44話 手を繋ぐこと
台風は大丈夫でしたか?
作者は大丈夫でした。
特に変わりのない日常がまた始まるのです。
俺は苦笑いしながら、目の前の光景を見ていたらもう昼前になっていた。
「あの、すみませんがそろそろお昼なので帰ろうかと…」
昼になるのでご飯を食べに帰ろうという思いと、この空気のままいるのは気まずく感じていた俺はそう言って帰ろうと思ったのだが。
「おっ!それならうちで食べていきなさい!」
食い気味にそう言うおじいさん。ようやく突破口を見つけたとばかりに勢いがすごい。
「どちらかというとここは私の家なんだけどね?」
少し不満そうに楓はそう言う。
まあ実際住んでいるのは楓だもんな。実の祖父だとしてもそう言いたくもなるのだろう。
「そう言わないであげて?楓ちゃん。おじいさんも見栄を張りたいのよ」
と言うのはおばあさん。
ハッキリと俺にも聞こえたと言うことはもちろん、おばあさんの隣のおじいさんにも聞こえているわけで、その当の本人は苦笑したまま固まっていた。
相変わらず、おじいさんは2人の包囲網からは逃げられないようだ。
助け舟を出すわけではないが、ご馳走になるのも悪いと思った俺は言う。
「いえいえ、本当に気にしないでください。多分、うちでもご飯の用意をしてると思うので…」
まあ、実際はご飯の用意なんてしてはいないんだろうけど。でも、このままご馳走になるといつ俺に矛先が向くか分からない。もちろん楓とのことでだ。
そんな俺がいつになく帰りたそうにしていることに気がついたのだろう。楓は小さく、ぁ、と声をあげて何かを察したようにこちらを見て頷いてくれる。
これなら大丈夫だろう。と俺は安心していると楓が口を開く。
「おじいちゃん。おばあちゃん。大丈夫だよ!私が大地くんのご飯作るからね!?」
あれ?そういう感じ?しかし、それなら楓の家でいいのでは?と俺は思ったのだが、おじいさんもそう思ったようだ。
「ここで作るのも一緒じゃないかね?」
「それは、ほら、恋人同士なんだし、その、食べさせあったりとか…。い、色々するの!」
顔を赤らめて説明している楓だが、尚もおじいさんは食い下がろうとしていた。
「それならここでも…」
「おじいちゃんの前だと恥ずかしいの!察してよ!もう!」
「お、おぉ。そういうものかのぅ」
爆発したように大きな声を上げる楓。
おじいさんはその勢いに押されるように少し声を小さくする。本当に分かっていない様子のおじいさんだったからか、おばあさんが助け舟を出す。
「そうですよ、おじいさん。それと楓ちゃん、そういうことなら冷蔵庫の物は使っていいのかしら?」
「あ、うん。それはもちろん」
そう女性陣2人が会話していると、俺とおじいさんはすることがなくなんとなくで目があってしまった。
すると、おじいさんは親指をグッとサムズアップした。
俺はというと苦笑するしかなかった。
悪い人ではないんだが本当に何をしたいんだこの人。
そんなおじいさんに気がついたのか、おばあさんは優しくない音で叩いて言う。よそ様に迷惑かけるなよ?と言うような雰囲気だった。
「あんた…。なにしてるんだい?」
「ウグッ。い、いや、なんでもないわい」
そう言うおじいさんの声は震えていた。まあ、自業自得みたいなものだから仕方あるまい。
「それじゃ、私たちは行こう?」
嬉しそうな楓がそう言うので俺も席を立ち言う。
「それではお邪魔しました」
「うむ。また今度だな。その時はちゃんと話をしよう」
「大地さん。またね」
おじいさんとおばあさんは一言ずつ挨拶を返してくれてそのまま俺と楓は部屋を出る。
「それで、楓?これは、その…」
部屋から出た直後、俺は戸惑いの声を上げる。
なぜなら、俺の手は楓の手といわゆる恋人繋ぎをしていたからだ。まあ、確かにおじいさんとおばあさんの前には恋人となっているので不自然ではないのだろうけど。
「あ、そうだよね」
そう言ってそのまま俺は楓に手を引かれて説明されるのだが、手は離す感じではないのか?誰に見られるわけでもないのだが照れてしまうんだが。
俺の感情とは裏腹に玄関まで来て楓は話し始める。
「ええと、その、ね?大体分かったと思ったんだけど、その、お父さんから話がいっちゃったみたいで…」
と、楓の話をまとめるとこうだ。
まず、久しぶりに帰ってきた楓の親父さんが家で1人の楓をえらく心配したらしい。年頃の娘が実質一人暮らしみたいになっているのでそれは分かる。と、いうよりそれは普通に考えたら分かることなのでは?というのは俺で飲み込んでおこう。
それで楓は心配かけないように俺のことを話したらしい。近くに男の子の知り合いがいるから大丈夫だと。
すると、親父さんはなぜか彼氏がいると勘違いしたらしく、おじいさんたちには彼氏が近くにいると伝えていたらしい。そんなおじいさんたちは元々は楓を心配して家に来たらしいのだが、おじいさんが家に着いた時には彼氏がいるのか?と楓は聞かれたそうだ。
楓としては親父さんが嘘ついているみたいになるのが嫌だったのと、おじいさんたちをガッカリさせたくなかったからと俺を呼んだそうだ。
「なるほどね」
話を聞いた俺は一言、納得の声を上げた。
「うん。ごめんね」
しょんぼりしている楓は小さな声でそんなことを言う。俺に迷惑をかけたと思ったのだろうか。俺としては悪いことはしていない、むしろ家族のためにしているからそんなに落ち込まないでほしいのだが。
「いや、本当に全然気にしなくていいんだけど。それより、その、そろそろ…」
そう言いながら俺は繋がれている自分の手と楓の手を見る。
手を繋いだ時は恥ずかしさとドキドキの混ざった感情でいたのだが、今は感触に慣れ始めてもういっそこのままでいいのでは?と思い始めてしまった。なんというか落ち着く。
いや、落ち着いたらダメだろう。なんというかダメな気がする。
そんなことを考えて自分で自分を落ち着かせていた。
「あ、ご、ごめんね!」
自分の手の状況に気づいた楓はそう言ってバッと手を離す。無意識だったのか、楓。それと手を離してくれたのはいいのだがなんだか寂しい。
と思いながら俺は言葉を返す。
「い、いや、いいんだけどさ」
俺はそう言いながら楓を見ると顔が真っ赤にして俯いていた。それは照れるよな。俺も恥ずかしかったし。でも、段々慣れちゃって落ち着いちゃったもんなぁ。手を離された時は寂しかったし。
「「…」」
俺たち2人の沈黙が玄関を占める。
楓は先ほどから俯いており、これは俺がどうにかしないとな。
そう思い、俺は自分の靴を履いて楓に手を差し出しながら言う。
「ほら、来るんだろ?うちに」
「う、うん!」
少し戸惑ったようだったが、楓は急いで靴を履いてから一呼吸置いて俺の手を握る。今度は普通に手を繋いでいるだけだ。と、言っても手を繋いでいることには変わりはない。シンプルに照れてしまう。しかし、今は落ち着く感情が優っていた。それはどうやら楓も同じようで、楓が言う。
「なんだか落ち着く、ね?」
「…そうだな」
嬉しそうに言う楓に俺は照れ臭くなりながら同意の言葉を口にする。
正直な話。また手を繋ぐのは悪手と思ったのだが…。まあ、なんとかなったな。
そんなことを考えながら俺と楓は手を繋いだまま家を出る。
なんか書こうとしたけど忘れたからまた今度で




