この世界は思っていたよりも残酷だった
俺は目を覚ました。
そこは、見た事がない真っ白な部屋だった
そうか、俺は死んだんだ。
死んだ?おれ、なんで俺は死んだんだ?
でも、俺は確実に死んだ。
なのに、目を覚ました。
これはどういうことか。
生まれ変わったのか。
転生でもしたのか。
立ち上がり、そこにあった姿見を見ると、そこには知らない人間がたっていた。
俺の知っている俺とは違かった。
何も分からない俺は部屋を出る。
探索を始める。
何をすればいいのか。
何をしなくてもいいのかもしれない。
でも、何となく脱出した方がいいのかなとそんな気持ちになる。
俺が寝ていた部屋を出ると、隣にも部屋、隣にも部屋が続いていて、無限に部屋が続いてるようだ。
大きな屋敷のようだ。
隣の部屋を開けてみると、人がいた。
寝ていた訳では無い。
ここは一人一人分け与えられた個室が並んでいるのかもしれない。
「誰だ?」
男の声だった。
「あの、分かります?これが何か」
「新参か?」
何か知っているような雰囲気だ。
「です。」
すると、男は教えてくれた。
色々なことを言われ、混乱するがまま男の部屋を出て、自分の部屋に戻る。
そして、頭の中で言われたことを整理する。
この世界は死ぬ前の世界とは違う。
脱出ゲームするみたいだ
脱出ができたら、いいことがあるみたいだ。脱出したことが無いから分からないけどな。男はそう言っていた。
1度死んだ俺たちなのだから、世界に帰れるとか、そんな感じなのだろうか。
そして、この脱出ゲームは普通の脱出ゲームではない。
普通に人が死ぬし、殺されるかもしれない。
それがなぜなのかは分からない。
単にミッションとかで人を殺さなければいけないのかもしれないし、ただ単に頭がおかしい人間がここに来てしまい、人を殺して快感を得ているだけかもしれない。
そして、死んだ人間は……
そこで男の言葉は止まった。
他にも、俺の姿が変わっていることについてなど。
死んだ人間は姿が変わってここにいるらしい。
理由は教えてくれなかったが、姿も変わったことだし、名前も他の名前を名乗ることを推奨された。
最後に男は言っていた。
「ゲームに参加するか?」
俺が答えるまで、帰してくれなかった。
俺は参加するといった。
それ以上は何も無かった。
謎は多いままだった。
結局俺が分かったことは、脱出すればいい。
ただそれだけ。
でも、なんで俺がこのゲームに呼ばれたんだろう。
気になって、また男の場所を尋ねた。
男はもう、いなかった。
ーーーー
いなくなった男の部屋。
なんだか姿見が黒光りしている。
俺の部屋にもあったが、普通の色だった。
その姿見の所へ行く。
それをずらすと、穴があった。
そこをくぐる。
すると、俺は落ちていった。
滑り台のようなもので落ちていく感覚。
真っ暗闇で何も見えない。
そのまま俺落ちた。
痛みは感じなかった。
すると暗闇の前にドアがあるのを感じた。
その上には文字が書いてあった。
黒以外の唯一の文字。
赤色だった。
ゲームスタート
そう書かれたあった。
きっとこの扉を開けたらその脱出ゲームが始まるのだろう。
俺は扉を開けた。
ーーー
扉の先は流石に真っ暗ではなかった。
俺が最初にいた部屋とかそこの廊下の雰囲気と似ていた。違う点は並んでいるドアとドアの間の幅がさっきと比べて明らかに大きいこと。
つまりこれは各部屋の大きさがさっきの俺が寝ていた部屋よりも大きいことを意味する。
その大きさも部屋によって違うが、どの部屋も2倍以上はあるし、大きいものだと5倍近く大きい部屋もあるようにみえる。
まず、すぐ近くのドアを開けた。
図書館だった。
何をするのか。
何かヒントでもあるのだろうか。
俺は探索することに。
ドアから入り、人がいない受付を通り過ぎる。学校の図書館のようなボリュームで本が並べられている。本棚の高さは高いというか天井まであって、手が届かない本などたくさんだ。
本棚は壁そして五列の本棚が建てられていた。
2列目の本棚を通る時、人がいた。
女の子だった。同じ年齢くらいの。
「だ、誰!?」
女の子は声を上げた。
「悪いものではない。えっと、不知火だ。」
俺が咄嗟に思いついた名前。
不知火を名乗る。
ちょっと恥ずかしいが、それを考えるのはやめよう。
「えっと、私は宵闇時雨です……」
かっこいい名前だな。
と思ったが、これが考えた名前なのかと思うとちょっときつい気がする。そう考えるのはこれからやめることにしよう。
「やっぱイタい名前が多いですね!」
自分からそれを言う宵闇時雨。
「そうなのか?」
「はい。現実じゃあ中々ないような名前ばっかですよ。ありきたりな名前だと被ったり、現実世界の時の知り合いの名前だとなんか気持ち悪いですからね。」
なるほどな。じゃあ、俺の不知火も悪くないか。けっこういそうだけどな。下の名前は必要性が出てから考えればいいだろう。
「脱出ゲームなんだよな?これ」
「みたいですね。でもなんだか普通に死んだりするみたいなので、慎重にやってます。今はここで情報を探ってます。」
「そうか。もし良かったら一緒にいいか?」
仲間を増やしておくのは大事だ。
人数が求められる時があるかもしれないし、もしもの時に自分の身を守るために誰かを犠牲にしなければならないかもしれない。
あまり、こんな女の子を道具扱いしたくはないが、そうしなければ自分が死ぬ時がある可能性だってあるのだ。
「あ、全然いいですよ。むしろ怖かったんで嬉しいです。」
「あの、」
「ああ。」
「どこかで会ったことありますか?」
「すまない。分からない。」
「へへっ。ですよね!」
宵闇は場所を移動し、本を手に取る。
なにか感じたのだろうか。
裏になにかあったりするのかもしれない。
俺は視線をそちらへやった。
その時だった。
宵闇が手を伸ばした本の所から矢のようなものが放たれた。
音がした。
鈍い音だった。
それは宵闇を捉えた音。
赤色の血飛沫が本にかかる。
俺はこのゲームの恐怖を今この瞬間はっきりと理解した。
宵闇は顔の右半分を矢で射抜かれた。
右目から頬にかけてのあたりを射抜かれた。
そのため、脳には異常がないのか、意識はかろうじてあるようだ。
俺は宵闇の元へ駆け寄る。
「大丈夫か?」
場所が場所で血を抑えるのも難しいし、変に痛みを与えるのも申し訳ない。
俺は対応に困る。
「残念ですが、早くもお別れみたいです……」
あまりにもあっけなさに、俺の言葉はでなかった。
死に際の宵闇は必死に最後こう告げた。
「私の名前は……ーーーーーー」
現世での名前だった。
なぜ、突然それを言ったのか、分からないが、なんだか聞いたことがある気がした。
彼女の遺体を俺にはどうにもできず、その場を去った。
隣の部屋に行った。
ーーー
水族館だった。
入る前から部屋が大きいことは予測できたが、水族館となると、想像以上の広さかもしれない。
薄暗い水族館の雰囲気。
一面に水槽が並べられ、色んな魚が並べてある。
扉付近は小魚系の場所のようだ。
それを見る二人を発見する。
男女だ。まさかこのゲームでイチャついているのだろうか。
俺がそこを通り過ぎようとすると、声を掛けられる。
「そこの君〜誰〜」
ギャルのようだ。見た目から予測は出来たが。
金髪でスタイルも抜群なようだ。
隣にいる男性もイケメンだ。
「あ、不知火と申します」
とりあえず名乗っておく。
「あっそ。なにしてんの?」
怖。この人。
「いや、何すればいいか分からなくてとりあえず探索してますね」
「あーねー?うーんそうね〜うちらも少し探したけど部屋多すぎて訳わかんないし、水族館に何があるっていうのって感じ〜」
「ですね。」
申し訳ないが、この人たちは役にはたってくれなさそうだな。
ここを去ろうとすると、突然ガラスが割れたような音が聞こえた。
「え、なに〜」
「すごい音だな」
2人も流石に気づいた様子だ。
俺は無言で音のする方へ向かった。
「うちらも行こー」
後ろから2人もついてきているようだが、気にするのはやめておく。
とにかく音の場所へ行かないと。
そこそこ歩いたところで、奥の方ににはとんでもない光景が広がっていた。
それよりも、早くここを逃げなければならなかった。
水が迫って来ている。
なのに、その水の先に人が見えた。
クジラも見えた。
とにかく一旦逆走し、戻る。
迫る水から逃げる。
水族館から出る。
「今のあれだよね?」
さっきのギャルが言う。
「ああ。」
二人の会話が気になり、尋ねてみることに。
「なにかあったんですか?」
すると、男が説明してくれた。
「ああ、なんか変な男が水族館に来てな。そいつはこう言ってた。」
すると、ギャルの方がそれを演じた。
「クジラが脱出の鍵をもっていたらどうする」
「てな。変なやつだったよ。まあ確かにないこともないがな。多分そいつがガラスを割ってクジラに挑んだんだろう。無謀だな。」
と、そこで突然扉が空いた。
後ろの扉。
水族館の扉だ。
出てきたのは、男だった。
「え、あんた、死ななかったの?」
驚いた様子のギャル。
まさか、クジラに挑んだ男が?
「そもそも、水はどうなってるんだ?浸水してるんじゃないのか?」
ギャルの隣の男が的確なことを聞く。
「あ、あれはなんか、そこにあったボタン押したら、床に穴空いて水抜けてった。」
「で、クジラはどうしたわけ?」
すると、男はまさかのものを見せてきた。
鍵だ。
「ウソ。」
「まじか。」
二人は驚愕する。
もちろん俺も驚きを隠せない。
そもそも、どうやってクジラを倒したんだ。
「いや、ダミーのクジラだった。」
だとしても、よくガラスを突き破ってそこまでしたな。
そう思っていた時だった。
隣の二人が動いた。
あまりにも突然。
なんのために動いたのか。
鍵を盗むためだ。
しかも、それは大胆すぎる行動だった。
ギャルがポケットから取り出したのはナイフだった。
でも、鍵を持った男は二人を一瞬にして反撃した。
ガラスを割る時に使ったであろうハンマーで二人を叩き、殺した。
俺は立ち尽くす。
「お前はどうする?」
「ついて行ってもいいですか?俺、武器とかなんもないっす」
「勝手にしろ。」
俺は変な男について行くことを決めた。
ーーーー
男は水族館の隣の扉に手をかける。
俺はそれを見つめる。
まさかの鍵がかかっていた。
男はさっき見つけた鍵をさした。
空いた。
そこには、武器の倉庫があった。
「す、すげえ」
思わず声を上げる俺。
男は色々な武器に触れ、何個か選んでいる。
俺は一応ついて行ってるだけなので、武器は取らないでおく。
「お前も何個かとっておけ。」
すると、そう言って頂いたので遠慮なく武器を選ぶ。
まず、色々な用途に使えそうで持ち運びもしやすい高飛び棒のようなもの。
そして、刀を俺は装備した。
銃などはなく、色々な刀やドリルやハンマーなどがあった。ドリルやハンマーは持ち運びがきついためやめておいた。
「あのー名前だけでも聞かせてもらえます?」
俺は名前を聞いてみる。
「黄瀬川だ。」
「黄瀬川さんですか。俺は不知火っす。」
そのまま黄瀬川は黙ってこの部屋を出た。
隣の部屋ではなく反対側にある部屋に入っていった。
ーーーー
入ると、受付のような場所があった。
書いてあることが一つだけ。
「ゲームに参加しますか?」
の文字。
文字の下には扉が。
参加するなら扉に、しないなら出ていけということだろう。
俺と黄瀬川は扉に入っていった。
真っ白な空間だった。
何も無い。
30人ほど人がいた。
唯一あるスクリーンにゲーム開始までお待ちくださいとだけ書かれていた。
特に誰と会話去ることも無くゲームを待つことに。
五分くらいでゲームは開始された。
真っ白だった部屋は一瞬にして真っ黒になった。
それ以降は何も起こらない。
少し聞いたことがある音がした。
人が死ぬ音だ。
俺は理解した。
これはシンプルなバトルロワイヤル。
生き残ればいいのだろう。
じゃあどうすれば生き残れるのか。
答えは単純だった。
俺はすぐ側にいた黄瀬川から離れ一旦壁に張り付く。
真っ暗でほとんど見えないため、移動すら困難。壁に張り付けば、後ろからの奇襲もない。
かろうじて人影はある程度見えるくらいの明るさだった。とにかく俺はできる所までは攻撃しないことに。
と、そう上手くも行かなかった。
こちらへ一人向かってくる。
もちろん誰かは知らなかった。
相手はバットを持っていた。
俺は刀で対抗出来る。
戦闘態勢に入る。
扱い慣れない刀で1度相手の攻撃を防ぐ。
そして、カウンターで相手の腹をぶち抜く。
勝ったみたいだ。
気づいた頃には、もう人の気配は一気に少なくなっていた。
少し歩くと、そこら中に人が倒れていた。
「お前で最後か。」
そう言われた。
相手はあの男。
黄瀬川だった。
「弱いやつばっかだった。」
黄瀬川が言う。
あまりにも人が死ぬスピードが早すぎる。
「残念だが、お別れだ。どちらかは死ぬ運命みたいだ。」
刀同士の戦いが始まる。
中々俺も強いみたいだ。
攻防一体の状態が続く。
だが、やはり相手が1枚上だった
隙を疲れ、俺は右腕を失ってしまう。
刀を持っていた腕、俺は痛みと共に、後退する。
痛さのあまりしゃがみこむ。
まずい。
死ぬ。
その時、俺は床に銃が落ちているのに気づいた。
誰かの物だろう。
これなら、ワンチャン巻き返せるかもしれない。
俺はゆっくりとそれに手を伸ばした。
黄瀬川がトドメを刺しに来たところを全力で避けた。
そして、男の後ろに回り込み銃を一発、二発、三発と打ち込む。
黄瀬川はよろけた。
俺は銃投げ捨て、もう一度刀を握る。
男に近づく。
どこか銃を当てることに成功したのか、黄瀬川は明らかに動きが遅くなっていた。
俺も黄瀬川も刀を伸ばした。
俺の方が早かった。
黄瀬川の心臓を刀で、刺した。
ーーーー
何とか生き残った俺だったが、もうこのゲーム。脱出することを諦めようとしていた。
まずは右腕の喪失。これはやはり大きかった。
次に、さっきの殺し合いで勝ったのにも関わらず、何も無かったということ。本当にどういうことなのか。
このゲームどうやったらクリア出来るのだろうか。
まだまだ扉は続いているし、今ここまで命の危機にさらされたのにも関わらず、進捗は未だにゼロ。
廊下で一人。俺は座ってそのまま仰向けに。
しばらく、動かなかった。
ーーーーーーー
その後も、俺は結局探索を続けた。
次の扉もその次も。
ボロボロな体の俺。
何とか生き残り続けた。
もう何個の扉を開いただろう。
だが、未だに終わりは見えない。
今までの扉の中で何があったのか。
動物園だったり、学校だったり、ホテルだったり。なんでもありだった。
でも、そこで何があったかは語らない。
なぜなら、何も無かったから。
でも、精神的疲れ以外の疲れはなかった。
例えば、睡眠。
ここでは寝なくてもやって行けるのか、睡魔が襲ってくることはなかった。
それと同じで、食欲も湧かない。
食べ物がなくてもやっていけるようだった。
もう何日経ったのだろう。
それも分からなかった。
でも、もうやることは探索しかすることがなかった。
なんなら、少し、楽しめるようにまでなってきてしまった。
また、扉を開く。
お化け屋敷だった。
結構リアルだな。
そう思って歩くが、違かった。
本物だった。
刀を構える。
妖怪が襲ってきた。
強くはなかった。
重要なのはそこではなかった。
何者かがこちらに向かってくるのを感じた。
お化けなんかじゃない。
人だった。
そいつは華麗な刀裁きで一瞬にして俺を圧倒した。
何も出来ないまま、俺は腹を刺される。
俺は立つことすら出来なかった。
もう俺も諦めたのかもしれない。
床に突っ伏して倒れた。
死んだと判断したのか何者かは去っていった。
俺はもう限界だった。右腕も失い、そもそも体全部ボロボロなのに、腹を刺され、血が流れていく。
もう、ここまでなのか?
俺は四つん這いになりながらも、何とか必死の思いでお化け屋敷を出ることは出来た。
そして、何とか次の扉に入る。
もしかしたら病院だったりするかもしれない。
それを期待して、俺は進む。
遊園地だった。
なんで、夜空があるんだろう。
ここは室内じゃないのか?
不気味だった。
人気が少ない夜の遊園地。
遊具は全部ライトアップされて稼働している。
誰も乗っていないのに回るメリーゴーランド。
恐怖さのあまり俺はここを去るか迷う。
でも、残念ながら、扉がもう一度空くことは無かった。
この系統はたまにあった。
一度扉を開けたら、もうそこからは出られないなんてことは今までもあった。
出口から出た先が、入ってきた時の場所と同じなのかは分からなかった。
俺は意識が朦朧ながら、夜の不気味な遊園地を歩いた。
立ち止まった。
ジェットコースターだった。
誰も乗っていないのに、急速に走るそれ。
なんだか、興味が湧いた。
俺、好きだったんだジェットコースター。
ちゃんと乗れそうなので、俺は乗ることに。
何人か乗れるのに、乗っているのは俺1人。
ちゃんとベルトを下ろし、動くのを待つ。
もう今にも倒れそうだった。
もう、降りる頃に意識はないかもしれない。
発射した。
鈍い音がした。
自分の頭がはねられた音だった。
ーーーーー
俺は死んだ。
でも、まだ意識がある。
また、別の場所に飛ばされた。
今度は真っ暗な場所。
黒以外何も見えない。
声が聞こえる。
「ゲームオーバーだ。」
そんなの分かっている。
俺は黙り続ける。
「選択肢をやる」
聞いたことがある声だった。
おそらく、最初に説明してくれた男の声だ。
そうか、あの男は予め配置されていた。
説明役だったのだ。
「もう一度脱出するか。しないか選べ。」
意味がわからなかった。
「もう一度脱出するなら、また記憶を脱出する前、つまり前の世界で死んだ時まで記憶を戻す。」
脱出ゲームで得た知識を次の脱出に生かすことは出来ないということか。
「しないと言うなら、お前は死ぬ。」
死んだら、人間はどうなるのか。
てかそもそも、もう現世で一度、ここで一度死んでいる。
輪廻転生だとか、諸説あるが、俺は何も無いと思う。
「生まれ変わりなんかない。死んだら終わりだ」
どうするべきなのだろうか。
でも、生まれ変わりがないのだとしたら、答えは一択なのだろう。
「もう一度やります。」
「承知した。なら最後にもう一つ。」
「お前が人生で1番好きだった人を言え。」
なんだか鳥肌が立つような感覚がした。
そこで俺はやっと気づいた。
あれ、右手がある。
全てを理解した気がする。
そもそも俺は現世でなんで死んだんだっけ
きっと急に死んだんだ。
このゲームに招待されるために
「ーーーーーーーー。」
馬鹿野郎。言ってしまった。
俺の大好きだった人の名前を。
このゲームは単純だったみたいだ。
このゲームの目的。
それは、人生をやり残した人がここで生きることが出来る。
何をするのも自由。
脱出しなくたっていい。
きっとそれが一番いい。
そもそも、男にゲームを説明された時点で、断っていれば、あんな死に際のゲームにならなかったのかもしれない。
だから男は俺にゲームに参加するか聞いたのかもしれない。
快適な場所なのだから、脱出しないで、好きな人とイチャイチャしてるのが一番いい。
今の俺なら、もう一度脱出ゲームを開始して、脱出しないで、そこで楽しい日々を過ごす。
でも、記憶を戻されるのだからきっとまた俺は脱出しようとするんだろう。
脱出できるわけがないのに。
薄々気づいていた。
あまりにも脱出は難しすぎた。
おそらく、出口なんかない。
きっとここは脱出しないで、好きなことをするための場所だ。
例えば、好きな人と過ごすこととか。
それが本来の目的だろう。
実際、安全で楽しい部屋も、あったにはあった。
最初の水族館なんて誰かがガラスを破壊してなければ普通の場所だった。
そして、死んだ俺は聞かれた。
好きな人を。
それは恋愛的な意味なのか。そうじゃないのか。
そんなのは多分なんでもいい。
俺が死んだ理由。
それは、きっと呼ばれたんだ。
そして今、俺も呼んでしまった。
死ぬ時に未練を残してった人間。
それらが集まってできたこの脱出ゲーム。
その人たちによって世界から死んでもない人たちが死んでもないのに招待される。
俺は後者だ。
きっとここに来るために死んだ。
脱出できないゲームを脱出する。
それを楽しむ。
死んだら終わりか、また脱出するか。
脱出するなら、好きな人を呼べる。
そして、呼ばれた人は死んでもない人がまた死んで、ここにくる。
そして再開を果たし、何をするのも自由。
そう、俺は現世で死んでもないのに、このゲームに招待される為だけに死んだのだ。
そして俺は今大好きだった人の名前を言ってしまった。
きっと彼女も死ぬのだろう。
そしてここに来る。
そして、俺と再会する。
でも、姿が変わっている俺を俺と分かるのだろうか。
そうか。あの名前を教えてくれた最初の女の子はもしかしたら本当に死ぬ前の世界で会ったことがあったのかもしれない。
もしかしたらあの子が、俺のことを呼んだのかもしれないな。
意識が遠のいていく。
きっとまた、始まる。
脱出ゲームが。
記憶が戻されるということは、次は2回目のゲームということも忘れるのだろう。
もしかしたら俺は、もう何回もこのゲームをしているのかもしれないと思うと、あまりに怖い。
この事実に気づいた今、もうこのゲームをやめるほうがいいのがしれない。
でも、俺はやることを決めた。
やっぱり、まだ生きたりなかった。
もし、次のゲームで俺は早い段階でこの事実に気づき、脱出を試みることなく、楽しい人生を送れるかもしれない。好きな人と、再会して……
きっとこの考えがダメなんだろうな。
俺はきっとそれを信じてこれからまた何回も死ぬんだろう。
そうして、俺は目を覚ました。
そこは、見た事がない、真っ白な部屋だった。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
ぜひ、五つ星評価などしてくださると嬉しいです。
良かったら、私の作品から「人の恋路をスパイしていたら、いつの間にか恋人が出来ていた。」って話をかなり連載しているので、良かったら見てやってください。