるんじゃないでしょうか。
王城からの誘いには、今すぐには乗れませんけれど
それでは、前作の執筆に戻ります。
皆様、本当に寒いので、どうぞお足元、体調にお気を付け下さいませ。
またお会いできるのを楽しみにしております。




