33話 戻る日常。
携帯の画面を割りました。どうも愛楽です。
明日には修理に出そう…
早く学校に来たので寝ていた俺だが、背中に少し重たい感覚と声で目が覚める。
「おはよう大地。これ、お弁当。今日は早かった、ね?」
そう言う朱音の声だった。朱音は廊下の窓から顔を覗かせていた。
俺は体を起こしながら言う。
「あぁ、悪い。時間を見てなくてな。今度からは気をつける」
「それは、いいけど。…楓となにか、あった?」
朱音は一呼吸置いてそんな事を聞いてくる。
「えーと、あったといえばあったかな。なんで?」
「朝。楓と待ってても大地が出てこなかった」
「うん、それはそうだな。早く出たから」
「ん。おばさんに聞いたから、わかってる。それで大地のお弁当。楓に渡してもらおうとしたら…。断られた」
「それで朱音が届けてくれたと?」
「ん。」
「で、俺と楓に何かあったのかと?」
「ん。流石に気づく」
少しムッとした様子で朱音が言う。何故ムッとしているかは分からないが。
「まあ、だよな。でも大した事じゃないよ」
そう。大したことではない。俺はそう考えていた。だが待てよ…。楓は?朱音が言う通りであれば俺は避けられてないか?俺には大したことではないが、楓にとっては大きなことなんだろう。
少し考えて俺はある結論に辿り着いた。
俺は楓に嫌われた、と。それもそうだ。いくら庇うためとは言え、女の子を抱きしめるとか。女の子からしたら溜まったものじゃないよな。嫌われても仕方ない。
そうだよな。元々一緒にいること自体がおかしなことだったんだ。そう俺はそう自分に言い聞かせていた。
「大地?本当に大したことじゃ、ない?顔、ひどいよ?」
しまった。朱音の事を忘れネガティブな思考になっていた。
本当にひどい顔かは俺には分からないが、冷静に努めて俺は言葉を返す。
「いや…大丈夫だよ。弁当ありがとうな。ちょっとトイレ行ってくるから、朱音も教室に戻った方がいいぞ」
「ん。わかった」
朱音はそう言いつつも一向に戻る気配はない。
俺はそんな朱音の視線に追われながらも席を立ち、逃げるようにトイレに向かった。
いやだって、なんだか気まずいし。
*
トイレに着いて俺はまず鏡で自分の顔を確認する。
言うほど酷いか?気だるげなやる気のない顔がそこにあるだけだ。普段、鏡を見ることはないけどいつも通りだと思う。
まあ、来たついでだ。顔でも洗って目を覚ますか。
そう考えた俺はそのまま顔を洗った。少し頭がスッキリして目が冴えた気がする。
で、ここで問題が発生した。顔を拭くものがなかったのだ。
普段ならポケットにハンカチやら入れているのだが、今日に限っては入れてなかった。まあ、急いでいたからだとは思うが。
とりあえず、シャツの長袖で顔を拭う。代わりに袖が濡れて肌にくっ付くようになり、気持ち悪い感触だ。
目的は果たしたし教室に帰ろうとトイレから廊下に出ると樹がいた。
「よう!用は済んだか!?」
相変わらず陽気な声で樹が話しかけてくる。いつでも元気なやつだ。
「あぁ。今から教室に戻るところ」
「少し待ってろよ。俺も済ませてくっから!」
そう言いながら俺の返事も待たずにトイレに入る樹。一緒に教室に戻ろうということなのだろう。
しばらくすると樹が出てきたので教室に向かう。
「なあ?大地。悩み事、あるだろ?」
いつものように陽気な軽い様子ではなく、真剣みを帯びた様子で言ってくる樹。
「なんで樹まで…」
俺は親父、朱音と続いて樹までに聞かれたので自然とそう口に出ていた。
「そりゃお前。悩み事ある時は大体ボーってしてるからな」
先ほどの真剣さは嘘のように消え、いつもの陽気な顔で笑いながらいう樹。
そうなのか。記憶にないのだが。
俺は疑問を口にする。
「そうか?」
「そうなんだよ。まあ、自覚はなさそうだな」
そう樹に言われ考えてみるが、やはり分からない。
「…ないな」
「だよな?ま、今はそれはいいんだけどよ。なにかあったのか?」
また表情が真剣になった樹にそう質問される。
俺の中で唯一相談できるやつだと思うし、珍しく真剣になってくれている樹。それなら…と思い俺は口を開けた。
「俺って…。楓にその、嫌われてるのかなって…」
自分ながら弱々しい声音だったと思う。下手したら震えていたかもしれない。そうなる必要はないと思うのだが、そうなっているのだ。
そんな俺の言葉を聞いて樹が言う。
「楓って言ったら北条さんだよな?」
「あ、あぁ」
「…なんでそう思った?」
少し考えた樹がそう質問してきたので俺はことの経緯を話す。楓を守るためとは言え、抱きしめるようになった事。それから気まずくなって、楓に避けられてること。それで俺の考えだが、嫌われたのではないかと言うこと。
それを聞いた樹は一言。
「考えすぎだ」
そう本当に一言。
「え?おい、それはどういう…」
俺は聞き返そうとするが、ちょうど教室の前で予鈴も鳴る。
「とにかくそれは大地の考えすぎだ。北条さんの考えも聞いてみろよ!」
そう言って自分の席へと戻っていく。
俺の考えすぎ?いや、でも…。と、また考えを巡らせていた。
そうして入学した時のようなホームルームが始まった。もちろんそんなことはないのだが、楓の周りには人の輪が出来ていて雰囲気的に俺はそう感じたのだ。そんな中、前ならあった楓からの視線だけはなかった。
文章力はないけど雰囲気でね?